3-4.矛盾
僕の思い出の中にも、高嶺さんがいた。
高嶺さんに何度もアドレスを聞いたり、告白に失敗したり、グミ交換したり、夏休み、楽しかったり、メイド服作ったり、そして、今も、最高の瞬間だ。
少しずつ、階段を上っていく。
そして、賽銭箱の前に僕と高嶺さんは立った。
お財布から小銭を取り出し、賽銭箱に入れる。
立て看板に礼儀作法が記されており、僕はその通りに礼やパンパンと手を叩き、手を合わせ、お願い事をする。
僕は、やはり
2つお願いをした。
七星が人間になりますように。
高嶺さんとお付き合いできますように。
矛盾しているような、そんな願いだった。
僕と高嶺さんは長い行列から解放された。
「せっかくですから、出店を見ませんか?」
高嶺さんが提案する。大賛成だ!
僕らは出店を見て歩く。
よく分からないお面とか、巨大なたこ焼きとか、チョコバナナとか・・・
僕はこういったお祭りにはあまり参加しない。イケイケグループの行事だと思っていたからだ。
けれども、今は違う。
この時間が、楽しくてしょうがない。
来年は受験勉強でこんな事は出来ないだろう。
どうして僕はこんな楽しい時間がある事に気づけなかったのだろう。
もったいないじゃないか!
僕はふと、言葉が漏れていた。
「この時間が続けばいいな」
「そうですね」
とりあえずよく分からない景品がゲットできる、よく分からない輪投げをやったり、大きなフライドポテトを食べたり
とても幸せな時間が、緩やかに流れた。
神社を出て、何故だか僕らはその周辺をうろうろし始めた。
僕は、高嶺さんに告白出来る場所、タイミングを伺っていた。
恐ろしく、冷静だった。
自分でも分からない。
外が寒いからかもしれない。
僕は冷静に、そして、知らぬ間に、小さな公園にいた。
「ブランコでも、や、やりませんか?」
「良いですね」
小さな公園のありふれた遊具、ブランコ。
2人で並んで、ブランコを漕ぐ。
そこが僕の、人生で二度目の告白の場所だった。