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実は俺もVtuber~駆け出しVtuberを支える俺、実は登録者数100万人の人気Vtuberな件~  作者: こりんさん@クラきょどコミック5巻12/9発売!
第三章

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第122話 玉子サンド

「あった、ここだよな……?」


 家を出た俺は、歩いて指定された喫茶店の前へとやってきた。

 レンガ造りの外装にウッド調の内装をした、昔ながらの穴場感満載の喫茶店だった。

 自称喫茶店巡りが趣味の俺は、そんな味のある喫茶店に少しワクワクしながら店の扉を開ける。


 カランコロンカラーン。


「いらっしゃいませー。お好きな席へどうぞ」


 店員の同世代ぐらいの女性が、こなれた様子で接客してくれる。

 とは言っても、好きに座って良さそうなため、俺は言われた通り適当な席へ座ることにした。


「やぁ、彰!」


 すると、俺より先に来ていた武が声をかけてくる。

 手をひらひらとふりながら、こっちを向いて楽しそうに微笑む武の姿。


 今日もその王子様っぷりは健在で、まぁ同性の俺から見ても普通にイケメンだと思えるのがちょっと悔しい。

 そんなハヤトが、今日は俺の暇に付き合ってくれているのだから、何て言うかちょっと違和感みたいなものを感じてしまう。


 普通だったら、絶対に交わることなどなかっただろう。

 FIVE ELEMENTSという同じVtuberグループに属しているからこそ、こうして普通に会うことのできる相手なのだ。


 そんなことを改めて実感しつつ、少し恥ずかしさを感じながら俺は同じテーブル席へと腰掛けた。


「お疲れ様。悪い、遅くなって」

「いや、僕もついさっき着いたところさ!」


 謝る俺に、ニコニコと答える武。

 鬼龍院ハヤトがそのまま現実に飛び出してきたような、色白の肌に金髪のショートヘアーがよく似合う、黙っていればやっぱりイケメンの武。

 そんな武と二人きりで向かい合って座り、目の前でニコニコと微笑まれると言うのは、本当に自分から誘っておいてなんだがちょっとやり辛さを感じてしまう……。


「しかし、彰から誘ってくれるなんて珍しいよね! 驚いちゃったよ!」

「あ、ああ、悪かったな」

「はっはっは! そういう意味じゃないさ! 誘ってくれてありがとう!」


 そう言って、笑いながら俺に向かってウインクをしてくる武。

 そういうのは、できれば女性の前でだけにして欲しいんだが……。


「さすがにもう、お昼は食べてきたかな?」

「いや、昼まで寝てたから、実はまだ何も食べてないんだ」

「そうか! じゃあ、ここのサンドイッチはオススメだよ! 手軽に食べられるし、何より凄く美味しいんだ!」

「なるほど、じゃあ頼んでみようかな」


 元々ここは武のオススメでやってきた喫茶店だ。

 俺は言われるままに、アイスコーヒーと一緒にサンドイッチを注文した。

 普段はホットコーヒー派なのだが、本格的に夏になった今、ここへ来るまでも普通に暑過ぎて喉が渇いてしまったのだ。


「――で、何かあったのか?」


 俺が注文するのを見届けると、武からそう話しを切り出してくる。

 きっと武は、俺が何か相談事があるから今日は誘ったと思っているのだろう。

 だからこうした個室とまでは言わないが、他のお客さんからある程度隔離されているお店をわざわざ選んでくれたんだろうなと察しが付く。


「いや、何もないぞ?」


 その配慮が分かったうえで、俺はそう答える。

 今日は本当に気まぐれで、純粋に武と会ってみようと思ったから誘ったのだから。


 すると武は、驚いたのかきょとんとした表情を浮かべる。

 そして理解すると、吹き出すように笑いだすのであった。


「そうだったのか! はっはっは! てっきり何か相談でもあるのかと思っていたけれど、そうか!」


 そんなにおかしいかってぐらい、目尻に涙を溜めるほど笑い出す武。

 その表情は誰が見ても嬉しそうで、そんなにも喜んでくれるものなのかとこちらも恥ずかしくなってくる。


「じゃあ今日は男同士、仲を深めていこうじゃないか!」


 そう笑いかけてくる武の言葉に、俺はやっぱり恥ずかしくなりつつもそうだなと頷くのであった。



 ◇



「本当だ、美味いな!?」


 届けられたサンドイッチを一口食べて、俺は衝撃が走る。

 柔らかくも香りの良い手作り食パンに、甘味と塩味の丁度いい玉子サンド。

 素朴ながらも味わい深く、正直あと五つぐらいは食べられそうだ。


「でしょ? ここの味は、定期的に食べたくなるんだよね」

「そうだな、良いお店を教えてくれてありがとな」

「どういたしまして」


 頬杖をつきながら、サンドイッチを食べる俺を満足そうに見つめてくる武。

 もし俺が女性なら、こんな状況きっと堪らないに違いないだろう。

 しかし、残念ながら俺は男だから、こうしてじっと見られてはちょっと食べ辛いのだが……。

 それでも、こんな風に嬉しそうに見られてしまっては、何も言うことなんてできなかった。


「それで武は、今日はもう予定ないのか?」

「ん? ああ、そうだね。午前中ちょっと行くところがあったぐらいで、今日は特に何もないよ」

「そうか、俺はてっきりもっと普段から忙しいのかなって」

「あはは、そうだね。まぁ用事が入っていることは多いから、今日は神の思し召しかもね!」


 神の思し召しって、そんな大げさな……。

 そう思いつつも、やっぱり二足の草鞋わらじを履く武はやっぱり忙しいよなと、少しずつ武のことが知れるのは少し嬉しいことでもあるのであった。



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