1-6.月曜日
午後13時45分頃。
予定通り七星が僕の家に来た。
僕は高嶺さんとの握手を何度も思い出し、坂山さんを脳内でボコボコにしていた。
「カヨちゃんは部屋でゲームしてる」
「よし、じゃあケーキを運んで・・・」
「部屋の扉を開けて、誕生日おめでとう!だね。行くわよ」
冷蔵庫の不恰好なケーキを持ち、僕の家を出て、斜め向かいの加津代食堂へ。
店に入り、階段を登り、部屋の前にたどり着く。ケーキを落とさない様にと僕は神経をすり減らした。
(じゃあ、いくよ!)
僕が扉を開く係になり、七星がケーキを渡す係になった。
扉を開く。
寝転んで足をぷらぷらさせている加代子さんと目が合う。
「えっ」戸惑う加代子さん。
すかさず七星が入る。
「カヨちゃん!誕生日おめでとう!」
「ええっ!!!」
加代子さんのこんな大きな声、僕は初めて聞いた。色んな感情が混ざった様な、そんな顔をしている。
不格好なケーキをテーブルに置く。
「ありがとう」
加代子さんはいつもの様な声で喋るが、少し上ずっている。心から出た言葉だと僕は思った。
「やったね」七星はにっこり笑顔を見せる。
「肝心なのはケーキの味だよ」
この見た目のケーキ、果たして美味しいのか?
「さぁさぁ、カヨちゃん。食べてよ」
七星が一階からフォークを持ってくる。
ナイフを用意しないのか。
加代子さんはフォークでケーキを適当に取り、口に入れた。
「美味しい・・・でも、たまごの殻が。。。」
ほら!七星!
「アンタチェックしたの!?」
「えっ!?僕のせい!?」
そんなやり取りに笑ってしまう。
みんな笑顔だった。
加代子さんは僕のことを好きじゃなくなったけど、
僕はこれでよかったな、なんて思う。
別に誰かと付き合わなくてもいい。
好き嫌いがちょうど良い距離で行ったり来たりして、そういった日々が日常に溶け込んで、それが良いんだと思う。
七星に感謝しなくちゃ。
ラブアシスト制度がなければ、今日は無かったと思う。
あと半年も無いけど。
僕はこの日々が続く事を願った。
でも、そうじゃないみたいだ。
そう、次の日、月曜日。
学園祭。
そこから、色々と変わってしまったんだ。