元貴族は入学する
このサイトでは初書きなので分かっていない部分もありますが宜しくお願いします!
愛を知らない少女は王子と世界を救う。
愛など無くても、私は生きていける筈だったのに。
貴方が私の前に現れたから、私は―――。
「昨今魔物が蔓延る中、私共は未来の帝国を背負う者達として、
この国立魔術学園に入園し――」
そんな新入生代表の挨拶を右から左に流す私。
新入生代表として壇上に立つのは帝国の皇太子である、
アレクサンドル=ノア=フェルマリア様だ。
…もしかすれば、私の婚約者になっていた人だ。
周りに言えば、驚かれて、呆れられるだろう。
平民の私が皇太子の婚約者なんてなれる訳が無いと。
でも、それを何故言い切れるかって?
私が平民落ちした元貴族だからよ。
別にお家が没落した訳でも、貴族社会から追放された訳でもない。
私が一人で馬車で行動していた時に盗賊に襲われて、
そのまま行方不明扱いされてしまっただけだ。
元々、私は家族との仲は良いとは言えず、
わざわざ探す程の存在でもなかった訳で。
私も、襲われて意識を取り戻した際に、一度記憶を失っていて、
私を救い出してくれた平民の家のお世話になる事になったのだ。
記憶は取り戻したけど、貴族社会の生活より、
こっちの方がよっぽど楽で、自由だった。
お世話になっているとはいえ、実の子では無いから、
愛される事は無かったけれど、別に不自由はしていないし、悲しくもなかった。
でもこれ以上迷惑を掛けたくなくて、寮があるこの学園に入学を希望した。
成績優秀者は学費が免除されるし、良いこと尽くしだ。
一応、周囲に私を知る存在が居ないとも限らないから、
魔術で姿を変えて入学テストも受け、そのまま入学した。
なるべく貴族(特に皇太子)に関わらず、目立たずに生活していこう。
アレクサンドル様への盛大な拍手が送られる空間で、
私は呑気にそんな事を考えていた。
「これから魔力値の測定に移る!
名前を呼ばれた者は速やかに前へ出て来るんだ!」
恐らく教師陣の中でもトップの実力を誇るであろう男性の教師が、
そう誰もに聞こえる様に叫ぶ。
ざわざわする中で、名前よ呼ばれた者はどんどん前に進んでいった。
初めに呼ばれたのは勿論皇太子で、魔力値を測る水晶は大きな反応を見せた。
(流石皇太子…魔力値のレベルが違う)
基本的に、貴族の令息・令嬢は、幼少から魔力の訓練を受ける。
万が一に公の場でコントロール出来なくて魔力暴走を起こさない様にする為だ。私は何故だか物心ついた頃から周囲を圧倒させる程のコントロール能力に優れていて、訓練は受けていないのだけれど。
その訓練は魔力を大幅に増加させる効果もあるそうだ。
その結果、貴族の子供達の魔力は軒並み高い。
平民はそんな訓練受けないので、当たり前の様に低い。
それでも、皇太子と同レベルの魔力値を持つ生徒は現れていない様だ。
数少ない平民の生徒が魔力値を測る番になった。
私は呼ばれた順的に一番最後らしい。
今自分が居る位置からは魔力値の結果が見えなくて残念だ。
「では、最後。――エナ、水晶に手をかざしなさい」
「―――はい」
す、と手を伸ばして水晶に近付ける。
その瞬間、バチッと手が弾かれてしまった。
「きゃっ」
思わず声を出すと、教師達も驚いた顔をした。
「エナ、大丈夫かい。怪我は?」
「あ、ありません。…あの、私何か間違えましたか?」
誤作動が起これば、水晶を壊してしまっているかもしれない。
魔力測定水晶なんて、平民の年収がいくらあっても買えるモノじゃない。
「…いや、何も間違っていないよ。フィリア先生、これは――」
「えぇ、恐らくエナの魔力はこのレベルの水晶では測れない、
ということでしょう。代わりの水晶を持ってきますね」
(え…測れない?有り得ないでしょう、そんな事って…)
戸惑う私をよそに、教師達はコソコソ話を始めてしまう。
「―よし、エナ。キミはここに残ってくれ。
幸いエナ以外は測定が済んだ。大人数を長居させるのはよくない。
ここで、解散としよう。―これにて魔力値測定を終了する!」
残された私は困惑しながら、新しい水晶を待った。