表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
実は俺もVtuber~駆け出しVtuberを支える俺、実は登録者数100万人の人気Vtuberな件~  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!
第三章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

128/170

第128話 ライブハウス

 それから紅羽と一緒に、気になるお店を回ったりお茶をしたりして過ごした。

 そんな、知らない街で過ごす気兼ねのない時間は、俺にとってとても有意義な時間だった。


 それはきっと紅羽も同じだというのは、ずっと楽しそうに微笑んでいるその表情が物語っていた。

 梨々花や他のメンバーもそうだが、自分と時間を共有することで、誰かがこんな風に微笑んでくれているということが嬉しい。

 それが仲間なら尚更であり、結果的に俺も嬉しさが顔に出てしまっているのだから仕方のないことだった。


 そして夕方、俺は紅羽に連れられてとあるライブハウスまでやってきた。

 今日はこれから、このライブハウスで紅羽のライブが行われる。


 まだ開場前のため人は少ないものの、その場の雰囲気だけでワクワクしている自分がいた。


「ごめんね、ちょっと待ってて貰う形になるんだけど……」


 紅羽は申し訳無さそうに謝ってくる。

 どうやらこのあとリハがあるらしく、それを見ててくれてもいいんだけどと言われたが、俺はその申し出を断った。

 何故なら、やっぱりせっかくのライブイベントなのだから、純粋に本番を楽しみたいと思ったから。


 そう説明すると、紅羽も分かってくれたようで頷いてくれた。

 だから俺は、開場時間までまたこの街を一人ブラブラと散策して時間を潰すことにしたのであった。



 ◇



 ライブハウスの開場の時間まで残り五分となった。


 ライブハウスへ戻ってみると、外には多くの人の姿があった。

 それはもしかしなくても、今日のイベントのために集まったお客さん達の姿であり、その表情からみんなこのあとのライブを楽しみにしている様子が見て取れた。


 紅羽と言えば、Vtuberとしての人気がFIVE ELEMENTSの中でも二番目に高い。

 しかしそれだけでなく、こうして歌手としても多くの人を集める人気があり、それはやっぱり紅羽という存在の魅力の表れなのだろう。


 何をやっても、そしてどこにいても人をきっと惹き付けてしまう存在。

 それこそが、紅羽という特別な存在の持つ魅力なのである。


 そして、開場時間となる。

 受付を済ませた俺は、初めてのライブハウスの中へと入る。


 少し薄暗く、タバコの匂いが少しだけしみ込んでいるような独特の雰囲気。

 キャパはそれほど広くはないものの、だからこそ雰囲気があるというか、それだけで興味を引かれるものがあった。


 そして暫くすると、奥からバンドのメンバーが出てくる。

 楽器を手にして、メンバーのスタンバイが済んだところで、最後に紅羽がステージの上へと現れる。


 すると、会場に集まった人達から歓声が沸き上がる。

 全員今日は、紅羽の歌声を楽しみに集まった人達なのだから、その反応は当然だった。


「みんな! 今日は集まってくれてありがとう!」


 会場のみんなに向かって、紅羽が大きく手を振る。

 すると、それに応えるように会場のみんなも声を上げる。


 そんな会場の温度に満足そうに頷いた紅羽は、ちらりと俺の方へ目を向けたかと思うと、さりげなくウインクを送ってくれた。


 まだ演奏は始まってはいないものの、ステージ上に歌手として立つ紅羽の姿はかっこよくて、さっきまで一緒にいたというのに一瞬ドキッとさせられてしまう。


「それじゃ、さっそく始めましょうか」


 そして、紅羽のその言葉が合図となって、一曲目の演奏が始まる。

 ギター、ベース、ドラム、キーボードの演奏が合わさり心地よいリズムを生み出されていく。

 そんなメロディーは、俺の耳、そして身体に直接響いてくるようだった。


 昨日のコンサートと同じく、決してCDや動画再生では得られない、生で聴くからこその迫力。

 そんな初めての体験は、俺を興奮させるのに十分だった。

 これから始まるライブに、ワクワクと胸が騒ぎだす。


 そして、イントロが終わり紅羽の歌声が乗る。

 それは、ある意味何度も聴いたことのある綺麗な歌声。


 けれど今は、ステージの上に立ち、そして生演奏と合わさったことで、視覚的にも聴覚的にも全く別物に思えた。


 紅羽でも、カノンでもなく、歌手『kureha』としての堂々たるパフォーマンスが、そこには確かにあった。


 そして歌は、サビへと差し掛かる。

 どこまでも突き抜けていく高音は心地よく、このライブハウス中を包み込んでいく。

 顔も名前も知らない人達しかいないけれど、不思議な一体感というか、今だけはこの場に集まっている人達は全員がこの歌声を楽しむ仲間。


 そしてそれは、紅羽の歌声があってこそのもの。

 まだ一曲目にしてそう感じられるのは、他でもない紅羽の歌声がそれだけ素晴らしいからに他ならない――。


 こうして、一曲目から最高潮と言える盛り上がりとともに、紅羽のライブがスタートしたのであった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ