2-3.タイムリープがあれば
気がつけば15時。
僕と七星はちょっと気まずい空気を残しつつ、トランプをやったり、時折昔の話をしながら過ごしていた。
「そろそろケーキ食べる?」
「ま、まだ、早くない?」
「早く食べて、せっかくだからお散歩でもしようよ」
「お散歩?」
「そう、お散歩」
「それもいいかもね」
僕はずっと食堂にいる事に若干の退屈さを感じていたのだ。良かった。
でも、まだ早いような。
「せっかくなら日が暮れてからにしようよ。駅前のイルミネーションでも見に行こう」
「アンタにしてはロマンチックね」
「それは余計だ」
「時間あるし、初詣デートのこと考えたら?」
「そ、そうだね」
僕と七星はデートの計画を立てる。
当日の僕の服装、何時から集まるのだとか、何時まで遊ぶのだとか、お参り以外は何をするのか、とか。
七星は、僕とのデートでもないのに、必死に計画を立ててくれた。
それでも僕は、七星に、高嶺さんに告白をするという事を言わなかった。
そしてもうひとつ、僕は、高嶺さんとのデートに関して、決めていたことがあった。
「た、高嶺さんとのデートは、タイムリープに頼らない」
僕は伝える。
これも本当は言いたくなかった。
何故なら、七星を遠回しに否定するような、そんな気がしたからだ。
僕はラブアシスト期間はチャンスだと思っていた。タイムリープがあれば基本的にやり直しが効くからだ。
それでもどこかで僕は、自力で頑張りたい、そういった気持ちが芽生えていた。
高嶺さんへの気持ちは、正直に、今度こそ、伝える。
七星はいない。タイムリープも使わない。
僕は気持ちをぶつける。
それが、うまくいけば良いなと思う。
けど、ダメだとしても、それはそれで良いのかなって僕は思う。
やってみなきゃ、分からないから。
「アンタさ、やっぱり成長したよね」
七星が僕を見ながら、にやけていた。
君のお陰で、成長出来たんだ。
「な、七星のおかげだよ」
「でしょうね」
「なんだよそれ」
「はやくケーキ食べてお散歩行くわよ」
どこで何を間違えたのか、ケーキはあまり膨らんでないし、味も甘すぎる。
僕らのケーキは、成長していなかった。