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第100話 ヘルプ

 よっしゃー、夏休みだぁー!!


 昼過ぎまでたっぷりと取った眠りから目覚めた俺は、窓のカーテンを全開に開き、全身に日差しを浴びながら大きく一度伸びをする。


 そう、今日から俺は夏休み。

 別に早起きをする必要はないし、大学へ行く必要もないのだ。


 オマケに、俺はVtuber活動のおかげでそれなりに収入もあるため、バイトをする必要だってないのだ。

 つまり今日から俺は、配信する以外は完全なる自由人なのである。


「勝ったな……」


 俺は窓の向こうの建物だらけの景色を眺めながら、一人そう呟く。

 一応今住んでいるマンションは、同年代が一人で住むには明らかに家賃が高すぎるであろう2LDK。

 防音設備も完備しており、実際に世間一般で見れば勝ち組の生活とも言えるのだろう。


 ただ実際は、自由人と言ってもこれといった出掛ける理由はないし、配信以外特にすることもないただの引きこもりなのである。

 これからずっとVtuber活動が続けられる保障もないし、大学では梨々花が現れる前は完全なボッチだったし、現実はそんな上手く行っているわけではないのである。


 それこそ、普通に大学へ通い、普通にバイトをし、そして普通に彼女を作ってアクティブに行動している大学生の方が、俺の目には眩しく映っていたりするぐらいだ。


 結局、世の中ってもんは無いものねだりで出来てるのかもしれない。

 そう一人で勝手に納得しながら、俺は遅めの朝食もとい昼食を取ることにしたのであった。



 ピコン――。


 ご飯の支度をしていると、テーブルに置いたスマホの通知音が鳴る。

 何だろうと思い、俺は調理の手を一度止めてスマホを確認する。


『たすけて』


 表示されたのは、たった四文字のメッセージ。

 でもそれは、少ない情報量の割には不穏過ぎるメッセージだった――。


 ちなみに、送り主はネクロ。

 いつも欲しがるくせに、自分からはあまりメッセージを送って来ないネクロだからこそ、こうして俺を頼ってくるときは大体不味い事態に陥っている時だったりする。

 だから俺は、とりあえずネクロに返信する。


『おはよ、どうかしたか?』


 まずは、何がどうしたのか。

 それを確認しないことには、俺もどうしようもないからな。

 するとネクロから、すぐに返信が返ってくる。


『締め切り、間に合わない』


 またしても、簡潔な文章で送られてきたメッセージ。


「締め切り……てことは、イラストレーターとしてってことか」


 それでも、俺は何となく状況を察する。

 ネクロはVtuberであると同時に、イラストレーターとしての顔も持つのだ。

 たしかネクロは前に……そう、あれはみんなでバイキングへ行った時のことだ。

 あの時ネクロは、お皿いっぱいの無限ゆでタマゴ編に突入しながら、ラノベの表紙を担当することになったことをみんなに自慢げに話していたのだ。


 だからきっと、今になってその案件の締め切りが迫ってきているものの、まだイラストが未完成だったりするのだろう。


「……ったく、仕方ないな」


 俺以上に引きこもりなネクロだ。

 幸い俺も今日から夏休みだし、そんな困っている仲間のために協力してやらないこともなかった。

 ……別に、何でもいいから何か予定が欲しかったというわけではない。


『そうか、分かった。でも俺に絵は描けないぞ? そのうえで手伝えることがあるなら、言ってくれ』


 だから俺はそう返信し、ネクロの返事を待つ。

 できないことを引き受けるのは無責任だ。

 でも、俺にできることなら手伝ってやろうと思う。


 ちなみに昼に食べる朝食は、ハムエッグにご飯、それからお味噌汁にサラダ。

 とは言ってもハムエッグは焼くだけだし、お味噌汁は一人暮らしじゃ作り過ぎちゃうからお湯を注ぐだけのインスタントのものだ。

 それでもお手軽でしっかり食べられることから、これは俺の良く食べる朝食レパートリーのうちの一つだったりする。


 ピコン――。


 そんないつもの朝食を食べていると、少し間を空けてネクロからの返信が返ってきた。


『絵は大丈夫、すぐ来て』


 ちょっと間が空いた割には、またしても簡潔過ぎるその文章。

 そしてネクロは、続けて住所も送ってきた。

 それはもしかしなくても、ネクロの家の住所なのだろう――。


 手伝うつもりではいたが、いざこうして住所が送られてくると少しドキドキしてきてしまう自分がいた。

 思えば、異性の家に上がり込んだ経験はこれまで一度もない俺……。

 そしてネクロは、メンバーとは言っても一応異性なのだ。

 そんなネクロの家に俺が上がり込むというのは、本当に良いのだろうか……。


 ――でも、ネクロは困ってるんだよ、な。


 変な考えはなく、俺は純粋にネクロを助けるだけ。

 そもそもメンバー間で、そういうことはご法度中のご法度なことはネクロだって分かっているはずだ。


 だから俺は、この夏休み初日。

 とりあえず困っているネクロの手助けをするため、俺は急いで朝食を済ませてるとネクロ宅へ向かうことにしたのであった。



ついに100話到達!!

ここまで割とハイペースで連載続けてきましたが、楽しんでいただけておりますでしょうか?

まだまだ物語は続いていくので、引き続きおれブイをよろしくお願いいたします!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 100話おめでとうございます これからも頑張ってください
[一言] 100話達成おめでとうございます!! いつも楽しく読ませていただいています。 これからも頑張ってください!! 応援し続けます!
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