精霊と仮契約
精霊と仮契約
論文の作成を2日で終わらせ、あとはフレイアさんとプレゼンの予行練習、想定される質問と解答の洗い出し、ギミックの作成と最後の詰めに入っていた。
「普通は、こう言う論文発表は早くて三ヶ月、大規模になると五年ぐらいかけるものですが・・・、三日とか、それも証明されたもう一つの理論もかなり重要です!」
「『物質の種類や質量が変わっても、落下のしかたは変わらない』でしたか、実際に目にしても信じ難い現象でした。」
「ヒラヒラのタオルが、重さが同じだけで衝撃値が一緒だなんて・・・」
こんな単純な証明が、いまだにされていなかったなんて、この世界、大丈夫かな?
そんな事より、素材だよ素材!
「よし、出来た!」
「今度は何ですか?」
「実験室が使えるうちに、ロンズデーライトの作成をして置こうと思って、ドーン!」
「「「!!!」」」
「鑑定っと」
「わたくし、初めてみましたが・・・、こらがロンズデーライトなのですね、見た目は金剛石ですね」
「ビオレータさん、また非常識なものを・・・、硬度が金剛石の1.5倍とか・・・、しかもこの大きさ、何に使うのですか?」
「成功ですね!
これはですね、フレイアさんの杖に付ける宝石です」
「私が杖を造る時に苦戦した最難関を、難なくクリアーするこの規格外をどう扱えば良いのでしょうか?」
三人は、試案顔で見つめてくる。
「ねぇねぇ、これな~~に?」
「「「「はっ?」」」」
やはり、緑色の微精霊がロンズデーライトの周りを飛び回る。
「ごめんね、これまだ素材なの、杖の頭に付くのよ、こんな風に!」
完成イメージの描かれた絵を見せると、更に興奮し始める。
「ねぇねぇ、これで予約して、杖が出来たら完了契約して!」
「この杖は私のではないの、お友だちのフレイアさんの物なの!」
「こんにちは、フレイア・ロキです。 この素材はわたくしの杖の素材になるのよ!」
「私はパナケイア、これから宜しく」
ピカと光って・・・、勝手に契約しやがった。
しかもパナケイアとか、何処が癒しの女神やねん!
みんな唖然としながらパナケイアを見る、しかも上位精霊になっていた。
「あわわわわ、今のありなんですか?」
「素材だけで・・・、前代未聞ですね!」
「わたくし、嬉しい事は嬉しいのですが、複雑ですね!」
みんな驚愕、フレイアさんは苦笑いだ!
因みにパナケイアの鑑定結果は、
名前:パナケイア(杖の素材)
属性:上位杖精霊
年令:0歳
称号:癒しの女神
やはり、癒しの女神でした。
まじか~~!
論文発表の準備も終わり、食堂で夕食を食べている。
私のもとには何時もの様に、苺にかぶり付くミスティルティンが癒しを与えてくれる・・・
しかし、目の前のフレイアさんのトレイには、本日最大の疲れの元であるパナケイアが桃にかぶり付く・・・、こいつ、精神的な疲れは癒さないのかよ癒しの女神?
「あ、少し気になったんだけど、パナケイアって、ヒュギエイアとかイアソっていう姉妹がいたりする?」
「うん、いるよ~~、今度紹介するね!」
あ~~、いるのか~~
「誰ですの、その方々は?」
「フレイアさんは、パナケイアを鑑定で確認した時に称号は見ました?」
「はい、確か『癒しの女神』と出ていましたわ!」
「私の読んだことのある書物に、衛生のヒュギエイア、医術のイアソ、癒しのパナケイアの三姉妹が書かれていました、もしかしたらと思ったのですが、いるようですね」
勿論、前世のギリシャ神話です。
「では、同じ杖を三本も用意しなければならないのでしょうか?」
「さすがに、精霊樹や世界樹の枝を三本も頂けないのでは? 一本でも難しいのに・・・」
「ビオ姉ちゃん、杖に巻き付いている蛇ってラミアよね?」
「その予定だよ、それがどうかしたの? あ、それで行けるのパナケイア?」
「たぶん、大丈夫!」
「わたくし達にも分かる様に話して下さいませ!」
「ラミアはですね、寝るときは目玉を外すのです」
「「え?」」