エルフの里
エルフの里
「里長、ただいま帰りました」
「シルフィーよ、よう戻った。
学園での生活はどうじゃ? 困る事はないかのう?」
「友達も出来て、楽しく過ごしています。
紹介します、学園で友達になったフレイアさんとビオレータさん、それと今回の道中を護衛して頂いているビオレータさんのお姉さんのナーシサスさんです」
「お久しぶりです、トレントン里長」
「久しいのう、10年ぶりじゃろうか? カタリーヌ嬢は壮健か?」
「はい、カタリーヌは学園で、妹達の担当講師として励んでいます」
「なんと、シルフィーの担当講師はカタリーヌ嬢であったか!」
「ナー姉さん、里長と知り合いだったの?」
「ああ、10年前にカタリーヌの実家であるディーン公爵領に向かう途中で立ち寄った。
あの頃は王都の北東とディーン公爵領にポータルがあって、この里を経由してディーン公爵領の領都の南側に出られた、現在は二つとも通行禁止だ!」
「ひょっとして、王妃のご意向?」
「そうだ、うちの領地と一緒だな!」
「でも王都の北東ではかなり距離が有りませんか?」
「王領とディーン公爵領はレイネの森を大規模開拓したんだ!
当時、ドルフじいさんが治水の問題で不安の残る大規模開発は賛同出来ないと反対したが実行された。」
「なるほど、それで近年、王都周辺の水害が急増しているのですね!
保水力のある森林を伐採したつけです」
「開拓にはド素人の第一王子の取り巻きが、王妃と結託して押し進め失敗した。
ダニー男爵はほんの一例に過ぎない!
しかもバカだから、ドルフじいさんが原因を指摘しても理解が出来ない能無しで、プライドだけは一流ときてる」
「現在、交易用にポータルを開いているのはソーマ伯爵領だけじゃ、サターン侯爵から王都に近いから閉じる様に指摘されてのう!」
「エルフとの交易はソーマ領でピオニーが取り仕切っている、絶対に損はさせない!」
「立ち話もなんだ、中に入って休みながらいたそう!
遠慮無く上がってくれ」
里長の家で、世界樹の話ををすると、やはりヴィゾフニルの話をされた。
転地養蜂は、11年前まではディーン公爵領で行っていたらしく、何の問題もなく纏まった。
あとは、ラグナロク関連の話として、ヤオさんからの報告では兆しは在るものの、どれも中途半端に解決している事と、勇者が現れない現状を報告された。
「あと、世界樹なのじゃが・・・、ヴィゾフニルの他に何かが居るらしい・・・という話じゃ!」
「何者でしょうか? ラグナロクと関係があるのでしょうか、ナー姉さん?」
「わからんな・・・、兎に角、明日行ってみよう」
翌朝、世界樹の領域の入口に立つ。
「ここからが世界樹の領域で、世界樹の隠蔽魔法が解除されます。」
「不思議な空間なんだよなぁー、前にソーマからサターンにパラグライダーで移動する時に上空を飛んでみたが、中には入れなかった。」
「ナー姉さん、何をしてるんですか?」
「・・・」
「大丈夫です、エルフの子供達も1度は不思議に思い、別の場所とか木を伝ってとかして試したりしますから・・・
しかし、この世界樹の門からしかたどり着けないのです。」
「異空間・・・、精霊界みたいなものでしょうか?」
「あのねぇ~、精霊界と人間界は階層が違うの!
世界樹は全ての階層に繋がってる・・・、世界を支えているのよ!」
「ミスティルティン、説明有り難う。」
「どういたしまして!」
「おチビ、今ので理解出来たのか?」
「はい、図書館にある神話そのものでしたから、今度ナー姉さんも読みにいきますか?」
ナー姉さんは頭を掻いて苦笑いする。
「是非、読ませて貰いたいです!」
「私もご一緒出来ますか?」
フレイアさんとシルフィーが答える。
「そうですね、杖の作成が終わると実験室が使えなくなるので、あらためて図書館の研究として再申請して貰いましょう!」
三人での次の課題が決まった。
暫く図書館について歩いていると、空から真っ赤な鳥が降りてくる。
「ヴィゾフニル!」
「おチビ、あれがそうか?」
「そうですね、図書館で見た挿し絵にそっくりです。」
「話し合いは出来そうです。 手前に降りてきました。」
ヴィゾフニルは目の前に降りて尋ねてくる。
「なに用でここに来た?」
フレイアが前に出て答える。
「魔法の杖を造るために世界樹の枝が欲しくてここに来ました。
世界樹の番人であるヴィゾフニル様、宜しければわけて頂けないでしょうか?」
「ん、そなたは聖女か?」
「いえ、治癒や回復の魔法は得意ですが聖女では有りません。」
ヴィゾフニルは次にナーシサスを見る。
「剣神・・・?」
ゆっくり私を見てギョッとした。
「神殺しだと?」
「いえいえ、それは契約精霊の称号で私では有りません!」
ヴィゾフニルは今度はシルフィーを見る。
「エルフか? 精霊眼持ちだな!
得物は剣か?」
「はい、これです。」
シルフィーはウルツァイト鉱のクレイモアを見せる。
「聖女殿、世界樹の枝をわけるのは構わないが・・・、剣神や神殺しの剣では世界樹が傷んでまう。
エルフの剣で落とし、癒しをかけて貰えれば問題ない!」
「わかりました、何れを落とせば宜しいでしょうか?」
ヴィゾフニルは木の下から枝を眺め指示してくる。
「あれとあれ、向こうのやつと・・・」
全部で20本ほど切り落とし癒しをかけた。
「助かったわ、最近忙しくて下枝の処理が疎かになっていてのぉ~」
「「「「・・・」」」」
「あと・・・、1つ頼みがある。」
「何でしょうか? わたくし達でお役にたつことであれば承ります。」
ヴィゾフニルはシルフィーを見る。
「エルフの娘よ、こやつを預かってはくれぬか?」
ヴィゾフニルの尾から精霊が飛び出す。
「レーバテインよ、その剣に宿れぬか?」
ウルツァイト鉱のクレイモアが光り輝き契約が成立する。
「あぁ~、レーバテイン・・・マジかぁ~」
「おチビ、何か知っているのか?」
「ナー姉さん・・・、世界を焼き尽くす神剣です。」
「あわわわわ」
「ボク悪い剣精霊じゃないよ!」
「わかっていますわ、使用者の問題です。
あら、シルフィーさん、精霊眼が開眼いたしましたわね!」
シルフィーはこの契約で精霊眼が開眼してしまった・・・
「んんんんん、あとは宜しく頼む!」
ヴィゾフニルは世界樹の頂へと逃げて行った。
「「「「・・・」」」」




