1-2.高嶺さん
「高嶺さんが、醜く生まれた?」
「そうです。私は醜く産まれました」
「ど、どういう意味なの?」
「とにかく、見た目が醜く、産まれたそうです。母はとても美しい人だったと聞いています。父も顔立ちは整っています。そんな2人から、醜い醜い私が産まれました」
「み、醜いかどうかなんて、分からないじゃないか。赤ちゃんはみんな可愛いと思う」
「父は、発狂したそうです。どうして俺たちの間にこんな醜い人間が産まれるのだ、と」
「ぼ、僕には分からないけど、い、遺伝子通りにならない事もあるんじゃないかな?」
「父は天使の力を利用して、私を“絶対的美少女”にしました」
「え?」
「私は天使の祝福を受け、今の姿になりました」
「天使の祝福、なの?」
「そうです。私は小さな頃から、可愛く育ちました。醜かった頃の記憶はありません」
「よくわからないよ、高嶺さん」
「私が一番、私のことを分かりません」
「えっ・・・」
「私が、私の姿が天使の祝福によるものだと父から教えてもらったのは高校1年生になった時です」
「つ、つい最近なんだね」
「私は悩みました。今までの友人、人間関係、出来事、言葉、全ての体験は、〝真実の自分〟がした体験ではないから」
「真実の自分・・・」
「だって、貴方やクラスの方が褒めているのは、私の容姿ではありませんか? それは私であって、私ではありません。本当の私は醜いんです」
「た、高嶺さんは、言葉や所作、その振る舞いがとても綺麗だよ!内面だって素敵だ!」
「内面は幾らでも磨く事が出来ますよ。容姿は難しい」
「け、化粧があるよ!だから女性はお化粧をするんだ!」
「今は化粧の話ではないです。それに、幼少期に化粧をする人はいないと思います。だから、私は分からないんです。自分が。自分の存在が。鏡を見ても、映るのは美少女ですが、私であって、私ではありません」
「て、天使の祝福は、ありふれてるって七星が言ってた!宝くじに当たるのも天使のおかげだって!だから、だからさ、天使の祝福を受けた今の高嶺さんが高嶺さんなんだよ」
「違います。違うと思うんです。だから私は悩んだんです。果たして、天使の祝福って、私を幸せにしてるのか?していないのか?なんだろう、天使の祝福って。自分以外の力で手にした物って。とても、とてつもなく、毎日悩みました。夜も眠れず、過食気味になりました。でも、髪は痛まず、太らず、肌はツヤツヤなんです。だから、、、」
「だから?」
「私は考えたんです。果たして天使の祝福は、私を、人を、幸せにしてるのか?だから、理由をこじつけて、ラブアシスト制度を考えました。私と同年代の人間が、祝福を受ける事が幸せか否か。それを確かめたかったのです」




