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20160812公開


第4章-第1話



「いい? みんな、大人しくしてよ。こんな大人数に押しかけられる久美の家の人たちの事も考えてよ」


 我ながら陳腐な事を言っていると分っていながら、言わざるを得ない自分の立場がもどかしいぞ(;;)

 今日は高校進学後、初めての中間試験を控えて、ソフトボール部新入部員全員で『お勉強会』をする予定だった。


 最初は久美、花子、美紅、亜理子、私の5人でする予定が、気が付けば新入部員全員が参加する盛大なものになってしまった。

 久美も断ればいいのに、引き受けたものだから、総勢11人もの訪問者を田中家は迎えることになった。

 (いや、きっと、久美の家族の事だから、それさえも楽しむだろう。久美の家族はそういう人たちなんだもの^^;)


 みんなが、大きな門の前で息を飲むのが分かった。

 そりゃそうだ(^^)

 久美の家は、はっきりと言って豪邸だ。本来なら、私の様な庶民には縁の無い階層の住人なんだよね、久美は。

 でも、何故か友達と言うのが人生の面白いところだよね(^^;)


『あ、万紀? いらっしゃい(^^) 今、門を開けるね』


 インターホンから久美の声が聞こえると同時に、大きな門が開いていく。


『おお(>O<;)』

 

 あんたら、おのぼりさんか?


 まあ、私も初めての時は、思わず同じ状態だったから、他人の事を言えないけど(^^;) 




第4章-第2話




 開いた門から勝手に入っていく私の後をみんなが付いて来る。

 きっと、見る人が見たらお金が掛かっていると分かるであろうを庭園を左右に見ながら、真っ直ぐに玄関へ向かった。

 玄関も電動なんだよね(^^) 

 勝手に開くのを待ちながら、後ろを振り返ったら、みんなの視線が私に集中していた。


「念のために言っておくけど、この後にどんな光景が繰り広げられても、動揺しないでね。本当に頼むからね」


 みんなの目に疑問が浮かんだ。

 ま、そりゃそうだ。言葉で聞かされた事実は、自分の目で見た体験に比べて、実感が乏しい。


 玄関の扉が開くと共に、男の子が突進してきた。


「万紀姉ちゃん、待ってたよー(^O^)」


 久美の弟の久遠だった。私の胸に顔をうずめるようにしてギュウと抱締めてくる。


「あー、やっぱり万紀姉ちゃんは最高だ」


 だから、顔に縦線を入れるんじゃない、みんな(^^;)


「久遠、みんなが見ているから、この辺でね(^^;)」


 頭を撫でてあげながら、私は注意した。


「あ、そうだった(^^;) 皆様、ようこそ我が田中家に来て下さいましたm(_ _)m」

 

 礼儀正しく挨拶した後で、久遠が私の右手を抱えながら、玄関に引っ張っていった。


 だ・か・ら・・・

 言っておいたのに(^^;)

 眼前で繰り広げられた寸劇に呆然とした表情のみんなが続いた。




第4章-第3話




「先に断っておくけど、私なりに悩んだのよ(--;)

 でも、やっぱり訊かないと勉強どころじゃないから、訊くわよ。

 どういう関係?」


 はははは(^O^) やはり美紅が訊いてきた。

 そりゃそうだ。よく分からないけど、ショタコンという人種ならば、羨ましさのあまり発狂するような光景を目の前にして、冷静に試験勉強をするのは無理だよね(^^;)


「何の事かな?」


 あえて分らない振りをしたが、みんなの視線が痛い(^^;)


「いや、どうして、そんなに仲がいいのかなって、誰でも思うわよ?」


 あっはははは・・・(ToT)

 仕方ないじゃない、昔からこうなんだもの(^^;)

 話題の中心人物の久遠は私の背中にもたれかかって、昼寝の真っ最中だった。

 その顔は、天使の様な寝顔だった。


「まあ、久美の家族は何故か私がお気に入りなの。だから、昔からこんな感じだよ、ね、久美」


 答えは違うところから来た。

 今日はわざわざ時間を割いて私たちに勉強を教えてくれている久美の兄、久桜だった。

 大学生になって、ますます男前に拍車が掛かった彼は、昔は小さかった私の髪を「くしゃくしゃ」とするのがお気に入りだった。


「赤井さんだったよね? 万紀ちゃんの言うとおり、我が家の全員が彼女を特別なゲストと考えているよ。久遠は幼いから、より直接的なスキンシップを好むが、僕も立場さえなければ、真似をしたいくらいだ」


 な、何を言い出すんだ、久桜・・・・(><)


「だから、弟の無作法を許して欲しい」


 あ~あ、完全に誤解された(--;)

 あんたみたいな、完全無欠のイケメンにそんなセリフを言われたら、みんなが誤解するって(^^;)

  



第4章-第4話




 あああああああ、この空気をどうせいと言うんだ~(><;)


 か・ん・ぺ・きに、そう、完璧に誤解された空気を・・・・


「いや、久桜は、その、冗談が好きなんだ(^^;)

 だって、私みたいなのに、その、、、、魅力を感じるなんて、おかしいだろ?」


 あああああああ、自分で言って、悲しくなってしまったじゃないか? 久桜(T T)


「万紀ちゃんはまだ子供だから、自分の魅力に気付いていないだけさ(^^) そうは思わないかい、佐藤さん?」


 笑顔な癖に、目が笑っていないぞ、久桜(--;)


「そうですね、子供だから、仕方ないと思いますよ、久美のお兄さん」


 ああああああああああ、花子まで私を子供扱いかい(T T)


 益々、みんなの視線が痛い(;;)


「うーん、よく寝た(^^) どうしたの、みんな?」


 久遠が目をこすりながら、お昼寝から目を覚ました。

 なんとか、この状況を打開しようと、私が口を開く前に、久遠がとどめの一発を言った。


「万紀姉ちゃんが早く大人にならないかな(^^) 

 だって、今よりも、もっと凄いんでしょ?」


 何が凄いんじゃー(><;)





第5章-第1話




 事件は中間試験が終わってしばらく経ってから起こった。

 朝から様子が変だった久美が、封筒を私に手渡しながら言ったセリフが発端だった。


「どうしよう? こんなの貰ったけど、やっぱり中の手紙を読んだほうがいいのかな?」


 怒るよ、久美(--;)

 ラブレターを貰った相談を私にするか、普通(^^;)

 私にとって、空想上の出来事をどう判断しろと(--)


「えーと、こういう場合は一応、中身を吟味するのがいいんじゃない?」


 ああ、私の馬鹿(--;)

 『吟味』って、どこのおじさんだ?

 

「万紀がそう言うなら、一応読むことにするね」


 いや、私の責任なのか、ラブレターを読むのが?


 あっさりと読み終えた久美が、何を思ったのか、私にラブレターを渡した。

 え? あれ? 私にどうしろと?


「どうするかは万紀に任せるから(^^)」


 だから、天使の笑顔で私に押し付けないで下さい、お代官様(--)





第5章-第2話





『ラブレターなのか、これは?』


 中に入っていたA4サイズの紙には、久美のイラストが沢山書かれていた。

 イラストには日付も入っていたので、どの大会で描かれたのが分るようになっていた。


 即戦力級の新入生が一気に10人も入った我が母校はここまで破竹の連勝街道を進んでいた。

 入部してすぐに始まった大阪高校ソフトボール春季大会を皮切りに、全国高等学校総合体育大会大阪府予選会と負け知らずでここまで来ていた。


 よほど脅威に思われたのか、練習試合の申込が殺到していて、顧問の岡田先生が嬉しい悲鳴を上げていた。

 いや、比喩ではなく、職員室の電話が鳴るたびに、本当に悲鳴を上げていたらしい(^^)

 理由は勝ち過ぎだった(^^;)


 想像して欲しい。大会に出れば負ける弱小クラブだった女子ソフトボール部が短期間で一気に全国に名前を覚えられる事が、どれ程のプレッシャーになるのかを(--;)

 取材も色んなところから来ていたし・・・


 まあ、中学時代にある程度の洗礼を受けていた新入部員の私達はそれほどとは思わなかったけどね(^^)


 あ、久美のラブレターの件だけどが、結局のところ、笑い話になってしまったよ(^^)

 だって、差出人は一つ上の美術部の女子だったんだもの(^^)


 交際を断りに、差出人のクラスに行った私達(何故か付き添いで一緒に行った私や花子は無意味だったね)を見たその先輩は、あっさりと引き下がったんだけど、今も描いたイラストを贈ってくれる仲だよ。


 それよりも、この騒動の直後に発覚した『やはり久美はもてまくり騒動』の方が、私達(久美と花子を除く新入部員だよ)にはショックだったけど、それは次回のお楽しみって事で(^^)





第5章-第3話




「ねえ、花子・・・ 久美ってどれだけもててるの?」


 私とした事が、うっかりとみんなの前で口を滑らした(><)

 花子の『力』の事は二人だけの秘密だったが、こんな直球な質問をすれば、この子は直球な答を返してくる。

 慌てて花子の答を止めようとしたが、遅かった。


「あ、私も知りたい」

「私も、私も(^^)」


 やはり遅かった。


「私が気付いているだけで、両手の指では足りないけど?」


 何ですと(><;)

 両手で足りないって事は・・・ ショックの余り、私は自分の指を折って数えていた(^^;)


「なに、それ・・・」


 あー、美紅が喰いついてきた。


「まあ、これほどもてる女の子も初めてだけど」

「いや、どうしてあなたが知っているの?って方を知りたい。 こう言っちゃ悪いけど、あなたって、そんな話をするタイプじゃないでしょ?」


「だって、私は『縁結びの神』だもの」


 花子、あんたって子は(^^;)

 直球過ぎるぞ・・・


「もしかして、あんたって危ない奴?」


 おいおい、美紅も直球だ(><)

 花子がこっちを見た。

 ああ、目で『言っていい?』って訊いているのが分るのが悲しいぞ(T T)


「ほら、たまに居るでしょ、他人の恋愛に敏感な人って(^^;)

 花子もそうなの」


 苦し紛れに私が言い訳する。


「そう・・・ 同じ中学出身の万紀がそう言うなら、そうなのか・・・

 で、他にもてているのは誰?」


 心底不思議そうな表情をした後で、花子は衝撃的なセリフを言った。


「え? 万紀だけど?」


 なんですとーーーー(><)




第5章-第4話




 花子の意外な言葉に私は思わず噴き出した(^^)


「ほ、本当? あ、いや、あんたが私に嘘を付かない事は分かっているけど、ちょっと意外な結果に、混乱していて・・・」


 何で不思議そうな目で私を見るの、花子?


「あなたって、本当に無自覚なのね。ここに居る全員があなたを大好きだし、男子野球部の部員の中にだって、結構ファンが居るのよ」


 ほとんど身内じゃんーーーーー(><)

 しかも半分以上は女の子じゃん(--;)

 なんか一瞬でも喜んだ私が虚しい(T T)


「わ、私は、別に万紀の事が好きでも何でも無いんだから」


 おーい、美樹・・・ あんたはツンデレキャラだったのか(><)


「えー、私は万紀の事、大好きよ」


 あー、亜理子・・・ やっぱり、あんたは思ったとおりにいい子だ(^^)

 私の近くに居たいからと、あえてマネージャー志望でソフトボール部に入部してくれただけあるぞ(^^)


 部室のドアが開く音がした。

 みんなが振り向いた先に久美が居た。

 久美が空気を読まずに質問をした。

 ちょっと首を傾ける仕種が可愛いぞ、このやろ(^^;)


「どうしたの、みんな? 変な物を見たような顔をして」

「いや、久美がもてるって事を再確認させられただけだよ」


 美紅がぼそりと言った。

 久美はすぐに騒動の犯人を特定したようだ。


「はーなーこー、あんたね? 本当に、困った子」


 怒った顔も可愛いのは不公平です、神様(^^;)

 もちろん、この場合の神様とは花子ではないですよ(^^;)


 花子は何故叱られているのかが分らない顔だった。

 



第5章-第5話




「何が悪いの? 少なくとも、あなたを悪く言っていないのに?」

「いーい? 私は男子にもてても嬉しくないの。

 だって、万紀以上の漢なんて居ないから」


 おい(><) そこ! 私は女だぞー(--;)


「そりゃ、そうだけど、雌である以上、雄にもてた方がいいでしょ?」


 だ・か・ら・・・ 何をあからさまな事を言っているんですか(^^;)


「やっぱり、花子は分かっていない。

 中身の問題なの! 万紀ほど、他人を思い遣りながら、自分の信念を貫ける男子が居ると思う? 私にはそんな男子が居るとは思えない」

「そこは同意するわ。でも、私にとっては、男女の縁の方が自然なの。何かおかしい事を言っている?」

「あのー・・・ 二人の会話がきわど過ぎて、私達は付いて行けないんですけど・・・」


 おお、でかしたぞ、空良(^^)

 目立たない性格の割には、何故かピッチャーをしている天然少女故に許される介入だぞ(^^)


「どっちにしろ、久美がもてるのは中学の時から知っているし、万紀の為に、この高校に来たいと思った私にとって、二人がもてるのは自然だと思うの。そんな当たり前の事で、何故、あなたたちが言い合いをしているのかが分らない」


 空良、あんたは長いセリフを噛まずに言えたんだ(><)

 しかも、二人の気勢を削いだのは確実だぞー(^^;)


「まあ、確かに無意味なのかも。だって、万紀の意見を聞いていないんだから」


 え(0_0;) 私?


「えーと、私以上の男の子って、いっぱい居るんじゃないかな?」 


 何故、落ち込む、私(^^;)


「それに、私以上の女の子も沢山居るし」


 人間、言った後で虚しくなる時って有りますよね?

 今の私がそうだった(T T) 





第5章-第6話




「なに言ってるの、万紀? あなたほど他人を虜にする人間が、そうそう居ると思う? ほら、ぐるりと見渡してご覧」


 ええ、おバカな私は久美に言われるとおり、その場でくるりと回りましたとも(^^;)


「何が見えた?」

「えーと、チームメイト?」

「そうよ、あなたに付いて行く為だけに、この高校に来たみんなだよね。

 中には、強引に親戚の家に押し掛けた者も居る。協同でアパートの一室を借りた者も居る。

 どうして、そこまでして、あなたと同じ高校を選んだのかしら?」


 久美の言葉に感情を動かされないとすれば、きっと私と云う人間は『人として失格』だったのだろう。

 だが、私の心は確実に動いた。


「あなたにとんでもない魅力があるからよ。

 だから、もう二度と、自分を蔑まないで」


「うん、分かった」

「分れば、よろしい(^o^)」


 久美は惚れ惚れする様な笑顔を見せた後で、花子に訊いた。


「それで、花子、万紀に興味と好意を同時に持っている男子の総数は?」

「118名」

「女子の総数は?」

「ここに居る部員を入れて、235名」

「在校生の数は?」

「987名」


 久美が軽く頷いた後でこっちを見た。


「いい? 在校生の3分の1に興味と好意を同時に持たれている人物が日本の高校にどれほど居るか想像できる?

 あなたは、そういう存在なの」


 この時の気持ちはなかなか言葉に出来ない。


 久美の本音に初めて触れたのかもしれなかった。


「ありがとう、久美。前向きに生きて行くわ」

「分ってくれてうれしいわ」


 またもや惚れ惚れする様な笑顔を見せる久美に笑顔を返した(^o^)


「ちなみに、万紀にラブレターや告白をする男の子は居ないわ。

 恐れ多くて、そんな対象じゃないみたい」


 おい、花子(><)

 最後に落としてどうするの(T_T)

 






貴重なお時間をこの様な粗作に割いて頂き、誠に有難う御座います m(_ _)m


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