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閑話:イスラ視点 夜伽(健全な意味で) 4

「……正式にアゲート王よりカーネリア姫の護衛の任をいただきました」


「え? どうやって?」


 アゲート王より夜にカーネリア姫の部屋に留まる許可を得た、と伝えたら、小部屋の入り口まで出迎えに出てきてくれたカーネリア姫が愕然とした顔をしてつぶやく。

 いったい、どんな魔法を使ったら、正攻法でアゲート王から許可が下りるのか、と。

 

「王には、王だけが使える魔法がありますので」


 正確には、神に祈りの届く王族であれば使える手段、だろうか。

 おそらくは、カーネリア姫が神にお伺いをたてても、同じ戒めをいただくことは可能であろう。

 

 ……さすがに、カーネリア姫に「不能にしてください」とは願えませんし。

 

 ともあれ、これで懸念事項が一つ片付いた。

 カーネリア姫がいかに無自覚に閨への誘いをかけてこようとも、先日のように密着するような事態に陥ろうとも、私が反応することはない。

 私のモノは、『サクパセ・ヤの戒め』によって、暴走を封じられているのだから。

 

 ……気まずい思いをするのも、させるのも御免です。

 

 先日、カーネリア姫と非常に身近く接することがあった。

 白い飛竜リンクォの背に、二人で乗った時のことだ。

 二人乗り用の鞍を用意してのことではなかったので、結果として必要以上に密着してしまったと思う。

 それだけなら、特に問題はなかった。

 問題は、白い飛竜が暴走を始めた頃に起こった。

 

 カーネリア姫を背に乗せるという普段はない行動に、白い飛竜は喜んだ。

 上機嫌で、庭を走り回った。

 本来飛竜は空を飛んで移動するため、歩くことはそんなに好まないようなのだが、この時ばかりは喜んで動き回っていた。

 が、飛竜にとっては上機嫌で足を鳴らして歩いているだけのつもりでも、その背に乗った人間には違った。

 大きく、激しく揺れる飛竜の背で、鞍から転がり落ちないようカーネリア姫は飛竜にしがみ付き、私も姫が落ちないように覆いかぶさってカーネリア姫の体を押さえることになったのだ。

 

 誓って、下心があっての行為ではない。

 

 姿勢が悪かった。

 いや、あの場合は体勢だろうか。

 ふと、体勢がとある行為に似ている、と気が付いてしまった時には遅かった。

 

 カーネリア姫はその後なにも言わなかったが、少しの失敗ぐらいなら工夫を凝らしてもう一度挑もうとする姫が、この件に関してはなぜか再度飛竜の背に乗りたいと言ってこない。

 カーネリア姫としては怪しいが、白雪 姫子は知識として男女の行うことは知っている、と以前言っていた。

 覆いかぶさった時に自身に当たったモノについても、察していることだろう。

 

 ……あんな気まずい思いは、したくも、させたくもありません。

 

 アゲート王の機嫌を取りつつ、カーネリア姫の寝所を守る許可も取れた。

 自分の理性がどう揺れようとも、『サクパセ・ヤの戒め』のおかげで、ナニをどうすることもできない。

 これでカーネリア姫の安全も確保できた。

 

 王から『サクパセ・ヤの戒め』を授かるのは、我ながらいい方法だった――そう思っていたのだが。

 

「……? ん、っと……?」


 ふわり、と目の前でカーネリア姫の銀色の髪が青く輝く。

 埃でも払うかのような仕草で私の腹部、腰、脇腹を軽くたたき、満足したのかニコリと笑った。

 

「なにか変なの? 黒い靄みたいなのが付いてたから、はらってみた」


 どこか体調に変化はありませんか? と問うカーネリア姫に邪気はない。

 邪気はないのだが、非常に困ったことをされたことが判る。

 

 ……そうでした。王にできるのですから、姫が解除できても、なんら不思議はないのでした。

 

 カーネリア姫の身の安全のために施してもらった『サクパセ・ヤの戒め』が、その姫自身の手によって解除されてしまった。

 それも、なんの確認も、前振りもなく、突然に。

 

「なにか嫌な気がする靄だったけど、さっきはなかったよね? どこで何を付けてきたの?」


「何を付けてきたか、と問われると、答えにくいのですが……」


 さて、どう説明をしたものか、と考える。

 まさか、『サクパセ・ヤの戒め』に気づかれ、なんの躊躇いもなく解除されるとは思わなかった。

 これにはせっかく戒めを授けてくれた貞節の女神サクパセ・ヤも、驚いて呆れていることだろう。







 カーネリア姫へは、言葉を濁して説明した。

 アゲート王から深夜のカーネリア姫の護衛につく許可を得るため必要になった『戒め』だったのだ、と。

 姫はこの説明で、いつかの『魔力封じの枷』のようなものだと理解したようだ。

 『封じの枷』という意味では外れでもなかったので、カーネリア姫のこの微妙に間違った理解は訂正しないことにした。

 

 気分転換に市民の春芽の宴を覗きたい、とカーネリア姫が言いだしたので、少し考える。

 春芽の宴について少しでも興味を持ってくれたのなら、喜ぶべきことだろう。

 姫のために開かれている春芽の宴へは近づきたくもないようだったので。

 前向きになってくれたのは、いいことだと思う。

 

 ……けれど、春芽の宴は……。

 

 おそらくは、市民の春芽の宴は、カーネリア姫の宴よりも『酷い』ことになっているはずだ。

 少なくとも、白雪 姫子にとっては。

 

 自身を「白雪 姫子だ」と言うカーネリア姫は、性的なことに対する精神的抵抗が強いらしい。

 十四歳を子どもと言い、性交渉などもっての外だ、と否定する。

 ならば十五歳の成人ならいいのか、と問えば、十五歳も子どもだと『白雪 姫子』が言う。

 十五歳は日本ではまだ子どもなのだ、と。

 

 ところが、ここではそうではない。

 

 十五歳は大人の仲間入りと数えられ、今日の春芽の宴が、その節目である。

 カーネリア姫の春芽の宴が見合いであったように、市民たちの春芽の宴も見合いのようなものだ。

 

 白雪 姫子から見て『性に奔放』な『成人こどもたち』の『見合い』である。

 気が合えば気軽に褥を共にする新成人たちばかりだ。

 

 宴の実態など、カーネリア姫には見せられない。

 

 まだ宴の始まった正午あたりならよかったかもしれないが、これから日が沈むという時間では、絶対に無理だ。

 宴が行われている広間周辺の小部屋はすべて埋まり、小部屋に入れなかった男女が庭先や柱の陰でむつみ合っている頃だろう。

 そんな場にカーネリア姫が出くわせば、と考えて、それ以上は検討することをやめる。

 どう考えても、市民の春芽の宴へとカーネリア姫を連れて行くことは無理だ。

 

 ならば、とそれらしい理由を並べていく。

 普段の衣もそうだが、今日のカーネリア姫の晴れ着は黒い。

 普段以上に目立つので、『こっそり』覗くことはできない。

 銀髪も目立つので、『王族の姫が男を漁りに来た』と判断され、銀姫の見合い相手として集められた客人たち以上に『行儀の悪い』市井の男たちに群がられることになるぞ、と。

 

 この脅しは、カーネリア姫にはよく効いた。

 もともと、ほんの少し好奇心を持っただけだったようで、それほど興味もなかったのだろう。

 

 カーネリア姫はおとなしく、小部屋で過ごすことになった。

イスラ「必要だったのでデバフを付けて――」

白雪カーネリア「なんか変な靄つけてる! 呪われてない? 痛いの痛いの、飛んでけー」

(神々の寵児チートでデバフも一瞬解除)

 

 と一瞬で解かれる戒めでした。

 ところで、作者はエロ展開が大好物でな。

 不健全な意味で夜伽させ隊。

 いや、させないよ? カクヨムのNGライン謎だけど、なろうだと怒られるからね!

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