表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

5/8

20160819公開


第8章-第1話



 さて、みなさんは27人もの女子高生になったばかりの女の子たちから、熱い視線を浴びた経験が有ります?

 その時の私が、まさにその状況に遭遇していた。

 さすがに緊張をしていたのかな?

 折角考えていた挨拶の言葉を一瞬、思い出せなかった。


「主将の、いや、部長の三上です」


 彼女達は身じろぎもせずに私の次の言葉を待っていた・・・・

 こっちは慣れない挨拶で、アップアップなのに、そんなに真剣な目で見ないで欲しい(><;)


 昨夜考えた挨拶がどこかに飛んでいってしまったじゃないか(::)

 開き直った私は、何となく思った事をしゃべっていた。


「あなた達には申し訳ないけど、大変なところに来てしまったと思うでしょう。何故なら、27人もの入部希望者だけで、3つのチームが出来るわけですから。

 確かにレギュラーになれない者も沢山出るけど、皆さん全員に共通する事があるの。

 我がT高校女子ソフトボール部の部員って事。

 我が部のモットー、『一人の喜びや悲しみも、全ては全員のもの』を胸に刻んで、これからの高校生活を過ごしてください」


 続いて、司会進行役を任せていていた亜理子が説明を始めた。


「全員、入部届けを持っていますか? それではこれから受付を始めます。あなたたちから見て、右端の列4人、一歩前に」


 亜理子がテキパキと入部の儀式を切り盛りし始めた。

 うん、彼女に任せて正解だ。

 27人の入部希望者が秩序だった行動を取り始めた。


「万紀ちゃんのおかげね。こんなに新入部員が来るなんて、本当に信じられない」


 境香織先輩が感動したように言った。

 たった二人しかいない3年生部員の一人だった。


「いえいえ、先輩がたのおかげですよ。本当にこの高校に入学して良かったと思います」

「そう言ってくれると嬉しいわ。砂川部長、あっと、前部長も絶対に喜ぶわ」


 我が部のモットーの『一人の喜びや悲しみも、全ては全員のもの』を作ったのは、卒業した砂川前部長だった。

 1年生だった私を部長にしたのも、砂川前部長だった。

 それを我が事の様に喜んでくれたのが、現3年生の境先輩と沢田先輩だ。

 うん、本当に良い先輩方に恵まれたな、私・・・・・


 


第8章-第2話



 最近、面白い事に気付いたんだ、私。


 新入部員の私を見る目が一種の憧れってことに(^^;)

 もしかしたら、アイドルを見る目に近いのかな?

 何かの会話で、ふとそういう感想を言った時の花子と久美の反応が面白かった(^^)


「本当に、本当に、今頃気付いたの? 本当にあなたって信じられないくらい鈍感ね」

「花子の言う通りよ。彼女たちにとって、あなたは崇拝したくなる存在なのよ? これ以上は無いってくらいの活躍を、あの大会でした世界一の選手を毎日見れるのよ。憧れるなって言う方が無理」


 そうですか、私は世界一の選手なんですか?

 どうも実感が湧かないけど、その通りなんだろう。

 だって、知らない1年生がキャーキャー言いながら、わざわざ私達の教室の前を通るくらいなんだから(^^;)


「いい? 我がソフトボール部は今や『打倒T校』として全国の高校から狙われる存在なの。そのシンボルがあなた。あなたから三振でも奪おうものなら、そのピッチャーは英雄扱いよ。少しは自分の立場が分かった?」

「そんな事を言われても、私だって人間だよ? たまには三振くらいするわよ(--;)」

「あー、本当に分ってない。プロ野球の4番バッターから三振を奪えた高校野球のピッチャーを想像したら?」

「可能性はあるわよ?」

「中学生のピッチャーなら?」

「さすがに無理かも。とにかく全力を尽くすしかないわね」

「そう、あなたと対戦するピッチャーはそれくらいの気持ちで向かって来るの。まるで憧れているプロ野球の選手に対するように」


 ふーん、そんなものなのかな?


「あ、そう言えば、一人だけ違った目で見る子が居たわよ。えーと、邑井さんだったけな? ほら、ちょっときつめだけど、美人になりそうな子。まあ、どこがどう違うとは口では言えないけど」


 何か、また変な事を言ったのかな?


 驚いた事に二人とも無言になった。




第8章-第3話



「どうして?」


 2拍くらいの時間を置いて、花子が尋ねた。


「へ? 『どこが?』じゃなく、なんで『どうして?』なの?」


 私の素朴な疑問が更に二人の沈黙を呼んだ。


「いや、あなたって、時々鋭い事を言うのよね。

 確かに、この場合は『どこが?』が正しいわね。

 とりあえず、どこが他の新入部員の視線と違うのかを考えておいたら?」

「うん、そうするけど・・・」


 花子の言葉にうなずいたが、どうも釈然としないものを感じた。

 

 その会話が有ってから、私なりに観測しましたとも(^^)/


 観測結果は『視線が鋭い』だった。

 他の子たちは『視線が熱い、もしくは甘い』って感じ?


 数日後、打撃練習が終わって、久美にゲージを譲る時に視線が合った。中断していたボール拾いに慌てて戻った彼女に、私は衝動的に呼びかけていた。


「邑井さん、ちょっといい?」

「は、はい ><;」


 彼女の反応は、どこかで経験した気がするんだけどなぁ、思い出せないや(^^;)


「ちょっと、ストレッチを手伝って。どうもまだ体がほぐれてないみたい」

「は、はい ><;」


 おお、反応が可愛いぞ(^^) 


 邪魔にならないところまで移動した後、おもむろに前屈しようと腰を下ろしたら、花子と久美がこっちを見ていた。


「おーい、そこの二人! サボるんじゃない(^^)!」


 返事は惚けたものだったが、どこか違和感が有った。


「部長こそ、サボってるんじゃないわよ(^^)」

「それとも、ぎっくり腰にでもなったんじゃないの(^^)」


 違和感のせいも有って苦笑しながら、私も返した。


「みんなには内緒だけど、10分くらいサボるから、よろしく!」


 この言葉に周囲に笑顔が咲いた。

 だって、人一倍練習好きな私がサボるわけ無いからだ(^^)




第8章-第4話



「邑井さんって、よく私を見てるよね? どうして?」


 彼女の動揺が背中越しに伝わった。

 その証拠に、背中を押す力が弱まったからね(^^)


「そ、そんな事は無いです」


 おいおい、声まで震えていますよ、邑井さん(^^)


「下の名前はなんだっけ? まりこちゃんだっけ?」

「あ、はい」


 なんなんだろう、この違和感は?

 視線で感じる鋭さは全く無かった。


「どうして、この学校を選んだの?」

「部長が居たからです」


 ん? ちょっと待て(^^;)

 

「私? それは憧れって事?」

「いえ、そうではなく、ソフトボールとは違う個人的な理由でして・・・」


 あ、そうか(^^)

 私が声を掛けた時に、どこかで経験した光景と思った理由が分かった。


「あなたも神さまみたいな人なの?」


 返事が無い事が返事だった。


「本当に、神さまって、あちこちに居るのね。驚くよりも呆れてしまうわ」


 彼女が呟いた。


「部長こそ神さまの中の神さまです」


 あれ? 話しが変な方向に行きそうですけど(^^;)


「私? ははは。それは無いなぁ。だって、何の力も持っていないもの」


「佐藤先輩によると、私は山系の属性らしいです。そして、私から見た部長は、霊峰富士山並みの神さまとしか思えません」


 やはりね。さっきのデジャブは、初めて花子を昼飯に誘った時の反応と同じだったからだ(^^)  




第8章-第5話




「富士山? 私が? とんでもない過大評価ね(^^)」


 彼女の返事は、不必要なほどのプッシングだった(::)


「いや、ちょっと強過ぎ(^^;) もう少し弱くていいよ」


「本当に自覚が無いんですか? こうして直接身体に接触していると、自我が飛んでしまうほどの圧力なのに?」


 えーと・・・ 何を言っているの?


「山系の属性を持っている私の自我を飛ばすなんて、今までの経験では考えられないんです。

 佐藤先輩でさえも、最初の頃は一定の距離を保ったくらい強いんですよ、私の神気は」


 だ・か・ら、何を言っているの?


「正直、信じられません。こんなに凄まじい神気を放出していながら、人間の形を保てている部長そのものを」


 おいおい、待て待て(^^;) なんですか? 私の存在そのものが有り得ないの?

 私の人生で、おかしな事は起こって・・・・ いた?!(^^;)


「邑井、離れろ! それ以上は危険だ!」


 意外と近くで、花子の叱責が飛んだ。

 今の会話に没頭していた私が気付かない間に、花子がすぐ近くまで来ていた。


 私が見上げた先に在る、花子の顔は青ざめていた。




第8話-第6話



 花子の言葉に対する邑井さんの返事は無かった。

 彼女は、私に全体重を預けるように崩れ落ちた。


 それからは一騒動だった。

 意識を無くした彼女を保健室に運び、校医の先生の治療に立ち会った。

 結果的には貧血と診断されたが、それに納得したのは事情を知らない部員達だけだった。


「どういうこと? 私も『神さまみたいな人』って知っていたのでしょ? 何故、黙っていたの?」


 私は帰り道で、花子を問い詰めていた。

 いつも分かれる曲がり角で、久美がじっと花子を見詰めていた事に気付いていたが、頭に血が昇っていた私はろくに注意を払わなかった。


「万紀は特殊過ぎる。あなたみたいな同類を見た事が無いの。

 だから、説明しようが無かった。

 それに、まさか、あの子が無防備であなたと接触するなんて考えられない事だったし」

「全然、説明になっていない! あなたは最初から知っていたのね?

 私がそっち側の世界の住人だって事を?」


 答えは意外なところから帰って来た。


「そうよ。花子だけを責めないで。私も同類だから」


 久美だった。


『どうして、久美が?』


 私は事態の進展に付いていけなかった。


「初めて会った時から、あなたの正体についてずっと悩んできたわ。

 余りにも違いすぎるのよ、あなたは」


 久美の口調は、初めて聞くものだった。





第8章-第7話




「初めて会った時の事を覚えている?」


 久美と同じ姿、同じ声で訊いて来る少女は、それまでの私の知っている久美では無かった。


「私は絶句したわ」

 

 そう言えば、隣の小学校だった彼女と初めて対戦した時、彼女はぽかんとした表情をしていた。

 それからしばらくして、家族ごと私の小学校の学区に引っ越して来て同級生になったんだっけ。以来、ずっと田中家とは仲が良い。

 

「それまで信じていた事が間違っているのかもって、小学生時代に経験したのよ? 結構ショックだったよ(^^)」


 彼女は言葉を続けた。


「万紀、あなたが入院した時の事は謝るわ。本当なら、もっと一緒に居て上げたかった。

 でも、あなたが死に向かっている姿を見る事は、私には耐えられなかったの。

 だから、花子にお願いしたの。万紀の事を頼むって」


 ふと、ある考えが湧いた。


「もしかして、二人は昔からの知り合いなの?」

「ええ、そうよ。人系の神さま同士だもの。すぐに同類って分かったわ」


 ここで、花子が説明を引き継いだ。


「万紀、あなたは気付いていないみたいだけど、入院中から更に神気が増えている。今もどんどん増えているの。

 中学生だった頃の私や久美なら耐えられないほどの量に」


 でも、そんな事を言われても、本人には自覚が無いんだよね(^^;)

 



第8章-第8話



「あなたは何者なの? どの系統にも属さず、自我を失ってもおかしくない量の神気を放出し、死さえも乗り越えてしまったあなたは何者なの?」


 え? ちょっと、待った!? 

 『死さえも乗り越えた』?


「どういうこと? 私の病気は花子が治したんじゃないの?」


 二人の返事は同時に首を振ることだった。


「万紀は信じてくれなかったけど、私は何も出来なかった・・・

 あなたが勝手に生き返ったのよ」


 私は顔色を無くしていたと思う。

 何故ならば、自分が信じていた『私はただの人間だし(^^)』という立ち位置が、大きく崩れたからだ。


「そんな・・・ 本当に私は何もしていないよ。死ぬ覚悟もしていたし、実際、あの時は『ああ、これで死ぬんだな』って思ったくらいだし・・・ 心電モニターが停まったのは分かったけど、何も出来ずに意識を失くしたし」


「もう一度、訊くわ。あなたは何者なの?」


 私は答えられなかった。


 だが、私に代わって闖入者が答えた。


「三上部長は何も知りませんよ。それは確かです」


 真後ろから聞こえた声は、邑井さんのものだった。


「今日の接触で確信しました。三上部長は無垢そのものです。本人とは関係なく膨大な神気を溢れさせる存在なんですよ」


「もう、起きても大丈夫なの?」


 後ろを振り向きながら声を掛けたが、答えは抱締められることだった。


「ああ、本当に気持ちいい(^^)」


 あの、スミマセン、私には『その気』は無いんですけど(^^;)


「大丈夫ですよ、昼間の様な失態はしませんから」




第8章-第9話



『昼間の様な失態』はどうでもいいから、『今の痴態』を止めて欲しいんですけど、邑井さん(^^;)


「こんなに心が安らぐなんて、初めてなんです。三上部長が何系か? なんて関係ありません。今のままで十分です」


 きっと、世の男性ならば、この状態を素直に喜べるんだろう(^^;)

 だが、私は生まれた時から17年近くも女なんだ。

 どうしても、馴染めないし、あまり嬉しくなかった。


「邑井さん、離れて。ほら、女性同士でこんなにくっつくのはおかしくない?」

「分かりました。三上部長がそう言うなら」


 邑井さんは名残惜しそうに身体を離したが・・・


 なんで私の左手を抱えている(><;) 


「世の中全てを敵に回しても、私は部長の味方ですよ、人系の先輩がた」


 ああ、年下の後輩にここまで言われながらも、あまり嬉しくない(><)

 

「何を勝手に盛り上がっているの、邑井。だれが万紀の敵になるって言った? 私達はあなたよりも長く万紀のそばに居たのよ。

 敵に回る筈がないでしょ?」


 ス、スミマセン(^^;)

 敵やら味方やら、私はいつから争いに巻き込まれたんでしょう?

 ジュースをおごるから、誰か教えてくれる(^^;)?




第8章-第10話




「えーと、もしかして、神さま同士って仲が悪いの?」


 突拍子も無いことを想像しながら言った言葉に、自分で恥かしくなってきた(^^;)

 マンガなんかでは、秘密結社や派閥とかが有って、勢力同士で抗争でもしてたりするのだろうけど・・・・・ 現実は違うよね? ね?


「仲が悪いというよりも、不干渉なんです。例えば、私は町で同類を見掛けても話し掛けたりしませんし、友達になるなんて有り得ないんです」


 邑井さんが私の腕を抱える手に更に力を込めて言った。


「そう、お互いに干渉する事は滅多に無い。数年を掛けて観察してから、お互いに害が無さそうで、なおかつ興味を持ったなら、初めて接触するのが暗黙のルールよ」


 花子がじっと邑井さんが抱えている私の腕を見ながら言った。


 もしかして、妬いている?


「だから、お互いの存在に気付きながらも無視していたのに、あなたったら、急に花子を昼飯に誘うから、反応に困ったくらいなのよ。

 まあ、あの頃には、観察の結果、十二分に相互理解が進んで、悪い影響が出ないと分かり掛けていたけどね。

 だから、言葉を交わさなくても、私達はかなり相手の事を知っているとも言えるわけ」


 久美があの時の二人の反応を解説してくれた。


 なーるほど(^^) だから、二人とも不意打ちを喰らったような驚いた顔をしていたんだ。


 クスッ(^^) 

 笑っちゃダメだと分っているけど、どうしても笑いがこみ上げてきた。


「何が可笑しいの?」


 久美が視線を上げて、私の目を見詰めて訊いてきた。


「だって、二人とも視線がここばかりなんだよ?」


 

 私は空いている右手で、自分の左手を差した。


 ええ、そうですとも・・・ 邑井さんが抱締めている辺りを(^^)





第8章-第11話




「邑井、そろそろ離れろ。それ以上はまた意識を失うぞ」


 花子が昼間と同じような声で呼び掛けた。


「大丈夫ですよ。さっきも言ったと思いますが、昼間の様な失態はしません」


 ますます私の左手を掴んでいる邑井さんの両腕に力が入った。


「先輩方こそ、今まで独占してきた部長を盗られると警戒しているのでしょ。こんなに気持ちいいのを独占するなんて、ずるいですよ」


 さすがに鈍感な私でも、その声に多少の異変を感じた。

 今度は久美が声を掛けた。

 かなり心配そうな声だった。

 

「邑井さん、自分の状態が分らなくなっているの? あなた、自分で立てなくなっているのよ」


 ああ、力を入れていた理由が、私の腕にすがらないと立てなくなっているからなんだ・・・ って、やばくない? それって(><)


「へーきれすよ。らいびょうう、でふって」


 いや、完全に酔っ払ってますよ、邑井さん(^^;)


「わらしら、にろも、おなひ、ふっぱ、ふっぱいをふるわふぇ・・・なひれふも・・・ん」


 ええ、彼女は同じ失敗を繰り返しましたよ(^^;)


 昼間と同じく、真っ赤な顔をして、完全に酩酊状態になってしまいました(^^)


 当然ながら、崩れ落ちたましたとも・・・ 寝息を立てて(^^;)




貴重なお時間をこの様な粗作に割いて頂き、誠に有難う御座います m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ