別れは俺への罰
自暴自棄になる寛貴は一人ひっそりと闇に歩き出す。
「落ち着いたか?」
「・・・」
正嗣はがしがしと頭を掻くとその場に座り続ける寛貴を町へ連れて行こうと考えていた。
元々自分の目的は寛貴を領主のところに連れていくことであった。例の薬のことを聞き出すためだ。
しかし、こんなに状態の寛貴がまともに話してくれるだろうか?
あの領主の事だ拷問でもするかもしれない。そんな事させるぐらいなら二人で協力して彼女を助け出した方が幾分か楽なのではないかとおもえてくる。
「寛貴。いい加減にしろ」
「うぅ・・・」
微かなうめき声に反応して寛貴が顔を上げると木の陰にいたことで手榴弾の被弾を軽減され、火炎弾の影響も少なくかろうじて生きていた男が助けを求めて呻いていたのだ。
「い、痛い。たすけてくれ」
寛貴はすぐに近くに行くと冷たい目で見下ろしていた。
「ひぃ、、、悪かった。ちょっと、、、出来心だろ?重症なんだ、お互い様だよな?」
「正嗣、やめておけ。役所に突きだそう」
「ぬるいよ。生きたまま焼かれるってどんなのかわかる?」
「えっ、、、」
男の頭を鷲掴みにすると近くの小枝を拾い上げまだ燃えているところにかざした。あっという間に小枝に火が燃え移り先から順に燃え広がる。それを眺めながら男の眼前に突きつける。
「待ってくれ。正嗣さん、助けてくれ」
我に返った正嗣がとめるまもなく寛貴は男の右目にそれを突き刺した。血が溢れ出るが火が消えるわけではなくその場で燃え続けていた。
「ぐあああああぁぁぁぁあーーーー」
男はその場でのたうち回った。刺さった枝の痛みか焼かれる炎の痛みか、はたまた入り交じった恐怖から来るものなのか?
正嗣は止めることが出来ないと思った。
多分止めたら、自分にも?いや、俺は寛貴の親も同然なんだ。怖がるなんて馬鹿げている。
「そのくらいにしておけ寛貴。ボウズは帰ってこないんだ❗」
「帰ってこない?なんで?きっとこいつの死を望んでる」
なに?何を言い出すんだ?狂ってる。こんなふうに育てたのは、、、俺なのか?
確かに人の殺しかたや無力にする方法等を教え込んだがこんな風になるなんて考えても見なかった。
いや、どこかではわかっていた。でも裏でやってくにはこのくらいの割りきりがいるとも思っていた。
考えが甘すぎたのかもしれん。
「正嗣さん、たすけてくれ」
「へー正嗣の知り合いなの?」
ドキリとした。その冷えきった目を見ると背筋が凍りついていくようで視線をそらしてしまった。
「やっぱり、正嗣の指示だったりするかなぁ~って思ったんだけど?」
この勘の良さにも定評があったっけ?
「知らんな。しかし、やりすぎじゃないか?」
「そんなことないでしょう?それに正嗣は俺に聞きたいことがあるみたいだし?」
「気づいてたのか?」
「そりゃーね。わざわざ追いかけて来たくらいだし。」
いきなりの投げナイフに反応できなかった。
「わぁぁぁぁーーーー寛貴、何を!!」
「拓実の痛みを分けあおうかと思って?」
「!!」
「残念だったね❗黒死病の予防薬?もう誰も助からないよ。さっき街の方に黒いもやみたいなのが集団で飛んでいったでしょう?あれが、何だったか分かった?」
「どういう事だ❗」
「もう手遅れだってこと。本体は倒しても一度離れたモノは帰ってこない。街はどうなってるかなぁ?」
「特効薬があっただろう?あれを一人分でいい。分けてくれ」
「出来ないよ。あれは拓実が作ってたものだから。それに拓実しか出来ないんだ」
俺は補助で手伝うくらい?うーん。
あれって手伝ってるっていうのかな?
どっちみち拓実のいない今となっては誰も助けられないんだよね~
「どうでもいいでしょ?今更さ」
銃を取り出すと小刻みに痙攣しだしていた男に向けて構えた。そして引き金を引く瞬間に向きを反転、正嗣の心臓目掛けて引く。
「何を!!」
「分かってるんだよ。知り合いでしょ?」
膝を付き崩れ落ちる。感情の籠らない目で静かに見送る。
「俺から拓実を奪った罪は重いよ。そこのもう一人も。」
急遽別の方に向けて引き金を引く。そこからも一人、真っ青な顔で出てくるところだった。
「俺は何も知らされてない。ただ待機していてくれって」
寛貴は一歩、また一歩と近づき目の前に来たところで歩みを止めた。
「正嗣さんの仇ー」
逃げられないのを悟ったのか攻撃に転じてきた。
そんなこと寛貴にわからないはずはなかった。一撃目を避けて足を引っ掛け転ばせる。そこへ背中を向けた刺客にナイフを突き立てた。
「ぐあっーーー」
「見苦しいなぁ。まだ生きていたい?」
容赦のない仕打ちだった。ギリッとナイフを奥に刺すとえぐるようにこじる。一回抜いてまた刺し直す。もちろん急所は外して。なので苦しみ続けるだけで決定打がないので痛みは続いても死ぬに死ねない。
「殺して、、下さい、、、」
「良くできました!はじめからそう言ってれば楽に死ねたのに」
心臓へとつき刺した。
寛貴は一人燃え尽きたモノを眺めた。
炎の勢いは次第に収まり植物だったもののなれの果てがそこにはあった。
しかし、拓実の焼けたはずの死体は存在しなかった。まるで灰になって消えてしまったかのように。
「どこかで生きてるって信じていいのかな?」
ポツリとこぼすとどこへ行くとも決めずに歩き出した。
二人で行くはずだった。
これからの事も。これからの行き先も。
心に空いた穴はどうやって埋めればいい?
もともと、俺には心なんてあったっけ?
どうやって笑ったんだっけ?
今はもう遠い過去の事のようでわからない。
寒い、でもどうして寒かったんだっけ?
寛貴はたった一人で歩き続ける。
「これは、君を守れなかった俺への罰なのかなぁ~?」
ーーまた君に会いたいーー




