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実は俺もVtuber~駆け出しVtuberを支える俺、実は登録者数100万人の人気Vtuberな件~  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!
第三章

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第140話 参戦

「じゃあアーサーは、アールちゃんとレナちゃんの間ね」


 アユムの言葉に従って、二人の間に座る。

 どうやらFIVE ELEMENTSとDEVIL's LIPで交互に座っているようで、俺もそのルールに従って空いている場所へ加わることとなった。


「どうも、よろしくね」

「こちらこそ」

「よろしくお願いしますッス!」


 微笑みながら、快く受け入れてくれたアールちゃんとレナちゃん。

 ふんわりとした印象のアールちゃんに、ボーイッシュな見た目のレナちゃん。


 二人とも、DEVIL's LIPになる前から知っている存在なだけに、ここでは先輩だけれど配信者としては自分より先輩な二人を前に、逆にちょっと緊張してしまっている自分がいた。


 そんな二人もまた、みんなと一緒に缶酎ハイを飲んでおり、既にほろ酔いなご様子。

 まぁ酒癖は悪くなさそうだし、この二人なら大丈夫だろうと思いつつ俺もババ抜きに加わるのであった。


 人数が多いから、初手から枚数の少ないババ抜き。

 しかし、こういうところで持ってる俺は、見事に初手でジョーカーを引き当ててしまう。


 順番は時計周りのため、アールちゃんから引かれて、レナちゃんから引く流れとなる。

 そしてさっそく、アールちゃんの引く順番が回ってくる。


「んー、どれにしましょうかねー?」


 酔っているけれど、あまり変わらない様子のアールちゃん。

 選ぶ素振りこそしているが、微笑みながらも目線は俺の手元ではなく目元を真っすぐ見つめてきていた。


 もしかしなくても、俺の反応を窺っているのだろう。

 だから俺も、ここでジョーカーをずっと抱えているわけにはいかないため、顔には出さないように気を引き締め直す。


「――ふふ、分かりやすいですね」


 しかし、そんな腹積もりをしたのと同時に、アールちゃんは見透かすようにそう言って微笑む。

 そして、わざとジョーカーではなく一つ隣のカードを選ぶように、俺の手札から一枚引き抜くのであった。


「あ、やった。揃いましたー」


 相変わらず、ふんわりと微笑むアールちゃん。

 しかし、その微笑みの裏には只ならぬものを感じざるを得ないのであった……。


 ――まぁ、負けなければいい。


 気を取り直して俺は、次はレナちゃんからカードを一枚引き抜く。

 ジョーカーは俺の手元にあるわけだから、別に何を引いたって構わない。


 けれど、ここで何でも良い感じを出してしまっては、自分がジョーカーを持っていると周囲に公言しているようなものだ。


 だから俺は、さっきのアールちゃんと同じくレナちゃんの様子を窺いながら、どのカードを引き抜くか揺さぶりをかける。


「……先輩、そんなに見られると少し照れるッス……」

「え? いや、これはゲームだから」

「……まぁ、先輩なら別に構わないッスけど」


 お酒のせいだとは思うが、そう言って頬を赤らめながら恥ずかしがるレナちゃん。

 見た目はボーイッシュなだけに、まさかそんな乙女な反応をされるとは思っていなかった俺はペースを乱される。


 そしてレナちゃんがそんな反応をするせいで、他のみんなからの視線がチクチクと突き刺さってくるため、観念した俺は逃げるように適当にカードを引き抜く。


 結果は絵柄も揃わず、俺はアールちゃんに続きレナちゃんにも完全敗北するのであった……。


 ただのババ抜きだが、今回は罰ゲーム付き。

 だからこそ、みんなも勝ちたいし負けたくはないのだろう。


 その圧とガチさをようやく理解した俺は、これは紛うことなき真剣勝負なことを思い知る。


 しかし、結局最後までジョーカーを引かないアールちゃんが一番にあがると、それに続くようにレナちゃんもあがるのであった。


 結果、俺はカノンから引かれ、ネクロから引くこととなる。


「アーサー、あんたジョーカー持ってるでしょ?」

「……さぁ? どうでしょう?」

「ふんっ! 分かってるんだからねっ!」


 疑ってきたカノンは、そう言って俺の手札の端から勢いよくカードを引き抜くも、そのカードこそがジョーカーだった。


「うげぇっ!」


 結果、変な声をあげながらダメージを受けるカノン。

 その反応から、今俺からジョーカーを引いたことが丸分かりなカノン。


 そんな分かりやすいカノンを前に、俺は思わず笑いが込み上げてきてしまう。

 どうやら俺が悪いのではなく、アールちゃんの洞察眼が凄すぎただけだと確認出来たからだ。

 ……まぁ、カノンがポンコツ過ぎるだけという可能性もあるのだが。


 そんなババ抜きも徐々に人も減っていき、気付けば俺とカノンの一騎打ちになっていた。

 ジョーカーは俺の手札に再び回ってきた状態で、残ったカードは俺が二枚で、カノンが一枚。

 つまり、ここで揃えた方が勝ちというわけだ。


「もう考えるのは止めたわっ!」


 この緊張の場面、カノンはそう宣言すると俺の様子を窺うのを止めた。

 そして代わりにとった行動は、完全なる神頼み――。


「どぉーちぃーらぁーにぃー、しぃーよぉーおぉーかぁーなぁー!」


 定番の神頼みを、じっくりと時間をかけながら口にするのであった。

 そして最後に選ばれた方のカードを、覚悟を決めて引き抜くカノン――。



「やったぁー! あがりだぁー!!」



 結果は、カノンの勝利だった。

 完全なる五分の戦いに敗れた俺は、まぁこれで負けるなら仕方ないかと諦めもついた。


 こうして、残念ながらさっそくビリになってしまった俺は、甘んじて罰ゲームを受けることにした。

 まぁ語尾に変な言葉を付けるとか、そんな程度の罰ゲームだろうと高をくくりながら。


 しかし、一番にあがったアールちゃんの一言で、この場の空気は一変することとなる――。



「じゃあ、アーサーさんには……膝枕して貰いましょうかね」



 その一言とともに、そのまま自分の頭を俺のふとももへ預けてくるアールちゃん。

 本人はとても満足そうに、頬をスリスリと擦り付けてくる。


 しかし、急に訪れたその罰ゲームを前に、ここにいる全員の視線がこちらへと集まってくる――。


 信じられないものを見るように、驚くみんな。


 たかが膝枕、されど膝枕――。

 どうすることも出来ない俺は、そんな集まる視線に物凄い居心地の悪さを感じつつも、苦笑いで誤魔化すしかないのであった……。




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