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実は俺もVtuber~駆け出しVtuberを支える俺、実は登録者数100万人の人気Vtuberな件~  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!
第三章

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第95話 どっちの歌姫でShow

 ”どっちの歌姫でShow”


 手書きで雑に描かれたタイトルを中心に、カノンとツクシちゃんが同じ配信画面に収まっている。

 それだけで、リスナーのみんなは大歓喜だった。

 ついにFIVE ELEMENTSとDEVIL's LIPがコラボするのだと、みんなの期待が高まっているのが伝わってくる。


 ちなみに現在、配信が始まってすぐにも関わらず同時接続数は既に十万人を超えており、何かの記念でもないのにこの人数は異常とも言えるレベルの注目度だった。


『はーい、それじゃコラボ配信始めてこっかー。自己紹介よろしく』


 そして配信の開始とともに、ツクシちゃんに自己紹介を促すカノン。

 しかしその言い方は、随分ドライな言い方だった。


『闇夜乃ツクシです。よろしく』


 そしてツクシちゃんも、カノンに対抗するかのように少しふてぶてしい態度で挨拶をする。

 FIVE ELEMENTSとDEVIL's LIPの初コラボが、まさかのギスギス。

 しかし二人の間には、恐らくマウスで描かれたのであろう”どっちの歌姫でShow”という下手くそな文字。

 オマケに背景は何故か青空で、二人のテンションと配信画面のギャップが何とも言えないアンバランスな笑いを生み出していた。


 もちろんこれは、二人によるエンタメである。

 だから二人も、本気でギスっているわけではない。

 今日は”どっちの歌姫でShow”という対決企画だから、こうしてライバル感を演出しているだけなのだ。


『じゃ、ルール説明するわね。これからわたし達が、同じ曲の一番だけを交互に歌っていくから、みんなはコメント欄でどっちが良かったか投票してってね。ちなみに、負けた方は罰ゲーム』


 カノンの簡単なルール説明に、楽しみだと盛り上がるコメント欄。

 視聴者参加型なところも面白いし、それに同じ曲で二人の歌をそれぞれ聴けるというのも嬉しかった。


 そんなわけで、さっそく一曲目のイントロが流れ出す。

 順番は、先にカノンで次にツクシちゃん。

 これを交互に一曲ずつ入れ替わりながら、全部で五本勝負するようだ。


 チャラララ~♪


 そんな今回の対決、一曲目に流れ出すイントロでリスナーは異変に気が付く。


 ――あれ? これ演歌じゃね?


 そう、一曲目からまさかの演歌スタートだったのである。

 その予想外の選曲に、コメント欄は笑いで溢れ出す。

 二人の歌姫だからこそ、この選曲の意外性だけで十分笑いに繋がっているのだ。


 そして、ついにカノンの歌が始まる――。


『冷えゆくぅ~、冬空ぁ~、眺ぁ~めぇ~ながらぁ~♪』


 こぶしの効いた、いかにも演歌らしい歌い方で歌い上げるカノン。

 その歌声に、コメント欄も『おぉ~!』と驚いていた。

 普通のポップスを歌わせたら、右に出るものはいないぐらい上手なカノン。

 しかしまさか、演歌までここまで上手に歌いこなすとは思わなかった。


 演歌という選曲の意外性からの、本格的な歌声。

 リスナーの心をがっちりと掴んでいくカノン。


『冬景ぇ~~~色ぃ~~~~♪』


 そして最後は、力強い歌声とともに難しい演歌を歌い遂げるカノン。

 コメント欄では、そんなカノンにパチパチと拍手が巻き起こる。


『ふんっ! どうかしら?』

『——やりますね』


 勝気にドヤるカノンに、完全にスイッチの入った様子のツクシちゃん。


『じゃあ、次はわたしの番ですね』


 そしてツクシちゃんのその言葉とともに、またしても同じ曲のイントロが流れ出す。


『冷えゆくぅ~、冬空ぁ~、眺ぁ~めぇ~ながらぁ~♪』


 さきほどのカノンと同じ、歌い出しのフレーズ。

 しかし、ツクシちゃんの歌声はカノンとは全くというほど異なっていた。


 演歌らしく、力強く歌い上げたカノン。

 それに対してツクシちゃんは、感情の籠められた切ない歌い出しからスタートしたのだ。


 失恋を思わせるような、か細くもしっかりと感情の籠められたその歌い出しに、コメント欄も『すげぇえええ!』と盛り上がりを見せる。

 それは俺も同じ気持ちで、その予想を遥かに上回る歌い出しに普通に驚かされてしまった。


 そして曲が進むにつれて、歌に籠められた感情は強まっていき、ラストのワンフレーズに差し掛かる。


『冬景ぇ~~~色ぃ~~~~♪』


 ゆっくりと始まった分、このラストのワンフレーズの力強さが際立っており、気付けば完全に聞き入っている自分がいた。


『——ありがとうございました』


 そして歌い終えたツクシちゃんの一言に、コメント欄は今日一番の盛り上がりを見せる。


『……じゃ、じゃあ、投票いくわよ』


 ツクシちゃんの歌を聴き終えたカノンは、コメント欄に投票システムを表示させる。

 しかしその口ぶりから、カノン自身も何となく察しがついているのだろう――。


『じゃあ結果発表! じゃじゃん! カノン31%、ツクシ69%で、ツクシの勝利……』


 結果は、ツクシちゃんの勝利に終わった。


『当然ですね』

『ぐぬぬ……』


 ここぞとばかりにドヤるツクシちゃんに、悔しそうに声を漏らすカノン。

 歌においてカノンが負けるというのも驚きで、おバカ企画と思わせて結構ガチな内容にコメント欄も盛り上がりを見せていた。


『じゃあ先輩、罰ゲーム』

『ぐっ……! 分かったわよ……!』


 そう言ってカノンは、画面にルーレットを表示する。

 既にルーレットには罰ゲームがいくつか書かれており、公平に罰ゲームを決めるため配信に映しながらルーレットを起動させる。


『……次の対決が終わるまで、語尾に『ニャン』を付ける』

『ふふ、いいですね』

『ちょっと! 笑わないでよ!』

『先輩?』

『……笑わないでニャン』


 恥ずかしそうに、語尾にニャンを付けるカノン。


『いいぞ! もっとやれ!』

『神企画だった!』

『きちゃー!』

『良ければこの企画、毎週やりませんか!?』

『かわいいwwww』


 結果、カノンの語尾にニャンの威力は凄まじく、コメント欄の速度は一瞬で光速まで達してしまうのであった。



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