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実は俺もVtuber~駆け出しVtuberを支える俺、実は登録者数100万人の人気Vtuberな件~  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!
第二章

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第77話 DEVIL's LIP

「あ、おはよー梨々花ちゃん」

「うん、おはよー明日香」


 扉を開けると、先に控室にいた明日香が声をかけてくれる。


 藤堂明日香とうどうあすか

 DEVIL's LIPとして、これから一緒にデビューする仲間の内の一人。


 そんな明日香のことは、実はわたしは以前から知っていた。

 何故なら明日香は、DEVIL's LIPとなる前に他のVtuberとして活動していたから。

 だから正確に言えば、明日香本人を知っていたというよりも、そのVtuberのことを知っていたのだ。


 雪野ミルク――それが、明日香の前世の名前。

 ちなみに前世というのは、Vtuber界隈で言う前の姿のことを意味する。


 雪野ミルクちゃんと言えば、チャンネル登録者数が二十万人を超える人気Vtuberの一人だった。

 でも一年前、人気絶頂の中プライベートを理由に突然Vtuberを引退してしまったのだ。

 結局その理由は分からず仕舞いだったのだけれど、今はこうしてDEVIL's LIPのメンバーとして、再びVtuberに戻ろうとしているのであった。


 わたしにとって、明日香は元々視聴者としてファンだったVtuber。

 そんな明日香が、今では自分と同じメンバーとして一緒にいることに、最初はとても驚いたことを思い出す。


 雪野ミルクちゃんと言えば、水色の髪をした雪の妖精をモチーフにしたデザインの女の子。

 けれど実際の明日香はというと、お淑やかな感じの普通の女の子。

 それでも、その綺麗なサラサラとした黒髪のロングヘア―は美しく、きっと男の子はこういう女の子が好きなんだろうなと思えるほど、明日香自身も小柄で可愛らしい容姿をしているのであった。


 そして何より、明日香の一番の特徴はその天性とも言える可愛らしい声だろう。

 こうして会話をしていると、その特徴のある声はやっぱりミルクちゃん本人で、未だに不思議な感じがしてくるのであった。


「明日香だけ? 他の子はまだか」

「うん、わたしが早く着いちゃっただけだから」


 そう言って、ふんわりと微笑む明日香。

 その可愛らしい微笑みに吸い込まれるように、わたしも自然と笑みが零れる。

 人に好かれる才能というのは、きっとこんな風に自然と備わっているものなのだろう。


 同期で仲間だけれど、わたしにとって明日香はVtuberの大先輩。

 そんな明日香がメンバーにいてくれることは、わたしにとってとても心強いのであった。


「うぃーっす! みんなおはよー!」


 遠慮なく扉を開け放ち、次に控室へとやってきたのは日比谷朱美ひびやあけみ

 彼女もまた、わたし達DEVIL's LIPのメンバーの一人。

 黒髪のショートボブヘアーに赤いメッシュが特徴的な、高身長のサバサバ系美女だ。

 今日もストリート系のファッションを身に纏い、知らなければ職業はモデルと言われても何の違和感もないような女の子。


 そんな朱美は、DEVIL's LIPの中では最年長メンバー。

 とは言っても、まだ二十五歳の元OLだ。


 朱美は一度、大学卒業とともに一般企業に就職した経験があるらしい。

 けれど、自分にはこういう仕事は向いていないからと早々に見切りを付けると、一年であっさりと仕事を辞めてしまったのだそうだ。


 それから朱美は、一年間フリーターをしながら、個人での配信活動もするようになったのだという。

 結果、元々ゲームの腕前がかなり高いこともあって、明日香の雪野ミルクと同じく、チャンネル登録者数二十万人を超える人気配信者にまで登り詰めたのだとか。


 そんな、自由な生き方をする朱美が次に目を付けたのは、以前から興味のあったVtuberだった。

 そして偶然見つけた、DEVIL's LIPのオーディション。

 朱美は迷わず応募してみた結果、今に至るのだそうだ。


「おはようございます」

「朱美、おはよー」

「くぅー! 二人とも今日も可愛いねー! 好き好きチュッチュ!」


 並んで座るわたし達のところへやってきた朱美は、そのままわたし達の肩に両手を回して抱き寄せてくる。

 朱美のこういう明るくてはっきりとした性格は、接しやすくて大好きだ。


 それでも、メンバーの中では最年長ということもあり、いざという時はしっかり頼りになる存在でもあった。

 そんな朱美が同じメンバーにいてくれて、わたしは本当に良かったと思っている。


「あら、もうみんな来ていたのね」


 そして次に控室にやってきたのは、鈴原すずはらレイア。

 珍しい銀髪のロングヘア―がトレードマークの、日本と北欧のハーフの女の子。


 そんなレイアの存在は、元々メンバー全員が知っていた。

 何故ならレイアは、役者としての顔も持っているからだ。


 一時期は、その顔をテレビで観ない週はなかったぐらいの、有名子役だったレイア。

 日本人離れしたその美しいルックスのおかげで、一時期はテレビでも引っ張りだこだった。


 けれど、そんなレイアも気が付けばテレビでその姿を見ることはなくなってしまっていた。

 一説では、もう嫌になって引退したとか、親御さんと海外へ行ってしまったとか様々な噂が流れていたのだけれど、どうやらレイアは活動の場をお茶の間から舞台女優に移していたのだそうだ。

 そして最近では、個人での配信活動も始めており、そこでVtuberという存在を知ったのだとか。


 そんな、お茶の間からはその姿を消した人気子役の鈴原レイアが、しっかりと成長した姿でわたし達の前に姿を現したのである。

 しかも、DEVIL's LIPのメンバーの一員として――。


「おはようございます、レイアちゃん」

「おっすー! おはよー!」

「おはよう、レイア」

「ええ、おはよう」


 わたし達の挨拶に、いつも通りクールに返事を返すレイアは、そのまま一番遠い椅子に腰かける。

 人見知りなのか、それとも他のメンバーと壁を作っているのか、いつもこうしてわたし達とは距離を置こうとするのだ。


「おいー! もっとこっち来いってー!」


 それでも、朱美の前では無駄だった。

 レイアの元へと駆け寄った朱美は、そのままレイアの頭を勢いよく撫で回し出す。


「ちょ、や、やめなさいって! 髪が乱れるっ!」

「だったら、もっと近くに来なさい」

「わ、分かったわよ! もうっ!」


 そして結果的に、朱美に根負けしたレイアは恥ずかしそうに頬を赤らめながら、わたし達の傍へとやってくるのであった。

 そんな素直じゃないところも含めて、レイアはわたしにとって癒しの存在なのであった。


「あら、わたしで最後かしら」


 最後にやってきたのは、小峰円おみねまどか

 ピンク色の髪が特徴的な、まるで作り物のように美しい容姿の女の子。

 そんな円のことは、レイアと同じくメンバーみんなが知っている存在だった。


 何故なら円は、月子つきこという名義で歌手活動もしている有名歌手なのだ。


 元々は、ネット上で歌ってみた動画を投稿したり、顔を隠して配信活動をしていた月子。

 けれど、その歌唱力の高さにメジャーレーベルが注目し、二年前に電撃デビューを果たした正真正銘のプロの歌手なのである。


 デビューと合わせて、世間に公開された月子の容姿はとても美しく、日本中を賑わせていたことでわたしもよく知る存在だった。

 そんな有名歌手である円もまた、わたし達DEVIL's LIPのメンバーの一人として今ここにいるのであった。


 本人いわく、自分の可能性をもっと試したかったから、今回応募してみたのだそうだ。

 今や、Vtuberから歌手デビューする人も少なくないため、円がVtuberになること自体は別に特別なことではないだろう。

 けれどこうして、既に有名でありながらも新しいことにチャレンジする円は、素直にカッコいいと思える存在だ。


 こうして集まった、わたし達五人でDEVIL's LIP。

 有名Vtuberに有名配信者、それから有名子役に有名歌手――。

 はっきり言って、わたし以外は全員凄い人達だ。

 何故こんな面々の中に自分がいるのか、未だによく分からなくなってくることがある。


 それでも、わたしも彼女達に追いつけるよう、今日までレッスンを一生懸命頑張ってきたつもりだ。


 そして今日は、ついに迎えるデビューライブ前の最後のレッスン日。

 本番を大成功で終えるためにも、わたしは気合いを入れるのであった。




ついに登場、DEVIL's LIPのメンバー!!

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