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君と共に・・・  作者: 秋元智也
2/17

生け贄の少年

依頼を達成した死神こと寛貴は一度街に戻っていた。そこで胸騒ぎを感じ、村へと戻ってきた。そこはかつての様子とは違っていて。必死に探すが拓実の姿はどこにもなく、灯りの点る社の中では人身御供の儀式がおこなわれていた。

その夜、俺は横で寝ている拓実を抱きしめていた。

このままここに置いて行きたくない。しかし、彼はここから離れたがらない。

母との思い出の詰まった場所だからだろう。俺にとっては拓実自身が無くてはならない存在になりつつあった。ここで暮らした日々がとても心踊るものだったからだ。

今まで、何にも心を動かす事は無かった。人を殺す時も、女を抱いた時も、いつも心は冷えきっていた。でも、今は違う。どんなものでも全てが新鮮なモノのように感じるようになっていた。

寝苦しそうに拓実が動くが離す気にはなれなかった。

一度眠りに付くとよっぽど起きることは無かった。

「無防備すぎ。俺、一応オオカミなんだけどなぁ・・・いっそ、襲っちゃおっかな」

なんの躊躇いもなく眠り続ける拓実の額に唇を寄せる。

「いつか、ここを出て一緒に色々な世界を見て回ろう。君と一緒なら世界が綺麗なモノに見えて来るから不思議だなぁ」

布団を被せると瞼を閉じた。

「俺の拓実。誰にも触れさせないから」


次の日にはターゲットを見つける事ができた。それは弱って今にも死にそうな親熊だった。小熊達は母熊に寄り添ってじゃれあっていた。しかし、母熊はもう長くはないだろう。

ここで決着を着けようじゃないか。相棒を握りしめ標的に狙いを定めた。


陽が落ちる頃には村へ行って依頼の達成とその証拠である親子熊の耳を千切ったモノを差し出した。

それから一旦他の依頼が来ていないかの確認も有るため大きな街まで行くことになった。拓実にはしばしの別れを告げて、村を出た。

また暫くは暗殺依頼も何件かこなしそろそろここも潮時かなと思い始めた頃、風の噂で黒死病がどこかの村で流行り始めたと聞いた。黒死病とは黒い斑点が体中に出来て、段々力が入らなくなり、やがては寝たきりになり死んでゆくのだ。特効薬はなく。黒い斑点ができだすとすぐさま隔離され生きたまま燃やされる事があった。

嫌な胸騒ぎがして拓実の顔が頭から離れない。

大分懐も温まった事だし次こそは連れだそうと決意し、彼の住む村へ行った。

そこで見たものは変わり果てた村人達だった。

「黒死病がここでも流行り始めてたのか」

急がなきゃ、一刻も早くここから離れなくては、、、俺は森の中を駆け出していた。

息が上がって苦しかったが、それ以上に早く会いたかった。元気な彼の姿を思い出しながら森の中に建つあばら屋に飛び込んだ。

「拓実!どこだ?」

家の中は静まり返っていた。全く人の気配がしないのだ。

薬草でも取りに行ってるのか?とも思ったが、イヤ違う。と思い直した。

一緒に暮らしていた時でもそうだが暗くなるとよっぽど森の中には行かなかった。

と、するとどこに行ったのだろう?

村人の様子も何だかおかしかった。拓実は無事かと聞いたときの反応が今までと違うのだ。

何度も引き留められた。そんな事は今まで無かった。

最初に山から帰ってきたときは「あの子に近づいちゃいかん」と言われたが、無視していると諦めたのか何も言わなくなった。

まずは、事情を知ってそうな村長の家へ行かなくては・・・

ずっと走り通しだったので、少し休憩を取ることにした。

少しの間横になった。

すると靄のかかっている向こう側で誰かのすすり泣く声が聞こえた。

聞き覚えのある声だった。かすれた声で自分を呼ぶ声に目が覚めた。

「なんだったんだ!?」

訳もわからず不安だけが募る。

まずは山を降りて、っと考えているとふと、何かに引かれるように足を止めた。

山の中腹に作られたお社だった。ここは祭事の際に使っていると言っていた。

唯一のお祀りの時期になるとお社の回りに灯りを灯し三日三晩その灯りを絶やさぬようにして豊作や災いから村を守って下さいという思いを込めて踊り続けるのだとか。

拓実には参加できないけど、ここからはその光景がよく見えるとよく言ってたっけ。

しかし、なぜ今社の回りがうっすらと照れしだされているのか?

祭り騒ぎではないだろうに、と思いながらも確かめずには居られなかった。

段々と嫌な胸騒ぎが強くなっていくからである。

こういう時の第六感は大概当たることが多かった。

近づくと中には何人かの気配があった。

気配を消してゆっくりと中を伺った。中は暗く中では5人程が中央に固まっていた。

部屋の中は鉄分の臭いで充満している。そう、血の臭いだった。

そっと気づかれずに近づくとそこにあったのは中央の柱に体を杭で打ち付けられた拓実の姿だった。

「なっ・・・」

息が詰まるのを感じた。心臓が鷲掴みにされたような感覚を覚える。

回りにいる村人は必死に祈りを捧げていた。まるで生け贄を授けるかのように・・・

「何をしている?」

余りにも突然かけれた声に戸惑う村人に更に低い声で訪ねる。

「何をしているんだと聞いている」

「ひぃぃぃー」

腰を抜かし恐怖で後ずさる村人の一人の頭に風穴が開く。

「もう一度聞く。何をしている」

「病が、、、病が蔓延して、、いる」

「それがどうした」

「病の蔓延は山の神々の怒りから来るものだ、だから20歳未満の者を柱に打ち付け人身御供にすれば収まるんだ。皆が助かるんだ。」

「あんたも助けたい人の名をいいながらこの子の体に杭を打ち込めばきっと助かる」

「やりに来たんじゃないのか?」

口々に自分達の行いを正当化しようとしている。こんなことなら無理矢理でも連れ出せば良かった。

悔やんでも悔やみ切れない。

その時微かに声が漏れた。

「まだ生きているのか?」

「当たり前じゃ。三日三晩生きた体に杭を刺すのが習わしなんじゃ。」

さも当たり前のように言い出した。

「後、一日あるんだ。ここで死なれては願いが叶わん。三日目で心臓に杭を打つのがこの儀式の最後の仕事じゃ」

こんな事耐えられなかった。ずっと苦しみ続ける姿を見ていて心が痛まないのだろうか。

嫌、違う。こいつらは家畜と同じなのだ。感情がないのだ。

人間んですらないのだ。腰に付けていたホルダーからナイフを取り出して一人の男の脇腹を何度も刺し貫いた。臓器には決して傷つけないように気を付けながら。男は痛み苦しむが死ぬことは出来ない。

一瞬で殺すなんて生易しい死に方なんてさせてやらない。次は逃げ出そうとした男の足を相棒で撃ち抜いた。それから近くにあったロープで肩口と太ももをきつく縛ると壁にかけてあった斧で両手足を切断した。

「うわっぁぁぁぁぁぁ」

「たっ・・・助けてくれ」

冷たい目でその光景をじっと見ると残りの二人は頭を地面に擦り付け懇願していた。

過ちへの謝罪ではなく保身の為の行為だ。なんて醜いんだ。

生きている価値すらないじゃないか?

なんで、なんでこうなった。

怒りだけが、今の俺を突き動かしていた。

一人の頭を踏みつけると頭を鷲掴みにして何度も地面に叩きつけた。

「ひぃぃぃぃー」

鼻は折れてあらぬ方に曲がっている。

「これだけじゃ生ぬるいな」

近くにあった杭で床に縫い付けた。

出欠多量になるまでは確実に意識がなくならないように加減して位置を決めた。

永遠に近い痛みを味わい続ける為に、、、

「あと、一人か」

「なんでもするから許してくれ・・・命だけは」

「なら、なぜ拓実にこんな事した?お前らに迷惑はかけてないだろう?子供なら他にもいたはずだが?」

「・・・」

「答える気がないようだな?」

「この子は・・・人の子じゃない。だから・・・」

何を言い出すのか!?ゆうにことかいて下らないことを、、、

ここにいる誰よりも人間らしい子だとおもう。

そんな下らない理由で生け贄にしたのか?

呆れてものも言えない。

寛貴は目を細めるとナイフで男の両目をえぐりとった。

そして、口の中へと無理矢理押し込んだ。

「あああああぁぁぁぁぁーーーんんんっっっっっ」

「今入れたものを飲み込め。そうしたら命は助けてやる」

低い声で言うと男は必死で自分の眼球を咀嚼し始めた。

哀れな、いや、哀れを通り越して滑稽なヤツだ。

それから拓実に近づいて杭を一つずつ抜いていった。

「うっ、うわっ、っっっ」

「痛いが、我慢してくれ。直ぐに取るから。そしたら家に帰ろう」

「うぅぅ・・・」

弱々しく頷くのが分かった。

止血して抱きかかえてみてその軽さに驚いた。

小さいといっても普通の男としては余りにも軽すぎる。

顔色は悪く、殆ど血の気が引いて生きているのが奇跡としか言いようがなかった。

家に連れて帰り寝かせると止血用の薬剤を探した。後は自分が怪我の時に使わせてもらった痛み止めと貧血用の薬も・・・自分で飲むことが叶わないので口移しで流し込んだ。

今は固く閉ざされた瞼に口付けると拓実を置いて村へと向かった。

こんな事が起きないように、二度とこんな考えに至らないように、こんな風習を知っている人間が居なくなるように。

大分時間はかかったしまったが村には生きている人間は皆無となった。

それから3日目を迎える。

拓実が目を覚ましたのである。また俺を見て。

これからは俺だけを見て欲しい。そんな感情に胸を高鳴らせた。

しかし、彼の紫暗の瞳は寛貴を見ると恐怖に怯えた。

「うっ、うわぁぁぁー」

逃げようと暴れるのを押さえつけるのに精一杯だった。

病み上がりでも凄い力で抵抗された。

このままじゃダメだと思い、鎖で動きを封じた。

それからはおとなしくなったがそれでも鎖を外す気にはなれなかった。

食事や着替えを手伝った。それからは全く寛貴の方を見てくれなくなった。

それどころか言葉すら話さなくなった。あんなに明るかったのに、今は面影すらない。

心が無くなったみたいに、ただ、生きているだけの人形のようであった。

「ねぇ、何か話してよ。どんな事でもいいんだ。声が聞きたい」

寛貴の声に反応しなくなって二月になろうとしていた。








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