カタリーヌの過去
カタリーヌの過去
「アロン、帰ってきたのね?」
「うん、やっぱりあの子、金剛石と同じ匂いがする。」
「ナーシサス、彼女がそうなのね・・・・」
七年前、冬の始まりに開催されるダンスパーティーにて、第一王子に婚約を破棄され、両親にも見放されたカタリーヌは、地外法権である学園に残ることで身の安全を確保しようと頑張っていた。
「精霊さん、これで私と契約をして下さい!」
学園の中庭で杖を掲げ、声をあげる。
何処からかとても小さな蒼い光りがやってくる、普通の人間には認識出来ない、鑑定持ちにでさえ凝視しなければ確認出来ないほどの小さな蒼、ゆっくり杖の周りを旋回して呟く。
「精霊樹の枝は合格だ、宝石がもう少し・・・、そしたら中位の精霊として覚醒出来る」
蒼い光りはそう言うと、また何処かへ飛んでいく、カタリーヌは杖を下ろし俯きながら寮の部屋へと帰って行った。
「水晶では格が低く、宝石だと小さい・・・」
夕食の鐘が鳴り、残り少ない所持金で食事を取り、周りの生徒に冷たい視線で見られながら、隅のテーブルで食事を始める。
「どうだ、精霊契約は出来たか?」
「ナーシサス、どうして、実家に帰省したのでは?」
「あ~~、今日急いで戻ってきた!」
「貴女、もう王都でやることは無くなったから卒業式も参加しないって・・・」
「最初はそのつもりだったんだ、実家に帰省したら王都に用事が出来た」
「なによそれ!」
「まぁ聞け、実家に帰ったらうちのチビが面白い事をやっててな」
「面白い事?」
「チビは魔法が使えない、いや、魔力も知識も豊富に有るんだ本は大好きだし、生活魔法は無詠唱だ、たが、攻撃魔法が発動しない!」
「おかしいわね? 精神的なものかしら?」
「その事は一先ず置いといて、そのチビが台所で炭を漁っていた」
「炭は食べても美味しく無いわよ、毒には為らないけど・・・」
「僕もそう思って声をかけたさ!
声をかけて振り向いたチビが、チビの頭と同じくらいの金剛石を持ってた!」
「・・・・・へ?」
「これ、使ってみろよ!」
ナーシサスから手渡されたのは、ちょうど両手で包み籠める大きさの金剛石、でもこんな大きさの金剛石に対価ははらえない。
「まずは試してみろよ、ダメだったら今度はチビの頭の大きさのやつを取って来るからさ!
対価はいま考えんな」
食事を素早く済ませ、部屋に戻って宝石を付け替える。
ナーシサスと一緒に中庭に移動すると、杖を掲げる前に蒼い光りが飛び周る。
「俺の名前はアロン、君の名前を教えてくれ!」
「私の名前はカタリーヌ、ただのカタリーヌよ!」
「では我の名の元に契約を行う!」
アロンは光り輝き、杖はアロンへ吸い込まれて光りが集束する。
そこには手のひらに納まる大きさで4枚羽根の男の子が飛んでいた。
騎士服姿に腰には剣を差している。
「「格好いい!」」
ナーシサスと声が重なった。
アロンは嬉しそうに顔を赤くしながら「此から宜しく頼む!」と言った。