1-1.クロアゲハ
夏休み初日だと言うのに、見慣れたクラスメートたちが、見慣れたいつもの教室に集まっていた。
夏期講習というやつだ。
僕たちは2年生だけど、勉強には力を入れているので、〝勉強に不安な者〟を対象にした夏期講習が行われている。
無論、皆が不安なのでほとんどのメンバーが集まった。
「お早う御座います」
僕の隣に中性的な顔が。
絵留くんだ。
やはり彼は、なんというか掴み所も無いし、不思議な感じだ。
「お、おはよう」
「どうですか?学校生活は。」
絵留くん!
それは僕の台詞だ!
「うん。良い感じだよ。絵留くんは?」
「貴方と同じです」
そこで会話が途切れた。
「なぁなぁ、今日もゲーセン行く?」
今度は茂木が提案してきた。悪くない提案だ。今日も加代子さんは一緒に来るだろうか?
加代子さんを誘おうと、加代子さんを見る。
た、高嶺さんと談笑しているではないか!
「加代子さん。虫に興味があると仰ってましたよね?」
「は、はい」
「庭のミカンの木に住み着いたクロアゲハが羽化を迎えているの。素敵な姿だから、加代子さんに見せたいなって」
「く、クロアゲハ」
な!
なんて高尚な会話をしているのだ、高嶺さん!
「は、ハカセも連れて行かなきゃ」
加代子さんが答える。
「はかせ?」高嶺さんが問いかける。
ハカセって僕の事じゃないか!
「ぼ、ぼくのこと?」
2人の会話に割って入る。
凄いぞ僕!
「そう。はかせ」
高嶺さんが笑う。
「確かに博士っぽい」
それはどういう意味なのですか!高嶺さん!
「それでは、博士さんもどうですか?」
「い、行く!!!!絶対行く!!!も、茂木も行くよな!?」
隣の茂木も頷いた。
こうして退屈な夏期講習を終え、
たどり着く!
た、高嶺さんの家!夢なのかこれは!!
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※2018.11.7 修正。
誤 1年生 → 正 2年生。
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