1-2.繊細な傷口
母親に根負けし、制服に着替える。
学校へ行く気は無かったが、七星に呼び出されたので加津代食堂へ向かった。
僕も聞きたいことがあった。
そもそも、なぜタイムリープが起きなかったのか、だ。
おそらく七星もそれを説明したいに違いない。
加津代食堂の扉を開けると、七星が腕組みをし、僕を待っていた。
「アンタ、ちょっと太ったんじゃない?」
七星は傷心気味の僕の繊細な傷口に、平気で塩を塗って来た。2週間、何もせずに寝ていれば、そりゃあ太るさ。
「ど、どうしてあの日、タイムリープが起きなかったの?」
僕は早速本題に入る。
「はっきり言っておくわ。ラブアシスト制度の被験者はあなただけではない。でもこれはルールだから、人数や被験者数は答えられない。アシストの内容も皆異なるから、それも内緒。というより、私も分からないし、クラスに私と同じような天使がいるのかも分からない」
七星もお手上げのような表情。続けて語り出す。
「おそらく、誰かのラブアシストによってタイムリープが使えない状況になった。そう考えるのが妥当ね」
「それじゃあ何にも分からないよ。だいたい、世の中の事象は全て巻き戻るんだろう?誰かが超能力を使ったとしても、それ自体が巻き戻されるんじゃないのかな?」
「わたしにだって分からないわよ!」
七星は感情的だ。
「僕の人生台無しだよ。もう学校には行けない。ラブアシストもしないし、ニートになろうかな」
僕は食堂を出ようとした。
「アンタのために色々考えたの!」
一応、僕は振り向く。
「学校行こうよ?」七星が言う。
「無理だよ。君には分からないだろうけど、僕は毎日胃が痛い。」
七星が奇想天外な事を言い出した。
「アンタと私が付き合えばいいのよ。」
、、、え?