人の生き血を吸うダニー男爵
人の生き血を吸うダニー男爵
視察2日目、上空ではフレイアさんとシルフィーさんが、ワイヤー無しのパラグライダーを操り飛行訓練をしている。
「おチビ、そろそろ最初の開拓村に着くが・・・、聞いていた通り、成長が悪いな!」
「小麦は駄目ですが、菜の花は元気よく咲いています。」
「何か妙案が有るのか?」
「最初に話を聞いたときから、原因に心当たりが有りましたから、準備はしてきました」
「それで、原因はなんだ?」
「塩害です!」
「成る程、では大量の水で誤魔化すか?」
「いえ、そもそもここは寒冷地で、水で誤魔化しても育てられる作物が限られます」
「ではどうする?」
「そこに咲いているではないですか!」
「?」
「菜の花、別称アブラナ、春から初秋にかけて種子を取り、冬の農閑期に油を搾ればやっていけます。
ただ、アブラナは連作障害が出やすい」
「対策は?」
「2年毎に放牧地にします。
先日の視察の際に山羊の放牧地で特産品のチーズを作っている場所が有りました。
チーズ作りのノウハウは領地内で仕入れられます!」
「さすがおチビ、その方向で進められるか検討して貰おう」
最初の開拓村が近付き、二人が空から下りてきて精霊界に保管する。
それからフレイアと開拓村の草案について纏め、村長との話し合いの打合せをした。
「ビオレータさん、これだけ大規模になりますと領主主導としての事業になります。
開拓民にも、食用油やチーズの販売が軌道に乗るまでは食料の支援も約束しなければ・・・」
「先程、ピオニー姉さんが港から領都に向けて出発しました。
食料の話はして置きましたので大丈夫でしょう。
販売も姉さんに任せれば上手くやってくれますよ!
あとは、ヘンリー公爵の決断力次第です」
「え、もう港での荷下ろしが終わったのですか?
いえ、それよりもどうやったらその情報が得られるのです?」
私は、昨日使っていた糸電話擬きを持ち軽く揺らす。
「え、それは遠距離でも話す事が可能なのですか?」
「これ自体では有りませんが、原理が同じ別の方法で会話が可能です。」
「はぁ、エプタ子爵領の技術力はどれだけなのですか?」
私は軽く苦笑いを返す。
開拓村に到着し、村長に保存食の10000食分を配給、話し合いの席に着く!
「アブドラ村長、どうでしょうか?
賛同願えませんか?」
「とても条件の良いお話ですが・・・、それをどなたが実行するのでしょう?」
「「?」」
「失礼しました、謂わば、開拓地の開発を実際に主導するのは領主様ですか?
それとも、現主導者のダニー男爵でしょうか?」
「それはどういう事か、お聞かせ下さい!
開拓地の統治に何か有りましたか?」
「開拓は7年前から始まり、当初年貢は免除されていましたから、生活も苦しくはなかった。
開拓から6年目に入り、蓄えが無いまま徴税が始まり、近年不作にも関わらず続いています」
「え、徴税? それは本当ですか? 領主の意向では、開拓地からの徴税は不作の為、行わない方針だったはずですが・・・」
「はい、ダニー男爵は領主に無断で徴収を行っております」
「直ぐにお父様に言って、調査させましょう、それが事実ならこれまでの支援物資も開拓地の民に行き渡っていない可能性も出てきます。
これはわたくし領主一族の大失態です!」
「フレイア様、ダニー男爵は、王妃と繋がっていると噂のある方です。
調査を行うには慎重に事を進められる様、進言いたします」
「ダニー男爵とは、ブラド・ダニーの事か?」
「ナーシサスさん、お知り合いで?」
「第一王子の取り巻きで、無能のクズ野郎だ!」
「確か、7年前に王妃の肝いりで開拓の主導者として直接任命されたとか・・・」
「フレイア様、その通りで御座います。
開拓はそもそも王妃の強制で、本来なら国の主導なのです。
しかしながら7年経ってもこの有り様、元々ロキ公爵領だった為に支援は公爵に丸投げ、開拓地は公爵に返還されていますが、ダニー男爵はいまだに居座っています」
「なんだ? ここはあのクズ王子集団の置き土産か?
まったく、あの時に切り捨てて置けば国もこんなに傾く事は無かったか?」
「村長はどうして其処まで内情に詳しいのでしょうか?」
「私は元々、王宮の徴税官でした!
王妃や第一王子に煙たがられ、7年前に此方に飛ばされたのです」
「厄介払いか、あの王妃一族がやりそうな事だ、それで何れだけの有能な人材を切り捨てたことか?
カタリーヌが嫁いでいれば、多少はましになっていたものを・・・」
「ナー姉さん、これではギャラルホルンが鳴る前に国が滅びそうですね!」
「「・・・・・」」
「アブドラさん、他の開拓村にもアブドラさんと同じ様に左遷された方がいるのですか?」
「はい、徴税官の時に直属の部下だった者が数名村長として派遣されています」
「フレイアさん、アブドラさんを開拓地の村々を纏める調整官に任命しましょう!」
フレイアさんは頷いて村長に向き合う
「アブドラ村長、お願いできますか?
ダニー男爵はこれから排除致しますので!」
「謹んでお請け致します!」
「では、ピオニー姉さんを此方に向かわしますので、詳細を詰めて下さい」
「これで開拓地も救われます、村々の取り纏め、お任せ下さい!」
話し合いが終り、馬車に戻りダニー男爵をどうするかを話し合う
「ナー姉さん、どうしますか?」
「一応は退去勧告して、平和的解決が出来ないので有れば強制排除だな!
ま、後者一択しか奴には選ぶ知恵は無いんだが!
最初から私が顔を出すと問題になりそうだから、馬車で待機しておくよ!」
「では最初のメンバーは、私、フレイアさん、シルフィーさんで向かいましょう!
あと、シルフィーさん、此方を準備しました、使って下さい」
先日造ったウルツァイトのクレイモアを渡す。
紅く炎を纏ったかの様な大剣、シルフィーはそれを受け取り眺めながらうっとりする。
「うふ、ヤオ姉さんのクレイモアは重くて振るえませんでした。
でも憧れは捨てられません、何時もイメージするのはあの剣さばき、この軽さならば・・・」
「シルフィーさん、通常のクレイモアは重さを生かして叩き付けるのですが、これでは軽すぎます。
クレイモアですが、切りつける様に使うという点に注意して下さい」
「ビオレータさん、有り難う御座います」
シルフィーさんは軽く剣を振り背中に背負うと、ナー姉さんが「ほう、ヤオにそっくりだな!」と呟く、するとシルフィーさんは顔を赤く染めていた。




