2-3.気がかりだ
高嶺さんと職員室を後にした頃には、校舎にはほとんど人はいなかった。
「今日は帰りましょうか」
「そ、そうだね」
誰もいない教室に戻り、僕たちはカバンを持ち、教室を出て、駐輪場へ向かう。
あれ?
あれあれ?
この流れはもしや・・・?
みんなのアイドル、高嶺さんと下校出来るのでは!?
いいや、忘れてはならぬぞ、僕。
少し遅くなったことがずっと気がかりだったけど、今日は加代子さんとのお菓子交換会があるのだ!
放課後にゲームセンター集合などと曖昧な約束をしてしまったが、今頃先についた加代子さんはゲームをして暇を潰しているのだろうか?
そんな確認や遅れるという連絡は、加代子さんにメールをすれば良いだけなのに、僕は高嶺さんの前で携帯端末を操作するのも失礼だと思い、それをしないでいたのだ。
「ところで・・・」
自転車の鍵を外した時、高嶺さんが僕に語りかけてきた。
「加代子さんとは、どうなりましたか?」
そうだった。
高嶺さんは心配してくれていたんだ。
僕は事情を説明する。
これからゲームセンターでお菓子交換会をやる事や、グミを持っていく事など。
「ふふふ。そうですか。では急がないといけませんね」
微笑む高嶺さんは自転車に跨る。
「では、お邪魔してはなりませんので、こちらで失礼します」
足早に去る高嶺さん。
あれ、なんだろう、この気持ち。
いや、今は加代子さんだ!
ゲームセンターに急がなくては!
僕は自転車を全力で漕ぐが、その瞬間、ガチャンとチェーンが外れた。
ま、マズイ!
ただ僕は冷静さを取り戻し、加代子さんにメールを送る。
ーごめん!いまチェーンが外れて、遅くなりそうー
僕は自転車を引いて、走り出した。