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”千里眼”長瀬郁香の怪奇現象ファイル  作者: どくだみ
File2:闇子と桜の木の下
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調査開始

 ヨシノは幽霊じゃない。

 30年前、一人の生徒が桜の木で首を吊った。

 この2つはそれぞれ無関係の話だ。だけどいつしか混同され、幽霊じゃないのに自分が幽霊呼ばわりされている。気に入らん! ってのが、ヨシノの事情らしい。

 本物の幽霊を連れてくれば、ヨシノはわたしたちに協力するそうだ。

 そんなわけで、自殺した少女の霊を探すことになった。

 問題はどうやって探すかだ。ユウの透視は死者の魂も見透すらしいけど、なにしろ手掛かりが無い。

 どこから当たればいいのやら……。


「はい注目。この『sister(シスター)』。日本語で『姉妹』ですが、文脈次第で『親しい女性』『同志』という意味になります。日本語でも『やあ兄弟』と言ったりしますよね」


 授業も頭に入らない。英語は好きじゃないってのもある。


「聞いていますか神船さん?」

「もちろんです」


 適当に返しつつ、わたしは考える。呼び方……そうだ、名前だ。亡くなった娘の名前が分かれば、調査は一気に進展する。

 どうやって調べようか。


「神船さん?」

「聞いてます」



 調査の王道といえばインターネットだ。けれど30年前の出来事は、そもそもネットに載ってない。

 となると図書館。これは既にユウが調べに行ってる。

 その間、自分に出来ることはなんだろう。

 悩みながら、廊下を歩いていた昼休み。わたしはいきなり背後から抱き締められた。


「千鶴はーん!」

「こっとん!? なにすんのさ!」


 反射的に手が出るとこだった。危ないな。


「ええやんか。最近千鶴はん成分が足りんくて干からびとったさかい」


 千鶴はん成分?

 わたしの抗議を軽くいなして、こっとんは親しげに顔を押し付けてくる。確かにここしばらく、忙しくて一緒にいれなかった。

 寂しかったのかな。親友の頭を、わたしは軽く手で撫でてやった。


「お昼食べよ。ハンバーグ作ってきたさかい」

「ありがと。最近ハンバーグ多いね?」

「ええやん。美味しいし」


 弁当箱を渡してくる。それを持って、わたしたちはいつもの裏庭に向かった。

 わたしが猫なら、彼女は犬だと思う。愛情表現がストレートで、裏表が無い。

 肩をくっつけてベンチに座る。丁寧に盛り付けられたおかずたちを見て、わたしはふと気になった。


「こっとんさ、何でわたしと友達になったの?」

「どしたんいきなり」

「4月のわたし、刺々しかったでしょ」

「関わるなオーラ全開やったね」

「どうして放っとかなかったのかなって」

「……なんとなくやなぁ」

「軽っ」


 思わず吹き出した。こっとんがムッと口を尖らせる。


「しゃあないやん。切っ掛けはハンカチを拾ったことやけど、そっから先は自然にやったし。そもそも」


 おもむろに、肩に腕を回して、


「友達なるんに理由がいるん?」

「え……いらないの?」

「いらんやろ。そんなん普通は気にせへんよ!」


 当然のように、こっとんが言う。満面の笑みに心が揺れた。ワーってなった。なんて馬鹿な質問をしたんだろう。仲良くするのに理由はいらないんだ。知らなかった。


「……ありがと。好き」

「おおきに! ウチも千鶴はん大好きや。あの女に妬きそう」

「あの女?」

「ナガセユウカやっけ。千里眼か研究者か知らんけど」


 バイトの内容はこっとんにも伝えてある。直接話す機会がないからか、彼女の中のユウは最初と同じ、よく分からん怪しい女らしい。


「アイツまだ帰らへんの? 2週間以上おるやん」

「うん。ちょっと面倒なことになっててさ」


 迷ったけど、こっとんになら打ち明けても大丈夫だと思った。昨夜の出来事。30年前の自殺者。ヨシノと名乗る女とのやり取り。

 わたしの話を、こっとんは目を丸くして聞いていた。


「この前は鏡の世界。今度は幽霊探し。……半信半疑やわ」

「正常な反応だよ」

「千鶴はんやから信じるけどな。で、目処が付いてないんやね」


 その通り。30年前ってのが大きい。当時を知る人が残ってない。


「ユウ曰く、姿と名前が分かれば探せるって。写真が一番良いらしいけど」

「やったら過去の卒業アルバムとか?」

「無理だよ。卒業せずに亡くなってるんだから」

「じゃあ新聞」

「ユウが県立図書館まで調べに行ってる」


 今のところ連絡なし。多分、成果もないだろう。


「『長老』に聞いてみたらどやろ」


 そのとき、ポンと思い付いたように、こっとんが言った。


「長老?」

「千鶴はんは面識なかったっけ」


 授業受けてる先生しか覚えてないです。


「ウチ図書委員やん? 顧問の金子(かねこ)先生が、『長老』呼ばれとるベテランでな、昔からイセジョにおるらしいで」

「……当時のこと覚えてるかも!」


 私立だから先生の異動が無いんだ。生徒が死ぬってのはよっぽどだし、忘れたりしないだろう。期待出来る。


「こっとん最高! 救世主だよ!」

「おおきに。ウチが紹介したるさかい」


 持つべきものは友だ。早速今から、は厳しいか。ユウも一緒の方が良いし、待機だな。


「こっとん、今日の放課後暇?」

「暇やで。いくらでも付き合うたるわ」

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