賢者の石
賢者の石
長期休日が終わり、3人がそれぞれにレベルアップ(精霊契約)を行い学園に帰ってきた。
「皆さんお早う御座います。
本日より新学期を始めます!」
カタリーヌ先生は教室を見渡し、シルフィーを見てギョッとし、フレイアを見て固まる。(5秒停止)
「あの、シルフィーさん、それは?」
「契約精霊のレーバテインです、宜しくお願いします。」
「フレイアさん、その方は?」
「契約魔獣のエイルでラミアです。」
「・・・そうですか?」
カタリーヌ先生は、ゆっくりと私を見て凝視し、ホッと息を吐く。
「フレイアさん、ビオレータさん、シルフィーさん、研究の進捗を本日の講義終了後にお願いしても良いですか?」
「杖の作製は終了しました。 その事で、次の課題を設定しています。
またご協力願えますか?」
「レポートの提供が終れば・・・そうですね、課題が決まっているのなら実験室の継続使用を申請しましょう。
どころで、次の課題は何ですか?」
「図書館についてです。」
カタリーヌ先生は手を額にあて、それから天を仰ぐ。
「で、レポートはいつ提出出来ますか?」
「もう纏めて有りますので、講義終了後にはカタリーヌ先生にチェックして貰いたいと思います。」
「わかりました。講義終了後には実験室に集合して下さい。」
「はい、わかりました。」
実験室ではカタリーヌ先生が先に待っていて、実験室に入るなり説教が待っていた。
「フレイアさん、あなたは模範的な生徒で大人しく、二人を抑えてくれるとばかり思っていましたが・・・、どうしてこうなりました?」
「これは成り行きでして・・・、そう、第一王子が悪いのです。」
フレイアさんがロキ公爵領での出来事を話す。
「あの能無し元婚約者はどこまで私をたたるのでしょうか?
それで、シルフィーさんはこの世界を焼滅させたいと?」
「いえ、これは、その・・・」
シルフィーはヴィゾフニルとの話をする。
「それはそれで良かったです。 戦闘で世界樹に被害があれば、それこそラグナロクです。」
カタリーヌ先生が私を見ている。
「変わりませんね?」
「そうでしょうか?」
「ビオレータさん・・・、この前から、ウロボロスとか呟いていて・・・」
私は鉄のインゴットとヨウ素のインゴットを均等に1モルづつに合わせる。
左の腕輪に魔力を通して魔術を発動、インゴットを結界で囲みクーロン力を弛め、原子を結合する。
次第にインゴットが光り輝き、一瞬パッとした後に収束する。
「よっしゃ、成功!」
197グラムの金が作製された。
「ビオレータさん、その腕輪は何でしょうか?」
「これは魔術具です!」
「いや、それは見ていたのでわかります。 いったい何をする魔術具ですか?
それに出来上がったのは何?」
「あ、今のは錬金術の終着点・・・一歩手前?
非金属から貴金属を作製してみました。」
「と言うことは・・・」
「はい、鉄とヨウ素で金を作製しました。」
「・・・」
3人纏めて二時間ほど説教をくらい、食事の時間になったので、やっと解放された。
「ビオレータさんは、新学期初日からやってくれますわね!」
「カタリーヌ先生大激怒でした。」
巻き込まれたフレイアさん、シルフィーさんは呆れ顔であった。
「私はそもそも錬金術を極めに入学したのです。
ちょっとした実験くらい良いじゃないですか?」
「「ちょっと?・・・」」
二人は訝しげに私をみる。
「ところでビオレータさん、その腕輪はどの様な物なのですか?」
「よくぞ訊いてくれました!
錬金術に於いて非金属から貴金属を造るために必要不可欠であると言われるのが賢者の石です。
調べたところ、賢者の石は文献によって色・形・性質がバラバラです。
そこで私は、賢者の石は魔術具では無いかと推測しました。 素材でも溶媒でも無いのですから必然ですね!
そこで作製したのがこれ、ウロボロス!
謂わば賢者の石です。」
「「・・・」」
「あの、ビオレータさんは簡単に言いましたが・・・、これってかなり不味いんじゃないでしょうか?」
「不味いですわね・・・」
「フレイアさん、出会った時から思っていましたが、ビオレータさんって野放しにするとかなり危険な存在では?」
「エイルさん、その通りです。
ナーシサスさんに聞きましたが、変わり者が多いと言われるエプタ子爵家の中でもビオレータさんとピオニーさんが組むと社会の基盤を根底から覆すそうです!」
「根底から覆すとは・・・?」
「ナーシサスさん曰く、エプタ子爵領を訪れると理解出来るそうです。」
「私、そんなに悪い子じゃないよ!」
「「「無自覚!」」」
翌日の講義終了後、研究室では図書館・・・ではなく、賢者の石について議論中であった。
「賢者の石ですか? で、なぜこの様な形になったのですか?」
カタリーヌ先生は訝しげに質問する。
「図書館で見つけましたウロボロスの記述に、『錬金術では,宇宙の万物が原物質から出て変容を重ねた後,賢者の石に回帰する』のだそうです!」
「へ? 私の図書館にはそんな書籍は御座いませんよ!」
「やはり・・・」
「ビオレータさんは図書館について何かご存知なのですか?」
「カタリーヌ先生と私の図書館で書庫の規模や書籍など、色々と食い違いが有るようですので・・・」
「つまり何ですか、私の図書館とビオレータさんの図書館は別物?、と言う事ですね!」
「はいそうです。
それで今回は図書館について研究をしようかと皆で話し合いました。」
「ほほぅ、流石、父上が選んだだけの事は有りますね!」
何処からか声がした・・・
天井から金髪を腰まで伸ばした美しい女性が、両腕に金の球体を持ち星を散りばめたワンピースを着て降臨する。
「どちら様でしょうか?」
皆が呆気に取られているなか、カタリーヌ先生は冷静に問い掛けた。
「私はヘルマフロディトスと言います、以後お見知り置きを!」
綺麗にカーテシーを極めるが・・・、私は知っている、彼は両性具有だ!
「聖女フレイアよ、アスクレピオスより此方を預かってきた、受け取られよ!」
右手に持った金の球体をフレイアさんに渡す。
「ハイエルフのシルフィーよ、君にはこれをシンモラより預かった、受けとるがよい!
それと伝言です、『レーバテインの管理を任せる』、二つとも図書館の権利を取得した証明となる、無くさぬ様に!」
二つとも金の球体の中身を確認する。
「では、あとは宜しく頼むぞよ!」
ヘルマフロディトスは帰って行った。
「ライブラリ持ちが四人になりましたね・・・」
「全ての原因はあなたです、ビオレータさん!」
「私は何もしてませんよ!」
「ヘルマフロディトス様が仰っていたでは有りませんか、『父上が選んだ』と、父上とは悪童ヘルメスですよ!」
皆がジト目で見る、解せぬ!
「それにしても綺麗でしたね。」
「そうでしたわね!」
カタリーヌ先生は、物言いたげだが黙っている。
「フレイアさん、シルフィーさん、ヘルマフロディトス様は両性具有ですよ!」
「「へっ?」」
二人が固まっている間にカタリーヌ先生と話をする。
「カタリーヌ先生、先生の図書館も見学させて頂けませんか?」
「そうですね、多くの図書館を見比べて魔導書を捜すのも悪く有りません!」
「あ・・・」
「どうしました?」
「魔導書に関してですが・・・、図書館自体が魔導書と言う事は有りませんかね?」
「ん~」
カタリーヌ先生は、少し悩んで質問をしてくる。
「二人には『図書館の権利を取得した証明』と言っていましたが、私は貰っていないのです。
ビオレータさん、あなたはお持ちですか?」
「私も最初は持っていませんでしたが、学園入学前に司書の方から受け取りました。
その時『これからは自分で管理して下さいね!』と言われ、毎回鍵を掛けています。」
「司書は常にいらっしゃるのではないのですか?」
「聴いたところによると、引き継ぎ当初だけ管理をお願いされている様です。
カタリーヌ先生は、アルヴィース様から賢者を引き継いでいますよね?」
「ええ、ビオレータさんもアルヴィース様に図書館へ案内されたのですよね?」
「はい、ですが指示したのはミーミル様ですからね・・・、それにヘルメス様に選ばれたと言うのですから普通と違うのかもしれません!」
「いま考えても仕方なですね、これから研究していきましょう!」




