1-3.タイムリープは1日1回5分まで
「さささ、触るってどこですか!?」
天使が両手を上げた。
脇腹をこちょこちょ出来るような、そんなポーズだ。
「どこでもいいよ? 私は人間とは違うから、アンタたちの好きなおっぱいでもいいけど?」
お、おっぱい!
いや、今はおっぱいでは無い!
「そもそも、なんであなたに、さ、触る必要が?」
「祝福を与えるためには、物理的な繋がりがないとダメなのさ。つーか、アンタ凄い汗。ヤバイよ。あー!分かった!緊張してるんだ?」
そりゃあそうだ。
目の前の可愛い女の子が、両手を上げて、おっぱいを触っていいんだよ、と説明している。
おそらく、僕の人生において、いや、世の中の男性にはなかなか訪れないシチュエーション。
だいたい、僕は普段から女性と話さないし、彼女も出来ないし。。。
うわぁあああ!揉んでしまえ!
僕が目の前の天使の胸を揉もうとした瞬間、痺れを切らした天使が僕の手を掴んだ。
やわらかい。。。これが女の子の手!
ーーーーえ?
なんだこれ?
僕と天使以外の周りの風景が歪み始めた。残像のように揺らいでいる。
「いま、タイムリープ中だよ」
天使が言う。
「これが、タイムリープ?」
「窓を見てみなよ」
僕は窓を見る。
店の前を歩く人がビデオテープの巻き戻しのごとく、後ろ歩きで逆向きに歩いている。
「5分前に戻ったわ」天使が言う。
「全然分からないなぁ」
5分以上は食堂にいたため、正直変化がわからなかった。
「私とアンタの記憶は残るけど、世の中の事象は全て戻るわ」
にわかに信じがたい。
僕は疑ぐり深いのだ。
「さすがに驚いたでしょ?」
「まだ、信用は出来ません」
「そう?残念ながらタイムリープは1日1回5分までしか使えないの。明日もやってみる?そうしたら信じてよ」
その後の会話は覚えていないが、僕はそのまま漫画を読みに行き、そのまま家に帰って、ベッドに寝転び、ポータブルゲーム機でRPGをプレイしながらひとり奇妙なその体験を思い出していた。
ーーー天使は実在する。
ーーー祝福という名の超能力が使える。
ーーー僕はラブアシストとかいう制度の実験に選ばれて
ーーー恋愛に前向きになる。
やっぱり訳がわからない。
そもそも、恋愛をしなきゃいけない理由ってあるのかな?
少子化だとか、なんとか、よくわからない。
ただ、僕はゲームのセーブとロードを繰り返しながら、眠っていた。