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HO部 活動報告書

作者: 井上魚煮



 文化祭にうちの部も何か展示物をしろと顧問に言われた訳なんだけど、ぶっちゃけ何も展示するものなんか無いからこうして筆(詳しく言うとシャーペン)を取ってみた。うん、まあこうして書いてるけど、読む人なんて居ないでしょって思ってる内に当日になっちゃったからこのまま提出する事にする。


 そんなこんなでうちの部の活動報告を書こうと思ってる現在です。こんにちは、初めまして部長です。好きな事は寝る事です。自己紹介終わり。

 部活動報告って言っても本当にやる事なんか何も無いんだよね。

 かと言って「今年うちの部は何もせずにただダラダラと過ごしてました」なんて書くと廃部にされそうなので、とりあえずこの間あった久し振りの依頼について書こうと思う。

 あれは確か、今日から丁度一週間前の事。




+*+




 文化祭が一週間を切ったからか、今日は日曜日だというのに生徒が何人も登校していた。何かに使うのだろう、木材やスーパーの袋を持っている生徒もいる。

 うちのクラスは何だっけ、確かオバケ屋敷をするとか言って張り切ってたっけ。文化部に入っている人は基本手伝いをせずに部活に行ってもいいから、今こうして部活動をしている訳だ。…決して、クラスの出し物の手伝いをするのが面倒な訳ではない。決して。


「『さあ観念しろヴェリア! もうお前はやられる運命だ!』 ガチャリと剣を掲げながら、キリはそれを睨んだ。もう人だとはいう事ができない、異形の物と化したヴェリアはどろどろと流れていく血を気にも留めずに笑う。笑う。笑う。」


 部活中である僕は何もせずに、二階に位置している資料室という名の小さくて狭くて埃っぽい部室の窓の淵に肘をかけ、ぼんやりと景色を眺めているのだった。…あ、あれ僕のクラスだな。中庭で堂々と作業やってるけど秘密にしなくていいのか。


「『な…何が可笑しい!』 『いや…粋がっている奴を見るとどうしてもな…。……俺の力がこんなものだと思っていたか!!』 『な…、何だ!?』 ぶわりと。周囲の空気が一変する。今までの力が嘘の様に、目の前のそれは笑いながら力を放出させていった。」


 それにしても、


「『う、嘘でしょ…?』 エリザがぽそりと呟く。それはそうだろう、ここまでだけでも殆ど力を使ってしまったのだ。これ以上の力は、俺たちには無い。だが。 『…だが、それでも! 今ここで、お前を倒す!!』 『はははははは! 返り討ちにしてやるわぁああ!!』」


 …それにしても、


「うおおおおおおっ!!! 死ねぇ、ヴェリアァァァァァっ!!!!」

「ちょっと五月蝿いおかし黙れ」


 五月蝿すぎる。

 えええ、これからがいい所なんですよ!?、と不満そうに口を尖らせるのは、この部活の唯一の一年生である柏木音葉(かしわぎおとは)だ。


「さっきから思ってたんだけどさ、小説読むのに朗読しなくてもいいんじゃない?」

「ちっちっち、部長もまだまだですねぇ。小説は声に出して読む事に意義があるんですよ? ほら、かの有名な詩人だって言ってます! 『小説は声に出して読むべきだ』って!」

「ねえよそんな言葉」


 簡素な机の向こう側に僕と対面するような形で座っている彼女は、名前の頭文字と苗字から、「おかし」と呼ばれていた。ていうか呼んでいる。

 メガネをかけ三つ編みをし、休日だというのにしっかりと制服を着ている(僕や他の部活の子達は自前のジャージを着ている。)所を見れば一見大人しそうで真面目な子なのだが、性格がそれを台無しにしていた。本人曰く、「メガネ+三つ編み=真面目っ子、っていうのは決定事項じゃなくて先入観っていうんですよ!」との事なのだが。


「ところで、それどんな話なの? さっきからずっと読んでるけど」

「これはですねぇ、世界を救うために旅をするキリが、旅の先々で仲間を見つけて一緒に敵を倒しに行く話なんです」

「へえ、ありきたりだな」

「で、その敵のボスがさっき言ってたヴェリアって奴なんですけど、無事倒すんですね。それで、…実はなんと! ヴェリアはキリのお父さんだったんです!」

「なにその昼ドラ」

「もちろんキリは絶望します! お父さんを殺してしまったなんて! そして絶望したキリは皆の制止を振り切って何処かへ消えてしまう…っていう話です」

「へぇ…」

「全部で97巻あります」

「多すぎるわ!」


 一瞬よくある戦闘物かと思ったら、なんか変な昼ドラだった。ちょっと肩透かしを食らったような気分になる。「それで、作者は?」


「作者は私です!」

「破って捨ててしまえ!」


 っていうか97巻もよく書けたなそんな馬鹿みたいな話…反対に尊敬に値する。すげぇわ。

 おかしは鼻歌を歌いながらそれをしまうと、水筒を取り出して紅茶を飲みだした。僕は心地良い香りを嗅ぎながら、再び窓の外へと視線をやる。


「ところで暇ですねー」

「そうだな」

「この会話って何回目ですか?」

「さあ…お前が入ってきて毎日のように言ってるからな。200は軽く超えてるんじゃないのか」

「ですか。ていうかこんなに暇なら別に今日態々部活しなくても良かったんじゃ?」

「…まあなんとなくだよ」

「とか言っちゃって、文化部は部活動をしない限り自分のクラスの出し物の手伝いをやらされるの知ってるから、やる事なくても休日の今日集まったんじゃないんですか」

「……」

「そんなに自分のクラス嫌ですか」

「…別に嫌な訳じゃない。面倒な事が嫌なだけだ」

「もっと性質悪いですよ」


 まあ私も面倒ですからいいですけど。と呟いて、直に「あー暇だなあ」とぼやく。

 窓の外では、お化け役であろうか、クラスの男子が白い布を被ったりして周囲の人間を笑わせていた。先ほども言ったが、僕のクラスは中庭で大胆に作業をしているので、二階のここからでは丸見えである。それにしても、もう直文化祭だと言うのにこの暑さは何事か。地球温暖化反対。

 そんな事を考えながら、いつもの様にぼんやりとしていた日曜日の今日。

 久し振りに、依頼が舞い込んだ。


「あの…」


 から、と立て付けの悪いドアを開けながら顔を出したのは困った顔の女の子だった。後ろにもう一人いるらしく、「ねぇ誰か居るの?」という声も聞こえる。


「夏ちゃん! え、どうしたの? 依頼? 依頼!?」

「え、あ、うん」


 同じクラスなのか、おかしがその場から立ち上がり不思議そうに問うた。その声は心なしかはしゃいでいる。そりゃそうだ。おかしが入部してきてから初めての依頼だから嬉しくなるだろう。…実際、僕もこれで3回目の依頼な訳だけど。


「夏ちゃんはねー、文芸部で、来年の部長なんだよ! ね、夏ちゃん!」

「あ、えっと…」

「千夏、早く言わないと」


 夏ちゃんと呼ばれた女の子は後ろに居た女の子に急かされ、慌てたように「ごめん」と謝った。僕は立ち上がると何故か嫌な想像しかつかない依頼に苦笑しつつ、(前の依頼も面倒な事だったなそういえば…)とりあえず挨拶することにする。


「こんにちは、HO部の部長です。依頼はなんですか?」

「えっと…あの、私1年B組の橘千夏っていいます。文芸部です」


 通常の顔が困った顔なのかどうかは分からないが、ボブで軽くウェーブかかった髪を揺らせながら、困った顔で千夏ちゃんはぺこりとお辞儀をした。

 文芸部と言えば、いつも文化祭には部誌を発行してる所だ。去年の部誌はちゃんと貰っている。今日は確か製本の作業だとクラスの文芸部の子が言っていたような気がするのだが――それを差し引いても、今日言わなければいけないほどの依頼なのだろうか。うわ面倒そう。


「で、こっちが」

「同じ部活の緑間奏(みどりまかなで)です」


 後ろで立っていた女の子――奏ちゃんは、少し吊り目の、勝気そうな顔をしていて髪は耳の高さくらいで二つに括っている。運動部に入っていそうな雰囲気のその子の右手にはスポーツバックが握られていた。

 …気のせいだと思いたいが、そのスポーツバックが動いてるような気がしてならない。


「で、えっと…依頼っていうのは」

「あ、その…ですね」


 言いにくそうに千夏ちゃんが視線を彷徨わせるのを気にも留めず、奏ちゃんは無言でそのスポーツバックを僕の目の前に出した。


「……え?」

「これ、お願いしてもいいですか」


 とりあえず、受け取る。

 「えー、何ですかそれー」と隣でおかしが騒ぐのでゆっくりとジッパーに手をかけた。


「あのー、うち文芸部なんですけど、もう直文化祭じゃないですか。で、知ってると思いますけどお客さんが沢山来るんですよね、部誌貰いに。だからちょっと隠して置けないっていうか、無理なんで暫く預かってもらいたいんですよねー」


 じぃぃぃ、と段々見えてくる中に、隣でおかしがわぁ可愛いと言ったのが憎くてしょうがなかった。

 奏ちゃんは真顔で、さも当然と言うように言葉を続ける。


「先生にも秘密で飼ってるんで、内緒でお願いしますね」

「……」

「えっ、えっ、この子名前なんていうの!?」

「みかんっていうの」


 名前を呼ばれたと思ったのか、スポーツバックの中からぶなーという声が聞こえる。

 こんな不細工な猫に可愛いとか言える神経が僕には分からなかった。



2010年頃の作品が発掘したので記念に。

この後の続きも当時考えてあったし、この後続くとしたらゆるい推理ものみたいな話になる予定でしたが、実際に時間がなかったし飽きたので書いてません。

滅茶苦茶「これからじゃん」みたいな話なのですが、もし読みたい人が居たら続きを頑張って書きます……(もし希望者居たら教えてください)

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