第74話 四人目、そして
「じゃあ、ミミにも質問していいか? ああ、一応アイドルだし、もしもNGあったら言ってくれよ?」
「一応は余分よ!? はい、じゃあ大丈夫だから質問どーぞ!」
不満そうに答えるミミ。
まぁ、NGがないなら良かった。
「ならよかった、じゃあまず一つ目はっと……よし、これにしよう! 三番目の――好きな食べ物は何?」
「好きな食べ物? 何だかありきたりな質問ね。うーん、そうねぇ……あっ! 前にアーサーが教えてくれた喫茶店のナポリタン! あれ、本当に美味しかった! あれが今のわたしの好きな食べ物ね!」
思い出すように、俺がこの間紹介した喫茶店のナポリタンが好物だと言い出すミミ。
やはりここでも俺の名前が出て来たことに、俺はいよいよ確信する。
こいつら絶対、わざと俺に絡めて答えてきてやがるのだと――。
「そうか、本当に行ってくれたのか」
「うん! あれからすぐ行ったよ!!」
「それは良かった。あそこは数ある喫茶店の中でも特にオススメなんだ。なんたって俺は、趣味が喫茶店巡りだからな!」
これは、この間生まれた俺の新たな趣味なのである。
まぁ実際は、梨々花を誤魔化すため咄嗟についた出鱈目なのだが……。
「へぇー、結構渋い趣味してんじゃん。でも、本当に美味しかったから侮れない! サンキューね」
ミミのその言葉に、コメント欄はどこの喫茶店か気になっている様子だった。
まぁその喫茶店というのは、この間梨々花と行ったうちの事務所前の喫茶店のことだ。
しかし、ミミのプライバシーの問題もあるだろうし、どこの喫茶店かは黙っておくことにした。
「じゃあ、次な。十番目の――最近ハマっていることとかある?」
「んー、ハマってることかぁ……。そう言われると、わたしもアユムちゃんじゃないけどアーサーの歌枠ちょいちょい聴いてるかも。たしかに、アーサーの高音がいいんだよねぇ」
「そ、そうか……」
「あれー? なんかさっきより反応薄くない?」
アユムに続いて、またしても俺の歌枠を聞いてくれたというミミ。
それに対し俺は、もう恥ずかしさを通り越して好きにしてくれといった感じだった。
「もういいんだよ……。とりあえず、聴いてくれてありがとな……」
「えー、なんかその反応冷たくなーい? 現役アイドルが直々に褒めてるんですけどぉー?」
「残念だったな、アイドルだと言うなら俺も一応アイドルなもんでな。――ってことで、そんじゃ次が最後の質問な――」
「あー待った。ストップ」
「なんだ?」
「一応その質問は、事務所的にNGだから今回はパスってことで」
最後の質問をしようとしたところ、ミミからそれだけはNGを出されてしまう。
まぁさっきの言葉どおり、これでも一応ミミだってアイドルなのだ。
であれば、女性アイドルが好きなタイプを語るというのは、あまり良しとはされないのは理解できた。
まぁそれを言ったら、さっき普通に答えていったFIVE ELEMENTSの面々はどうなるって話だが、よそはよそ、うちはうちってやつだ。
「ってことで、楽しかったよ! お邪魔しましたー!」
そしてミミは、最後はすんなりと自ら引いて通話から抜けていくのであった。
そんなミミの呆気なさにちょっと驚きつつも、凸に来てくれたことに感謝する
ピコン――。
すると、たった今通話から抜けていったミミから、個人チャットが送られてくる。
今は配信中ではあるものの、たった今凸しに来てくれた相手からのチャットが気になった俺は、配信画面に映らないように内容を確認すると――、
『ま、わたしも結構アーサーはタイプだよ? 配信ファイト!』
それは、さっきするはずだった質問に対する、俺だけに送られてきたミミからの回答だった。
そんな、表では答えられない風を装いながらも、俺にだけこっそり教えてくれたミミの回答に、ちょっぴり恥ずかしくなりながらも『ありがとな』と素直に返事を返しておくのであった。
こうして、それからも箱外の凸者が何人か凸しに現れてくれた。
ロボット系Vtuberのロボ・サトシ、歌姫系Vtuberの歌井奏、それからオカマゴリラ系Vtuberのゴリ・ゴリラと、個性が振り切れている面々からの凸はどれも沢山の笑いを生んでいた。
こういう自由なキャラクターが、バーチャルの世界で繋がり合えるところも、このVtuber文化の醍醐味の一つと言えるだろう。
そして気が付けば、この凸待ち配信も二時間近く続けていたことに気付いた俺は、今回はこの辺りで締めることにした。
「ふぅ、沢山の人が凸に来てくれてよかったよ。それじゃ、そろそろキリも良いことだし、この辺りで終わりにしようかな」
そう俺が告げると、コメント欄ではまだ続けて欲しそうなコメントで溢れていた。
そう思ってくれていることに有難みを感じつつ、俺は配信の締めに入る。
「みんなありがとな! まぁまた凸待ち配信はやってみようと思うからさ。ってことで、今日のところは――」
締めの言葉を言いかけた、その時だった――。
ピコン――。
「ねぇ、もう終わるところだった!?」
慌てて通話に入ってきたのは、今裏で配信をしているはずのカノンだった。
「え? 今配信してるんじゃ?」
「今さっき終わったのよ。で、まだ凸は間に合う!?」
「あ、ああ、じゃあ最後に――」
「良かった、間に合ったぁー」
せっかく来てくれたのだからと俺がオーケーすると、カノンはほっとした様子で一息つく。
――そ、そんなに来たかったのか……?
その勢いに若干驚きつつも、こうして最後にカノンに対して質問コーナーを行うこととなったのであった。
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