【ダンスのインスピレーションで書いた話バージョン3】
【ダンスのインスピレーションで書いた話バージョン3】
ベランダに出ると、火照った身体が、少しだけ身震いをした。
(寒い、かも……)
だが、ダンスホールには戻りたくない。だから、ベランダにいるしかない。ベランダからダンスホールを見ていると、ダンスホールに居た男性に微笑まれた。
その事を不思議に思いながら、ダンスホールに視線を向けていると、男性が、こちらに向かって歩いてきた。
「やっと、お会いできた」
「へっ?」
間抜けな返事をしてしまったと自覚するが、男性はそれを気にすることなく、話を続ける。
「街で見かけたときから、ずっと、気になっていたんです。今日も、貴女にお会いしたくて、ここに来ました」
街で見かけたと言われ、数ヵ月前の事を思い出した。確かに、居たかもしれない。確かに、あのときも、目があって、少しの間だけ、見つめあったかもしれない。だから、私が「あっ」と、声を出すと、「思い出していただけましたか?」と、嬉しそうに言ってきた。
「はい。あの時、見つめてしまった事を申し訳なく思っていました」
「なぜです?」
「何も知らない人に見つめられて、不快に思われてしまったのかと思い……」
「それなら、わたしも同じですよ。わたしだって、貴女を見つめていたんですから」
なんだか、可笑しくて、自然と頬が上がる。
「やっぱり、笑顔がステキだ。また、お会いできたら伝えたいことがあったんです。聞いてくれますか?」
「はい」
「あの、わたしは貴女の笑顔が好きです。わたしとお付き合いをしていただけますか?」
街で会ったときにそう言われたら、嬉しいと思っていたことが、現実に起こり、私の瞳から涙が零れる。
「お嫌でしたか?」
「いえ……、違うんです。嬉しくて……」
そう言うと、その男性に抱き締められた。
先ほどまで、寒いと感じていたが、今は、身も心も温かい。それが心地好くて、男性にすり寄ってしまう。すると、男性が優しく、でも、少しだけ力を込め、抱き締めてくれた。
暫くの間、そうしていると、温かくて、眠くなってきてしまった。
「そろそろ帰りましょうか」
その提案に頷き、男性と共に馬車に乗り、家路につく。
その間も、楽しく、会話が弾み、私は幸せな時間を過ごすことが出来た。
読んで頂きありがとうございました。