3-2.パンツを見せて
教室に入る。
茂木がいる。
「おはよう」と僕。
「なぁ、発表見たか?」
「なんの話?」
「今までのレアカードを収録したエクストラパックの発売が決まったぞ!」
「えーっ!」
って茂木よ!
こんな日にカードの話!?
いや、こんな日だからこそ?
「ちょっと!カードの話は終わり!」
八巻さんが割って入ってくる。
八巻さんは天使なのだろうか?
僕は分からない。
途中から僕に干渉して来なくなったのは、様子見なのだろうか。
とにかくパンツを見せてきた八巻さんとも、今日でお別れだ。
「や、八巻さん、遠くの学校に行っても、元気でね」僕は言う。
「まだ早いよ!」八巻さんは笑った。気が付けば七星が隣にいて、加代子さんもいつのまにかいて、皆が笑っていた。
「なーに話してんの?」
トウマが割り込んでくる。
オマケみたいに魚住と吉田くんも混ざってきた。
僕の席の後ろの厳島くんは相変わらず遠い目で僕らを見ている。けど、少し笑顔だ。
その塊が、大きくなっていく。
知らぬ間に美和子さんが現れ、トウマの隣にいるし、6人の転校生達も、僕は誰が誰だか見分けがつかないけど集まって来た。
絵留くんも相変わらずだ。
そうやっていくうちに、なんだかよく分からないけど、クラス全員がひとまとまりになって、誰が仕切るわけでもなく、でも、何となく分かるのは、
僕は何故か、
その中心にいた。
僕は、勇気を出してみる。
勇気を、振り絞る。
「ねえ、みんなで写真撮ろうよ!」
「早いって!まだホームルームも始まってねーぞ!」トウマが突っ込む。
笑いが起きる。
丁度、担任の丹波先生が現れた。
吉田くんが先生に言う。
「ん、先生!カメラマンよろしく!」
皆が笑う。
僕らは朝から、並んで、丹波先生がカメラマンとなり、集合写真を撮影した。
「はい、チーズ!」
携帯端末のシャッター音が鳴る。
「って!先生は!?」
「えーっ、先生はいいよ。カメラ係だし」
「おまえらーっ!」
笑うクラス。
多分、みんな無理して笑ってるところもあったはずだ。
それでも、皆、多分、示し合わさなくても
悲しい気分で終わりたくない、そう思っている。
そこに高嶺さんはいないし、皆も違和感を抱いてるかもしれない。
僕はそれを、受け入れる事にした。
たぶん、高嶺さんはまたどこかで新しい人生を始める。
そう思う事にしたんだ。