2-1.薔薇の花を咲かせる
こうして4月7日。
ついに始業式。
そして僕の高校2年生の生活が始まった。
事前に発表されていたクラス2-F組の教室に入る。
僕の高校は成績に応じてクラスが振り分けられる。文系・理系の授業については、移動教室にて各々が散らばる形式となっている。
「よお、また一緒だな。腐れ縁?」
僕の顔を見るなり、話しかけて来たのは、トウマである。
トウマとは小学校から同じクラスが奇跡的に続いている。
こんなにも同じ時を過ごしているが、僕とトウマはあまり仲が良くない。
言わば、トウマはクラスの中心メンバーだ。
サッカーなどというモテる事が約束されたスポーツをしている。身長も高く、髪も短いが爽やかだ。
そう、僕とは対照的な人種。
小学生の頃は何も気にせず遊んでいたが、僕が内気な趣味に走ると同時に、トウマは離れていった。
正直、同じクラスというのは嫌だな、というのが僕の気持ちだ。
早速トウマは〝似たような人種〟を何人か見つけ出し、楽しそうに話している。
そんな僕の肩を叩く、さえない友人。
茂木くんだ。
昨年から仲が良い。
僕はだいたい茂木と話している。少なくとも高校1年生時点では、彼との会話やカードゲームなどが高校生活と言っても過言ではない。
正直、同じクラスである事が嬉しい。
「新作パック買った?」
新作パックとは、カードゲームの話である。
「買うの忘れてた!」
茂木は新しいクラスの事よりも、カードの事を話題に出してくる。そんな所もなんだか居心地がいい。
「今日、帰りに行こうぜ?」
「いいね!」
そんな話をしていると、僕は教室に入る女性に目が行く。
とても姿勢の良い歩き方。
凛とした顔立ち。
肩に掛かりそうな黒髪ストレート。
清楚なのに、少し短いスカート。
あれ、少しお化粧したのかな?
もっと綺麗だ。
高嶺依子さんが教室に入る。
もしこれが漫画やアニメならば、間違いなく僕は背景に薔薇の花を咲かせるだろう。
他の男子生徒たちが騒ぎ出す。
(マジか!ヨリコ様と同じクラス!?)
(最高すぎるだろ!)
高嶺さんは、裏でヨリコ様と呼ばれているみたいだ。
ファンクラブがあるという噂は、噂の域を出ないが、とにかく学内ではアイドルとかお嬢様のような扱いを受けている。
学年中、いや、学校中で高嶺さんを好きな人は多いはずだ。
僕もそのひとりだ。