1-5.排気音を立て、バスが来る
1日ぶりの加津代食堂。
今日も店の人がいない。
テーブルを挟んでご対面。
昨日の天使が目の前にいる。
「アンタさ、疑ぐり深い性格もモテないよ」
黙り込む。
疑う事の何が悪いのか。
「わかりやすく、外に出て、試してみるわよ。駅前とかいいでしょ」
え、駅前!
僕が、二番目の私服の僕が、こんな可愛い女の子と駅前に行くのか!?
手汗がじわじわと出てくる。
「なーに?緊張してんの?」
天使はにやけながら僕を見る。かわいい。
店を出て、駅前まで歩く。
食堂からは10分ほど歩かなければならない。
「ねぇ、なんでアンタさっきからちょっと後ろ歩いてんのよ?」
天使が振り向きながら話した。
「いや、その、な、なんか不釣り合いじゃないかな?ぼ、ぼくたちさ」
こんな可愛い子と僕が横並びで歩く姿は想像出来ない。
「なにそれ?」
天使は苦い顔をする。
「バッカじゃないの?やっぱ人間って細かいことウジウジ変なのー。別に隣歩いてなんて言ってないし。」
なんだか天使は不機嫌である。
しばらく歩いて、駅。
駅のロータリー。
その中央にある時計台は11時26分を指している。
ブロロロ、と排気音を立て、バスが来る。
「バスが来たし、タイムリープしてみる?」
天使が言う。
「ちなみに、5分前に戻る時、私たちが大幅に移動してると、5分前の場所に戻るからね。言ってること、分かる?」
分からない。
「昨日は食堂で話をずっとしてたから、5分経っても何でもなかったけど、例えばアンタがバスに乗って、5分前に巻き戻した時に移動しなかったら、おかしいでしょ?」
なるほど。なんとなくイメージ出来た。
「ほら、やるよ」
天使がまた、両手を上げる。
これって、もしかして、おっぱいのチャンスですか!?
僕はおっぱいを、揉もうとする。
おっぱい!
いや、今はダメだ!駅前の公共の場で、おっぱいは揉めない!
僕は両手を上げている天使とハイタッチをする。