1-1.水曜日
今日は水曜日。 明日が木曜日で、明後日が金曜日。そして土曜日が来て、日曜日に高嶺さんと打ち合わせをして、加代子さんのサプライズパーティーを七星と行って、そして月曜日、学園祭だ。
な、なんて忙しいんだ僕!!!!
僕史上、一番忙しく、現実が充実しているではないか。
ぼんやりと過ごした水曜日の放課後、七星に呼び出される。駐輪場で僕は会話をする。加代子さんはいないみたいだ。
「まずいわ」
早速本題か。
「なにが」
「カヨちゃんの欲しいものが分からない」
「ど、どうしよう」
「この本によると・・・」七星が鞄から例の本を取り出す。
「〝もしも欲しいものがわからない場合、手作りのお菓子などをプレゼントすべきでしょう〟と書かれているわ」
「なるほど」
「でも私はカヨちゃんと同居している。お菓子は作れないわ」
「つまり・・・」
「アンタが作りなさいよ」
「ええーっ!でも、七星も作らないと意味が無いじゃないか」
「それなら私も行くわよ。アンタの家のキッチンを借りるわ」
「わ、わかった・・・」
正直、加代子さんから欲しいものを聞き出すより、こっちの方が早いと思う僕だ。
「今日は材料買いにいくわよ」
「えっ、今日?」
「何か用事あるわけ?」
「な、無いけど・・・」
「暇人なんだからさっさと行くわよ」
僕と七星はスーパーにたどり着く!
僕が買い物カゴとカートを押しながら、七星が欲しい商品を入れていく。
卵や牛乳、お菓子コーナーで飾り付けに使う様なお菓子やらなんやらを選んでいく。僕は携帯端末で検索を行い、ケーキ作りに必要なものを選んでいる。
七星との話し合いで誕生日ケーキを作る事になったのだ。
土曜日にケーキを作り、冷蔵し、日曜日に僕の家から持っていき、サプライズパーティー。そういう流れらしい。
ひと通り店内を回り終える。
「ねぇ、夫婦ってこんなカンジで買い物するわけ?」
七星がふと、そんなことを言い出すので僕は何故か恥ずかしくなった。
「そ、そうだと思う」
「ふたりで食べたいものを選ぶんだ」
「うん」
「いいなぁ」
「そうだね」
「さ、私のカードで買い物済ませて、あとはアンタの家で材料は保管しといてね」
「分かったよ」
僕と七星は別々に帰宅した。
少しでも加代子さんに感付かれない様にしなくてはならない。
僕は、
僕の未来がうまくいったとして
例えば僕がそれなりの大学に進んで
人並みに恋愛をして、誰かと付き合って
就職して、結婚して
そうしたら、僕がスーパーで買い物をした時
僕の隣には誰がいるんだろう。
僕はそんな事を思っていた。
思ってしまった。




