2-2.俺は黒豆
続いて、七星が教室に入ってくる。
彼女は今年度から転校生としてこの高校に入って来たのである。
クラス替えとはいえ、全く知らない人間がクラスに入ってくれば、皆気になる。
ましてや高校生にもなって、堂々とツインテールなのだ。
僕みたいなオタク気質にはどストレートな髪型だけど、あまり見るような髪型でもない。
さらに、可愛い。
早速、何人かの女子が七星に話しかけている。
隣の茂木が語りかける。
「おい、何見とれてんだよ?つーか、あんな子学校にいたか?」
「うーん、転校生じゃない?」
僕は適当に返す。
考えてみれば僕と七星の関係は秘密なわけで、僕は今日初めて彼女を見た、という事になるのだ。
しかし、改めて見ても可愛い。
七星は他の女子との会話中、一度だけ僕の方を見て、右目でウインクをして来た。
僕は身体がじわっと熱くなる。
「おい、見たか!いまあの子が俺にウインクしたぞ!」
隣の茂木が語る。
違う!僕にしたんだ!
とも言えない。
チャイムが鳴る。
クラスが段々と静まる。
担任の先生が壇上に立つ。
「担任の丹波だ。去年も一緒だった奴もいるな。俺は黒豆先生と呼ばれている」
溶けきらない緊張感、先生の一言について笑う者はいなかった。
「あと、転校生を紹介するぞ。七星、立て」
七星がその場に立つ。
「七星瑠奈でーす!よろしくね!」
シンプルな挨拶と、意味の分からないポーズ。
イケイケ男子たちが盛り上がっていた。
僕はガチガチに緊張している。
右隣の席に七星がいるのだ!
左隣は茂木!
将棋でいう、馬の進む位置に高嶺さんがいる!
ロケットスタートなのか、僕の新生活!