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後編

   

「おお!」

 感嘆の声と称賛の拍手に包まれて、私は立ち上がり、後続の者たちに席を譲った。

 いくら私がこのゲームを好きとはいえ、全ステージクリアした上で三周もしたのだから、さすがに満足だ。いや『満足』というのは大袈裟だが、ちょっと休憩したい気分だった。

 ふと見れば、ゲーム筐体を囲むギャラリーの数は、二倍にも三倍にも増えている。しかも彼らの視線は、ゲームそのものではなく、むしろ私の方に向けられていた。

 先ほどの男の言葉ではないが、私は『灰色のパーカーの男』として、存在自体が噂になっているのだろう。

「困ったな……」

 小さな独り言が、私の口から漏れる。

 照れるとか恥ずかしいとか、そんな心情的な理由だけではない。私が有名人になるのは、ちょっと問題あるような気がするのだ。

 そろそろ場所を変えるべきだろうか。明日からは河岸(かし)を変えて、隣町のゲームセンターへ通うことにしようか。

 そんなことを思いながらも……。

「おっ! あれもあるのか、この店には!」

 視界に入った別のゲームの方へ、私は引き寄せられていく。

 歴史的には、先ほどのシューティングゲームの一年前から稼働し始めたアーケードゲームであり、これも人気ゲームの一つ。地中が舞台で敵を破裂させるゲームであり、一部では「戦略的穴掘りゲーム」と呼ばれるものだった。


――――――――――――


 こうして私は、今日もレトロゲームを堪能する。

 一応は「私の存在や姿が有名になってゲームセンターの歴史に残ったらまずい」という自覚はあるのだが……。

 せっかく来たのだから、思う存分プレイしなければ勿体ないだろう。

 なにしろ私は、アーケードゲームという文化の消滅した26世紀から、わざわざゲームのためにタイムリープしてきたのだから!




(「灰色のパーカーの男」完)

   

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