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実は俺もVtuber~駆け出しVtuberを支える俺、実は登録者数100万人の人気Vtuberな件~  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!
第二章

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第67話 チェキ&チェキ

「はーい!! ウーロン茶お待ち~!!」


 急いで戻ってきた梨々花は、最早完全に普段の口調で、今メイドであることも忘れてしまいながらウーロン茶を差し出してくる。

 それでも梨々花は、これでもかってぐらいの満面の笑みを浮かべており、ニコニコと楽しそうにこちらを見てくるのだから、今は何も言わないでおくことにした。


「どう? 美味しい?」

「ああ、うん……まぁ……」


 残念ながら、どこで飲んでもウーロン茶はウーロン茶だ……。


 ――えーっと、メイド喫茶ってこんな場所だったっけ……?


 ウーロン茶を飲む俺を楽しそうに見つめながら、テーブルから離れようとしない梨々花。

 見れば、他のお客様もといご主人様達も、そんな梨々花のことを見てきていることに気が付く。


 他のメイドさん達も、テーブル席について会話を楽しむことはしている。

 けれど梨々花のそれは、まるで指名でもしているように長いのだ。

 最初は溶け込んでいたものの、徐々にみんなこの違和感に気付いたようだ。


 それもそのはず、このお店で人気の高い梨々花だからこそ、尚更嫉妬の籠ったような視線がこちらへ向けられているのであった――。


 しかし当の梨々花はというと、そんなことお構いなしに、俺の傍から離れず今もニコニコと微笑んでいる。

 たしかに梨々花は、ここへ来るときわたしが相手するから大丈夫とは言っていた。


 ――でもなぁ、こうずっと居られて目立つのもちょっと……。


 たしかに有言実行してくれているのだが、逆にそれが居心地悪いというか何と言うか……。


「あ、それじゃチェキ撮ろうよ!」

「チェキ?」

「そっ! ちょっと待っててね!! ご主人様っ!!」


 そう言って梨々花は、また弾むような足取りで裏へと下がって行ってしまった。


「……元気だなぁ」


 朝からダンスレッスンしてきたこともあり、そのテンションの違いに苦笑いを浮かべる。

 そして梨々花は、すぐにカメラ片手に戻ってきた。


「さ、一緒に撮りましょ!」


 戻ってきた梨々花は、そう言って俺の腕を掴んで立ち上がらせると、そのままステージの方へ連れて行かれる。


「じゃ、ご主人様! わたしの隣に立ってくださいね!」

「こ、こう?」

「そう! じゃあ撮るよー! いぇい!」


 パシャリ!


 ――あ、今回はおまじない的なのは何もナシなのですね……。


 梨々花は腕を伸ばしながら、自分の顔を俺の顔の隣へと近付けて自撮りする。

 ふわりと揺れる梨々花の金髪が、俺の頬に少し触れる。

 髪から香るシャンプーの匂いは、梨々花らしい柑橘系の甘い香りだった――。

 そんな近すぎる距離感に、一気にドキドキさせられてしまっている自分がいるのであった……。


「はい! 撮れましたよー!」


 そして梨々花は、楽しそうにたった今撮ったチェキを俺に手渡してくる。


 ――へ、変な顔してないといいけど……。


 さっきは変なことを考えてしまっただけに、ちょっと不安になりつつ写真が色づくのを待った。


「あ、あんなメニューあったか!?」


 すると、客席の方からそんな声が聞こえてくる。

 何事かと振り向くと、そこには慌ててメニュー表を確認している他のご主人様達の姿があった。


 ――ああ、なるほど……。


 きっとみんな、今の梨々花のチェキサービスを探しているのだろう。

 でも恐らく、そんなメニューは載ってはいない。


 スペシャルご主人様限定の、あの白い紙切れが挟まっていない限りね……。


 そう思うと、やっぱり大胆というか何と言うか、ちょっとおかしくて笑えてきてしまう。

 隣には、一緒にチェキが色づくのを楽しそうに待つ梨々花の姿。


 元々美人だけれど、今はメイド服というコスチュームをしていることもあり、尚更その特別感は増しているその姿——。

 そんな梨々花が、すぐ隣で一緒に微笑んでくれているのだから、こんなもの意識しない方が無理だし、他の人達が羨むのも納得がいった――。


「あ、色出てきた! 良い感じね!」


 そして梨々花は、チェキを見ながら満足そうに微笑む。

 見れば、たしかに二人寄り添う写真は意外と上手く撮れており、変顔もしていないことに俺はほっと一安心する。


「じゃあこの調子で、もう一枚——いや、あと三枚張り切っていきましょー!」

「三枚!?」

「うん! チェキ&チェキって言ったでしょ?」


 そう言って、ニヤリと微笑む梨々花。


 ――な、なるほど……?


 どうやらチェキ&チェキという謎の言葉は、シンプルに何枚も一緒にチェキを撮ることを意味していたようだ。

 まぁ俺としても、最早ここまできて断る理由もないため、結局そのまま続けて五枚、角度を変えたりしながら一緒にチェキを撮ったのであった。



 ◇



「はい! じゃあこれは、帰ってから見てね!」


 一緒に撮ったチェキに、梨々花は楽しそうに落書きをしてくれた。

 そして写真を裏返しにしながら、一緒に撮った六枚のうち三枚を俺に差し出してきた。


「……こ、これはわたしの分」


 俺の視線に気付いた梨々花は、そう言って恥ずかしそうにそのチェキをメイド服のポケットへとしまう。


「あ、ああ、そっか……」

「そ、それよりも! 絶対帰ってから見てよね!?」

「わ、分かったよ」


 何でそんなにと思いながらも、俺は言われたとおり今は見ないようにチェキを鞄へとしまう。


「本当はこのまま閉店までいて欲しいんだけど、さすがにそこまでは言えないよね」

「うん、ごめん。一応、夜は用事があるから」

「え、用事? 何の?」


 何かを勘繰るように、じとーっとした目つきで梨々花は確認してくる。

 しかし、用事とはもちろん今日の夜配信のことのため、本当のことはここでは言えなかった。


「あー、えっと……今日は自炊するんだよ。昨日食材買っちゃってあるから、今日使わないと駄目になっちゃうからさ」

「なるほど……。うん、それなら仕方ないね」


 俺の説明に、分かったと頷く梨々花。

 良かった、どうやら納得してくれたようだ……って、これじゃまるで、付き合ってもいないのに浮気を疑われているみたいだな……。


 そして時計を見ると、何だかずっとバタバタしていたけれど、あっという間にセットの時間も残り僅かとなっていた。


 思えば、梨々花は最初に言っていたとおりずっと俺の傍にいてくれた。

 まぁそのせいで、周囲からの視線がこちらへ突き刺さっているわけだけれど、もう俺はここで帰るから今回だけは勘弁してほしい……。


「じゃ、そろそろ行くよ」

「うん、今日は来てくれてありがとね! 嬉しかった!」

「そっか、俺も楽しかったよ」


 こうして最後は二人で笑い合い、俺は現実世界へと戻るのであった。



 ちなみに今回のお会計は、梨々花のおごりとなった。

 俺は払うと言ったのだが、今回はお礼だからと梨々花も一切譲らないため、じゃあまた今度一緒にご飯でも行こうという口約束を交わして、俺は店をあとにした。


 梨々花はというと、その約束が嬉しかったのか、最後まで満面の笑みを浮かべているのであった。



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