2-6.UFOキャッチャー
早速まごつく僕。
爽やかなアルバイトの店員さんの指示に従って会員登録を進める。
住所、指名、年齢、電話番号。。。
カラオケをするために、こんなにも個人情報を記載しなければならないのか。。。
僕は疑り深い。この個人情報が悪用され、大変な事になるかもしれない。
時間をかけて、会員の規約を読んだ。
七星は受付のスペースに置いてある、UFOキャッチャーを眺めている。
しばらく経ち、会員登録が終わる。
案内された部屋に向かう。
部屋番号807号室。入室時間は19時27分だ。
「なんか、タバコ臭いわね」七星が言う。確かに臭い。
「これがマイクでしょ。なんか歌ってよ」
「えっ・・・」
「なによ。歌えないの?」
「いや、その、なんの曲が好きなのかなーって」
「私の好きな曲?」
僕はまだどこかで七星が天使ではないと思っている。
しかし、天使だった場合、僕たち人間の歌を知っているのだろうか。
「ないかな。いいから歌ってよ。その曲を好きになるから」
その一言に何故かドキドキする。
僕は端末を操作し、曲をリクエストした。
僕は普段アニメソングしか聴かない。
しかし、格好をつけて、有名アーティストの定番曲を歌う事にした。
音楽が流れ、歌に合わせて歌詞が画面に表示される。
僕は歌ってみるが、恥ずかしくて全然声が出ない。
たぶん、恥ずかしさが無ければ、僕は歌が上手いほうだと思う。これは本当だ。
拙い声で、歌い終わる。
「良かったよ」
七星が言う。
「ほら、歌いなよ」
僕は端末の操作方法を教えてあげた。
緊張が解け、僕はトイレに行く事にした。
807号室を出る。
「あれ?」
話しかけられた。
なにぃー!?
トウマがいる。
僕と正反対のイケイケ野郎、トウマだ!
さらに807号室のドアが開く。
七星が出てきた。
「これってどう操作すんの?」
カラオケ店の廊下、僕と七星とトウマ。
互いに状況の整理が出来ず、慌てふためく。