1-7.禁則事項
またしても加津代食堂。
今日は3月29日。
書類を用意するからしばし待たれよ、と天使からメールがあり、本日呼び出された。
「はい、これ」
ドン、と分厚い史料を出された。
辞書ぐらいの厚みがある。
「これは、、、」
「ラブアシスト制度の説明書と、同意書もろもろ一式」
「全部読めるかな。。。」
こんな分厚い資料を読む気にならないが、僕は疑り深い。これが詐欺で良くある、読まない奴が悪いパターンにならぬよう、読むことにした。
色々読み進めると、タイムリープの条件などが書かれていた。
外界へ及ぼす影響、被験者の悪用の可能性を考慮し、タイムリープは1日1回5分までという制限がつくこと。
タイムリープ前後で被験者及び天使の位置に大幅な移動がある場合、元の位置に戻る。
記憶のみが引き継がれ、身体の状況は元に戻る。故に怪我の治療などにも可能である。
重要なのはこれぐらいだった。
読み進めると、禁則事項が書かれていた。
天使の存在及びラブアシスト制度は口外してはならない。
タイムリープを悪用してはならない。
僕は口が硬いし、真面目だ。ここら辺は守れそうだ。もうひとつの条項は、なんとも言えない。
ーーー天使に恋をしてはならない。
僕は知らないフリをして、読み進め、同意書にサインをした。
「七星瑠奈よ」
天使が言う。
ななえ、るな。
これが天使の名前か。
七星が手を出してくる。
握手を要求される。
僕は素直に七星と握手する。
ーーー禁則事項を破った場合、ラブアシスト制度は終了するものとする。
ーーーその場合、天使も連帯責任とし、天界への強制連行及び処罰を与える。
七星への恋心は隠す事にした。
「ところでアンタ、好きな人とかいるわけ?」
僕はその質問にドキっとする。
「い、いないよ」
「いや、その反応、いるでしょ?」
七星がにやけている。
「そうそう、私は4月から転校生でアンタのクラスに入るから。よろしくね」
何故だか、喜ぶ僕だ。
「とりあえず、学校が始まらないと、ラブアシストも始まらないから。新学期を楽しみにしててね」
「よ、よろしく」
「がんばろうね」
七星が微笑む。
天使の笑顔は簡単に禁則事項を破ろうとしてくる。