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タイムリープは1日1回5分まで  作者: 大野春
chapter.08 6人の転校生
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2-2.忘れない方法



帰り道の途中、僕と七星はカフェにいた。

最近出来た店で内装がオシャレで、人がいっぱいいたが、なんとかカウンター席に座る事が出来た。隣同士、なんだかカップルみたいだなと、僕は未だにそんな事を意識している。



僕は七星と話したい事が沢山あった。




「なっ、七星」

「なに?」

七星はブラックコーヒーを啜り、露骨に苦い顔をしている。

「その、皆んなに言わなくて良いの?」

「何をよ」

「ラブアシスト制度が終わったら、七星はテンカイに戻るんだろ?」

七星が言ったわけでは無いが、僕はそうだと思っている。


「うん」


やはりそうか。


「じゃあ、言わないと、加代子さんとか茂木とか・・・みんな七星の事が好きだよ。突然お別れなんて悲しいじゃないか」


「そんなの分かってる。アンタたちは辛いかもしれない。今は私と毎日顔を合わせているだけで、私の存在は大きいかもしれない。でもね、この先の人生、何年もあって、色んな人に出会うのさ。そうしていくうちに、たった1年、私はアンタたちの人生において、些末さまつな存在の1つでしかなくなる。名前も顔も、忘れるの」


僕には分からない。

名前や顔を忘れる?

そんなわけないじゃないか。


「なんでそんな事、言うんだよ」



「私だって辛いから、こうやって理由を作ってるのよ」


僕は言葉が出てこない。


「でも、本当の話だよ。私は何人もの人を見てきた。大人になればなるほど、忘れるの。顔も名前も、声も、一緒にいたことは分かっても、一緒に何をしたのかまでは覚えてなかったりするの。アンタには分からない。アンタはまだガキだから。でも、それを受け入れ始めて大人になんのよ」


七星が親や先生の説教のような事を語り出した。


「わ、分からないよ!」


「でもね、忘れない方法があるの」


「なーんだ、あるんだ。教えてよ」


「それは」


騒ついた店内が静まったかのように、七星の言葉だけが、僕の耳に入る。



ーそれは




ー忘れたくない人と




ーずっと一緒にいる事。



ーもしアンタに、忘れたくない人が現れた時の為に




ーアンタは今から恋愛に前向きになって




ー恋愛して




ーその人とずっと一緒にいるの





ーそうすれば、顔や名前は絶対に忘れない





七星の言葉は、緩やかに

僕の耳に入っていく。

ただただ、当たり前の事だった。

ずっと一緒にいれば、忘れる事はない。



僕にはまだ分からないし、今日の言葉は、例えば大人になっていくうちに忘れるかもしれない。



分かっている事を再確認してしまった。



次の春が来れば

七星はいない。


そして、想像もつかないけど

いつしか、七星の事は忘れてしまう。

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