4-1.七星のことを七星
大変な事態が起きた。
今日は4月の14日だ。
数学の実力テストによって、クラス分けが行われた。頭の良い人から順に3クラスに分けられ、それぞれが授業を受ける。
な、なんと!
隣の席に高嶺さんがいるのだ!
突如現れたビッグチャンス!!!!
僕は数学のトップクラスで授業を受ける事になったのだ。
そして、ランダムに選ばれた席順で、僕の右隣に高嶺さんがいるのだ!
が!しかし!
当たり前だが、この席配置になるのは数学の授業中限定なのだ!
話しかけるタイミングなど皆無!
僕は高嶺さんに近づく方法を考える。
ーーー例えば僕が教科書を忘れて、隣の高嶺さんに見せてもらう。これはどうだろう?
いやいや、まず高嶺さんに迷惑がかかってしまうではないか!
ーーー座る席をあえて間違える!高嶺さんの席に座って、おっちょこちょいを装う!
高嶺さんは、やだもー、なんて笑いながら僕の間違いを指摘してくれるのではないだろうか!?
席を間違えるようなバカは嫌だろうなー。と思う僕。これも無しだ。
ーーー間違って消しゴムを落とす作戦はどうだろう。拾ってくれる高嶺さんはにこやかに拾って僕に渡してくれるのではないか。
いやいや、消しゴムに細工でもしない限り、うまく高嶺さん側に転がることも無いだろう。
う〜ん、悩む僕。
数学の授業が終わり、何もできない僕。
自分のクラスに戻るとニヤけている七星がいる。
「ビッグチャンスじゃん?」
「う、うーん、でもなかなか話しかけられないよ」
「普通に話しかけなさいよ!いくじなし!」
「無理無理!無理だよ!」
「なによ!バカたれ!アンタはそんなんだからダメダメなのよ!」
「七星には分からないよっ!」
あっ。
僕はこの時、七星のことを七星と呼んでいた。
あれ、女子の名前を呼ぶなんて初めてだ。
「いいわ。それが難しいなら、一度話しかけてみて、タイムリープすれば良いじゃない?次の数学の授業の時にやってみなさいよ!」
そ、そうだ!
忘れていた!
僕はやり直しが効くのだ!