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実は俺もVtuber~駆け出しVtuberを支える俺、実は登録者数100万人の人気Vtuberな件~  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!
第一章

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第18話 理由

「おはよう桐生くん! ってか聞いてよ! いよいよ今週末なんだけど!」


 次の授業の準備をしていると、教室へやってきた藍沢さんがいきなり興奮気味に話しかけてくる。

 そんな藍沢さんの勢いに少し驚きつつも、俺は昨日一緒にゲームしたことを少し意識してしまいながら返事をする。


「お、おはよう藍沢さん。こ、今週末? えっと、何がかな?」

「だから、ブイ! ……っと、Vtuberオーディションの面接日」


 慌てて口を押えると、周囲に聞かれないように耳元でこっそりとその興奮の理由を教えてくれる藍沢さん。


「……あ、そうか、いよいよなんだね」

「うん、昨日ゲームしてる間に連絡きてたみたいでさ、今朝それに気付いたわたしはもう大慌てだよ」

「あはは、それは無理もないね」

「本当だよぉー。うぅー大丈夫かなぁー、合格したいなぁー」


 自信がなさげに、珍しく消極的な藍沢さん。

 たしかに、これから自分がVtuberになれるか否かがこれから決まろうとしているのだ。

 もしかしたら、藍沢さんにとって大学受験以上に緊張することなのかもしれない。


 まぁ、Vtuberになるだけなら他にも募集はあるし、最悪個人で始めることだってできる。

 それでも藍沢さんにとって、FIVE ELEMENTSと同じ事務所でデビューすることは大きな意味があるというのは、これまで接してこれば言われなくても分かった。

 だから俺は、思ったままを返事する。


「藍沢さんなら、きっと大丈夫だよ」

「むぅ、桐生くんってば他人事だからってー。桐生くんだって、Vtuberになるには同じ壁が待ち受けてるんだよ?」

「あはは、うん。そうだったね」


 そうだった、俺もVtuberを目指していることになっているのだった。

 頬っぺたを少しぷっくりと膨らませながら、不満そうにじーっとこちらを見つめてくる藍沢さん。

 そんな不満そうにする藍沢さんには申し訳ないけれど、不意に向けられたその表情は可愛くて、俺はそれだけでドキドキさせられてしまうのであった。


 でも、俺が大丈夫だと言ったのは、別に藍沢さんを励ますために適当に受け答えしたわけではないのだ。

 藍沢さんの本当の魅力は、その特別な容姿だけでないのだ。

 いつも真っすぐで、明るくて素直な藍沢さん。

 そんな、内面の魅力にも溢れている藍沢さんだからこそ、この配信をメインとするVtuberにとても向いているのだ。


 だから俺は、いよいよ今週末に迫ったオーディションが上手くことを祈りつつ、出来ることがあれば支えになってあげたいなと思うのであった。


「……それはそうと、昨日はその、ありがとね」

「え? ああ、うん……こちらこそ……」


 そして話しは、昨日のゲームの話題へ移る。

 急にどこかよそよそしくなる藍沢さんに、俺も意識してしまってぎこちない返事をする。


 こうなってしまうのは、昨日の終わり際のあの言葉が原因だろう。

 藍沢さんは、俺に女の知り合いがいたことに驚いていたことを思い出す。


「ポ、ポッキーさんとは、どうやって知り合ったの?」


 そしてまた、探るようにそんなことを聞いてくる藍沢さん。

 どうやってって、それはもちろん同じVtuberグループになれたからなのだが、そんなこと藍沢さんに言えるはずがなかった。


「あー、うん。ゲームを通じて、かな?」

「へぇ、そういう繋がりもあるんだね」

「うん、よくSNSなんかでも、一緒にプレーする相手を募集してたりするからね」


 結果、俺は適当に誤魔化すしかなかった。

 本当は、そんな募集なんかしたことないし加わったこともない。

 けれど、咄嗟に思い付いた言い訳としては、一応筋が通っていたしセーフだろうと自分を褒める。


「そういうもんなんだね。じゃあ、わたしも探せば友達できるかなぁ」

「いや、そういうのは止めておいた方がいいと思う」

「え、どうして?」

「それはほら、へ、変な目的の募集とかもあったりするっていうし……」

「でも、桐生くん達はそれで知り合ったんでしょ? じゃあ問題なくない?」

「あー、えっと、まぁそうなんだけど……」


 きっと純粋にゲーム相手を募集するものがほとんどだとは思うが、SNSの募集には出会い目的だったりとかするものもあると聞く。

 それが分かっていて、まだ何も知らないであろう藍沢さんをそんな危険にさらすわけにはいかなかった。


 しかし、我ながら言っていることは矛盾しているため、俺はなんて返答したらいいのか困ってしまう……。


「あはは、冗談だよ。桐生くんがそう言うなら、やめとくよ」

「そ、そっか」

「うん、だからまた一緒にゲームしようね」


 困る俺を安心させるように、ニッと悪戯な笑みを浮かべる藍沢さん。

 その微笑みに思わず見惚れてしまいつつ、俺はどこぞの誰かとゲームされるぐらいなら、自分が全て教えてあげるという気持ちで強く頷くのであった。



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