エプタの空と海
エプタの空と海
「マグノリア様、ナーシサス様から緊急電文です!」
「トーマス副艦長、読み上げて!」
「大飢饉に際し、王妃より圧力または強行の兆しあり、マグノリア軍はドルト辺境伯水軍基地の監視を行え! 以上です」
「了解」
「あと、リリィ様からも電文です」
「読み上げて」
「ドルト辺境伯境界と水軍基地の監視に伴い、偵察5、護衛15を派遣する。
だそうです」
「有り難う」
「は!、その様に電文致します」
「本艦は、本日の潜航哨戒任務をキャンセル、ケープシティに帰投する」
副艦長は無線室に走り、船は大きく舵を切り反転する。
私は兄弟9人の中で武術の才能がない2人の内の1人、もう1人は直ぐ下の妹ピオニー!
ピオニーは飛び抜けた商才と交渉力で、現在窮地のエプタ領を支えている。
別格は、末っ子のビオレータだ!
本人は武術の才能はないと言うが、やる気が無いのにあのレベル、本気を出せば剣聖のナーシサス姉さんにも匹敵するだろう。
それにも関わらず武術を研かないのは、其れを上回る知識と創造力で研究・開発に没頭しているからだ!
二人を見ていると卑屈になる、しかし私よりも・・・
ま、リリィはまだ武術の才能は有るし元気で明るいのが取り柄で兄弟のムードメーカーとしての位置付けを確立している、問題は無いだろう。
「マグノリア様、帰投早々申し訳ありません、リリィ様がお越しになっているそうです。」
「そう、分かった」
直ぐに執務室に向かうと、リリィがソファーで横になって寛いでいた。
「どうしたの?」
「久し振り、マグノリア姉さん!」
リリィが抱き付いてくる、リリィが不思議と抱き付くのは、ソーマ伯爵に嫁いだセチア姉さんと私だけなのだが・・・理由が分からない。
「マグノリア姉さん、これ見て!」
「これはムントの水軍基地ですか?」
「こっちが去年の、これが3日前、最後が今日の夕方」
「あそこは、2隻の戦艦が母港、1隻が外洋を巡回、停泊が3隻、おかしい!」
「向こうさんは、やる気満々のご様子、最悪は王国の所有する5隻の戦艦とやり合う覚悟をした方がいい。
しかも向こうが官軍だ、此方の攻撃だとバレない様に捌かなくてはならない・・・らしい」
「ドルトが動くならランカスターも動く、むこうは?」
「ウェストウッドとマッケイからランカスターに兵が移動を開始している。
最終的には2ヶ月後に15000の予測。
ビオレータの案が採用されて、星降りで全滅する予定です」
「天災・災害、証拠無し」
「予定では、夜中に私の部隊で星降りを演出しながら爆撃で殲滅をする」
私はエプタ子爵領の海図を取り出し、テーブルの上に広げる。
「これは?」
「海図」
「海の深さまで測量が終わってるんだ!」
「100メートルまで!
ここ」
「クロワッサン環礁?」
「誘い込む」
「座礁させるんだね!」
頷く、リリィは理解が早い。
「ホバークラフト」
「なるほど、ホバークラフトは座礁しないから囮に最適だね、速度も30ノーット以上出るし、でも足止め出来るのはせいぜい2隻だと思う」
「残りは私の艦隊」
「・・・遭難で片付きそうね、でも海岸にたどり着いた捕虜は?」
「いない! いても海上で処理」
「さすがね、ビオレータの意見とほぼ一致ね!
念のため、海戦後に沿岸警備のホバー隊を、こことこことここに野営させる様にと、勿論通信士も同行させる様に・・・」
「了解」
「凄いなぁ~」
「ビオレータは天才」
「あれは規格外よピオニーも含めて、私の言いたいのはマグノリア姉さんのこと!
私は作戦通りに実行するだけ・・・」
「大事なこと、実行出来なければ絵に描いた餅」
「姉さん達もそう言って慰めてくれた」
「本当のこと!」
リリィは私に抱き付いた後、ゆっくり離れて「領地を守りたい」と言って執務室を出ていった。




