2-1.反芻
自宅に帰り、僕は高嶺さんとの会話を思い出し、反芻していた。
全てが繋がりつつある。
いつか、高嶺さんが朝早くあの姿でクラスにいた時、いったい何時から身嗜みを整えているのだろうと、疑問に思った事があった。
元から、あの姿を保っていたのだ。
そして、ラブアシスト制度が欠陥だらけなのは、高嶺さんが創り上げた幼稚な実験制度だったからだ。
そして僕は、七星に聞かなければならない。
大天使の事、片方の翼の事。
もう、七星には、会えないのかもしれない。
高嶺さんが僕に直接告白してきた今、果たして、3月までラブアシストが続くのかも疑問だ。
さらに、七星は僕たちの記憶が消えないって言ってたけど、これも怪しい。
だって、ある不都合が生じるからだ。
はぁ、それにしても、
僕はこれからどうしよう。
どうしたら良いんだろうか。
何より、高嶺さんがラブアシスト制度を創っていた事がショックだ。
こんな事あってたまるものか。
でも、そうだったんだ。
僕は偽りの高嶺さんに恋をしていた。
僕は内面が好きだって、フォローを入れたけど、僕はあの見た目に恋をしていたに違いない。
七星は高嶺さんの事、知ってるのだろうか。
それも分からない。
今は何もしたくない。
僕は、携帯ゲーム機を取り出し、恋愛ゲームを始める。
おそろしく、つまらない。
この可愛いヒロインも、誰かが造り上げた、虚構の生き物。喋り方も、キャラクターも、本物じゃない。やり直せる。
現実と乖離した出来事でプレイヤーを楽しませるようにプログラミングされている。
それでしかない。
僕はまた、いやらしい計算を始めた。
高嶺さんは好きじゃない。
七星は人間にはなれないかもしれない。
だとしたら、僕には加代子さんしかいない。
あれ、でも、加代子さんって
トウマといい感じなんだよな。
トウマは一枚上手だったんだ。
知らないうちに、加代子さんも取られた。
僕には何も残っていないじゃないか。
偽りの僕が、偽りの力で恋愛をしていただけなんだ。
僕は涙が溢れてきた。
恋愛について、結論を出すのはまだ早いかもしれない。
僕はまた、1年ほど前のウジウジいくじなしな僕に戻りつつある。
誰とも会話しないで、3月が終わるのを過ごすのも手かもしれない。
そうやって悩む日々が続き、気がつけば、登校日!
でも僕はちょっと成長したのかもしれない。
ちゃんと学校に行く準備をしているからだ。