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20160810公開
『神さまは結構居たりする』 登場人物紹介
M中学出身新入生
三上万紀:主人公・『私』・右投げ・右打ち・センター・169cm
化物と形容しても良いくらいのスラッガー
田中久美:友人、チームメート・右投げ・スイッチヒッター・ショート・159cm
万紀の影に隠れているが、こちらも超中学生級の好打者
佐藤花子:『神』・右投げ・右打ち・セカンド・157cm
たった1年間でレギュラーを射止めたほどのセンスを持つ
橋本 環:チームメイト・左投げ・左打ち・ファースト・160cm
熊谷深幸:チームメイト・右投げ・右打ち・レフト・155cm
山中空良:チームメイト・左投げ・左打ち・投手・158cm
田辺亜理子:マネージャー・151cm
他中学出身新入生
赤井美紅:右投げ・右打ち・ライト・163cm
白石美布:左投げ・左打ち・ファースト・159cm
青田美空:右投げ・右打ち・サード・157cm
緑川美樹:右投げ・右打ち・ピッチャー・162cm
水元透子:右投げ・左打ち・キャッチャー・157cm
先輩部員
砂川美鈴:3年生・キャプテン・右投げ・右打ち・キャッチャー・145m
信太衛子:3年生・副キャプテン・左投げ・左打ち・センター・156cm
北野勇子:3年生・右投げ・右打ち・ピッチャー・162cm
沢田千早:2年生・右投げ・右打ち・セカンド・159cm
境 香織:2年生・右投げ・右打ち・ファースト・152cm
第2章-第1話
退院後の私はすぐにソフトボール漬けに戻った。
以前と違うのは、花子が入部した事だった。
意外な事に彼女は抜群に運動神経が良かった。
全くの初心者だったのに、1週間もすれば基本的な身体の使い方をマスターしていた。
「ねえ、花子。思ったよりも上手くなるのが早いけど、それもあなたの力?」
帰り道の途中で久美と別れて、しばらくして訊ねた。
「まさか。そんな力は無いわよ。私の身体はオリジナルのまま。それより、万紀の方こそおかしい」
「へ、私? どこが?」
「どうしたら、あれだけ打球を飛ばせるの? いくら真似をしても、あんなに飛ばない・・・ っていうか、あなたの打ち方自体真似できないし」
「野球のイチロー選手を知ってる?」
「名前だけなら」
「凄いのよ(^^) 体格的に負けているのに、その気になれば外国人並みのホームランを打てるの。私のはその真似」
「ふーん、一度見てみるわ」
その後で、花子は色々調べたようだった。
だって、イチローマニアと言っていい私の知らない事までも、数日後には知っていたんだから(^^;)
もっとも、残念ながらコツまでは分らなかったようだけど(^^)
あ、それと、私自身が知らなかった、私の打法を表現する言葉を、どこで知ったのだろう?
『鞭の様な打法』って言われているのは知っていたけど、『スパイラルスイング』って何?
第2章-第2話
最上級生になった私は、キャプテンになったせいもあり、中学校最後の1年間は、本当にソフトボールに明け暮れていた。
我が中学校で歴代最高の成績も残せたし、それなりに自慢が出来る時代を築いたと思う・・・
ふー・・・、自分の心を偽るのは止めよう(^^;)
本当を言えば、もう1つ上の頂点まで行けた可能性が高かったのも事実だ。
花子を加えた我がソフトボール部は明らかに全国制覇を狙える実力を備えていた。
走攻守の全てで中学生離れしていた私(結構、全国の高校から誘いが有ったけど、結局は自宅から通える今の高校に進学した)と、鉄壁の守備で『M中学の絶対防衛線』と言われた花子・久美のコンビが守る二遊間は、確実に中学生レベルを超越していた。
でも、ソフトボールは3人だけの競技ではないのも事実だ(^^;)
どれほど、個人の実力が抜き出ていても、穴は存在するし、えてしてそんな穴ほど、深かったりする。
結局は小さなエラーから我が中学は決勝戦で負けたってわけなんだけど、エラーをした後輩を誰が責められる?
惜しまれながら退部した後に、自分の事ながら褒めて上げたいくらいに猛勉強をして、ちゃんと試験に合格した私と同じ高校に、同学年の部員全員がついて来た事こそ、自慢すべきなのかも(^^)
彼女らの合言葉は『今度こそ全国制覇』だった。
ま、その言葉の前が、『万紀の為に』だったのが微妙なんだけどね(^^;)
第2章-第3話
入部届けと見学をする為に、これからこの高校のソフトボール部に行こうとみんなと待ち合わせしている時に、急に去年の中学生女子大会の準決勝の時の記憶がよみがえった。
何故だろう?
『ダン!ダダダダンダン! ダン!ダダダダンダン! ダン!ダダダダンダン!』
知らないうちに鼻歌が大きくなっていたようだった(^^;)
相手チームのキャッチャーが慌ててタイムを掛けた。
マウンドに向かう間に、二回もこっちを振り返った。
その顔面には、『こんな場面で鼻歌を歌って、バッターボックスに入れる神経が分らない』と書いていた。
勿論書体は『極太ゴシック体』だ。
だって、仕方ないじゃない(^^)
最終回裏の攻撃、同点、一死満塁、打席には本日5敬遠の私(^^)/
これで、『嬉しがるな』と言う方が酷だ(^^)
真夏の8月に開催される中学生女子大会は準決勝戦を迎えていた。
ここまでの私の成績は39打席で敬遠が24、15打数で12安打6ホーマーと、この大会前に出ていた下馬評を上回る成績を残していた。
ホームラン率4割の打率8割のバッターを、こんな最悪の場面で迎えた相手ピッチャーには可哀想だが、鼻歌が出るのを止められるわけが無かった。
しかも、私の後ろには、私ほどの派手さは無いが、久美が控えている。
どっちにしろ、化物二人を抑えなければ、相手チームに勝ちは無い。
ピッチャーの顔面は蒼白だった。
そら、前の試合で私が飛ばしたホームランの飛距離を思い出せば、嫌な想像しか出来ないだろう。
ましてや、嬉しくてにやけている強打者に対する経験など無いだろう。
サインが決まるまでに7回も首を振った。
ピッチャーがリリースした瞬間に、私は勝利を確信した。
私の打球は、この球場本来のフェンスを越えた。
女子中学生の打球ではなかった。
ダイヤモンドを回りながら、私は相変わらず、『ボレロ』を口ずさんでいた。
可哀想なピッチャーは、打球が飛び込んだレフトスタンドを呆然と見ていた。
「万紀の辞書には『容赦』って言葉は載っていないようね」
はいはい、きついセリフの久美の祝福も心地いい(^^)
「女の子として、今の打球はどうかと思うよ」
花子のセリフも冷静に聞けば、結構きついぞ(^^;)
でも、今日は浮かれる私を勘弁して欲しい。
この気持ちを音で表したら、きっとこうなるだろう(^^)
『ダン! ダカダ!ダンダン! ダン! ダカダ!ダンダン! ダーン! ダカダダンダン!』
あ、久美と花子が待ち合わせ場所にやって来た。
最初の頃が信じられない程に2人は仲が良い。
なんだろう、連帯感? みたいなものが2人には有る様だ。
さあて、先輩たちは優しいだろうか? 優しかったら嬉しいな・・・
第3章-第1話
「失礼します。見学したいんですけど、構いませんか?」
私を筆頭に同じ中学出身の同級生7人が部室を訪れた時の反応は異様だった。
なんというか、『ザワザワ』というか、『ついに来たか^^;』というか、『予期していたけど、本当に入部してくれるのか?』という期待と不安が入り混じった反応だった。
真っ先に反応したのは背の低い先輩だった。周囲の部員を見回しながら、大きな声を上げた。
「来たー><! 本当に来たー!」
それからは大変だった。
ソフトボール部挙げての歓迎ムードだった。
そして、私を中心にして口々に質問攻めをして来た。
「ねえ、なんでうちに来たの? あなたならもっと強いところに行けたでしょうに?」
「本当に入ってくれるの? 嘘じゃないよね?」
「本当に信じられない。私達も見ていたのよ、あのホームラン。どうやったらあんなに飛ばせるの?」
「それで、みんな、入部希望でいいのよね? あ、ジュース飲む?」
「田中さんまで来てくれるなんて、一気にうちの高校は地区予選の本命になっちゃう^^) 廃部一歩手前だったのに;;」
そう言えば、先輩の数が少ない事に気付いた。
「もしかして、ここに居るだけですか、ソフトボール部って?」
私が発した、この質問はその場の空気を凍らせた。
「万紀、本気で言ってるの?」
久美が見てはいけない物を見た様な表情で、質問してきた。
「うん」
オイオイ、みんな一斉に頭に手を添えて、首を振らないで(^^;)
「万紀、あなたって本当に信じられない」
花子が大きな溜息をついた後で、少し大きな声で言った。
「まあ、万紀らしいと言えば、らしいけど」
「いや、近くて、そこそこ勉強すれば入れて、ソフトボールさえ出来れば何処でも良かったの・・・ もしかして、どっか間違えてる?」
「間違えてないけど、どっかズレてる」
そう? そうなのかな?
第3章-第2話
「えー、それでは、私から自己紹介するね。キャプテンの砂川美鈴よ。よろしくね(^^) ポジションはキャッチャー。好きな言葉は『努力は才能を凌駕する』よ。何か質問は有る?」
私達が見学を申し込んだ時に、真っ先に声を上げた先輩がキャプテンだった。
小さいけど、元気いっぱいな人だ(^^)。
先輩達5人の自己紹介が終わった後で、私達の自己紹介が始まった。
この並びなら、私は最後だ。
亜理子、空良、深幸、環の自己紹介が終わった。
うん、みんな無難な自己紹介だったよ。
もっとも、全員が最後に『万紀の為に今度こそ全国制覇』というスローガンを言うのは止めて欲しい。
なんか、私が普通の中学生じゃなかったみたいに見られちゃうじゃないか?
先輩たちも引いているぞ(-_-)
「田中久美です。M中出身でポジションはショートです。好きな言葉は『袖すり合うも他生の縁』です。もちろん『万紀の為に今度こそ全国制覇』」
もしかしていじめ? いじめなの?
それにしても、久美、棒読みで言うのは止めて欲しい・・・
意外とダメージが来たよ。
「佐藤花子です。M中出身。ポジションはセカンド。好きな言葉は『神のみぞ知る』です」
おーい、花子(^^;) 洒落になってないよ(^^)
「当然ですが『万紀の為に今度こそ全国制覇』です」
花子は久美と違って、やたらと力を込めていた。
よく分からん。
おっと、私の番だった(^^;)
あー、みんなの視線が痛い(^^;)
「えー、三上万紀、M中出身で、ポジションは今のところ、センターですが、どこでも守れます。好きな言葉は『好きこそ物の上手なれ』です」
みんなが『おー』って感じで、息を吐いた。
いや、皆さん・・・ 何も特別な事を言ってないから、私(^^;)
そんなこんだで、私達は入部した。
そして、先輩達の驚きは続いた。
私がこの高校を受験するとどこで知ったのか、去年の全国女子中学大会で戦った5人の選手が、私と一緒にソフトボールをしたいと、受験していた事が判明したのだ。
こうして、廃部寸前から一気に有力高になった我が母校は、怒涛の快進撃を開始する事になる。
第3章-第3話
「万紀、部活に行くよ」
久美が私を迎えに来た。花子も一緒だ。
クラスが一緒の二人は、いつも授業が終わると私を迎えに来る。
たいがいの場合、二人が迎えに来る時、私はクラスが一緒になった亜理子と美紅と一緒にだべっている。
「おっと、そんな時間? さて、行こうか?」
その日、部室に着いた私を迎えたのは、砂川先輩のお願いだった。
「三上さん、申し訳ないけど、男子野球部と勝負して欲しいの(><)。勝った方がグランドの優先権を貰う事になったんだけど、男子に勝てそうなのは三上さんしか居ないの・・・ 。ダメかな?」
そうですね、男子並みの身長は私しか居ないですもんね(;;)
「いいですよ。それでルールは決まっているんですか?」
「お互いに守備についた状況で、代表のバッターが打った打球が相手よりも上回ったかどうかで決まるの」
「了解です。ホームランを打てば良いんですね?」
ピッチャー志望の美樹がぼそりと言った。
「こっちは誰が投げるんですか?」
「勇子よ」
まあ、エースが投げる方が無難かな(^^)
美樹が私の肩を叩きながら言った。
「三上さん、分っていると思うけど、私の球速は100km/hは出てるわ。バッテリー間を考えると、並みの高校野球のピッチャーよりも速い筈。打てるわよね?」
「ま、期待に副えるように頑張るわ(^^)」
ごめんなさいm(_ _)m
結果は冷酷だった。
男子野球部のピッチャーが私に投げる前から、勝負は決まっていた。
彼の投球練習を見ながら、『来ない』球にタイミングを完璧に修正した私の打球は、軽く場外に飛んでいった。
女子、しかも新入生の私に完璧に打たれた男子野球部のピッチャーは再起不能のダメージを受けてしまった。
だって、仕方ないじゃない? 余りにも『打って下さい』って球速なんだもの(^^)
第3章-第4話
え、私に打たれたピッチャーが、その後どうなったかですって?
言い難いけど、彼は現在、我が女子ソフトボール部所属です(^^;)
よほどショックだったのか、数日間落ち込んだ後で、いきなり入部したいとキャプテンの砂川先輩に直訴したらしい。
最初はキャプテンも断ったそうだけど、結局マネージャーとして入部しちゃった。
今はアンダースローの練習に余念がないんだよね。どうやらバッティングピッチャーを目指しているみたい(^^;)
あ、そうそう。
男子野球部はリベンジを果たそうとしたけど、ことごとく返り討ちにしましたよ、私は(^^)
だって、私からすれば、男子がしている硬式野球はマウンド間が遠過ぎて、ホームに届く頃には完璧な迎撃が出来るんだから、打てて当たり前なんだよね。
花子が簡単に説明してくれた内容では、美樹が投げる球速が150キロ相当らしい。
それよりも遅い球を仕留めそこなうのは美樹にも悪いしね(^^)
まあ、おかげで、何故か当ソフトボール部と男子野球部の仲が滅茶苦茶良くなって、カップルが何組か誕生したのは、良かったのかも(^^)
閑話休題
「あれ、私の傘が無い(><)」
久美がぽつりと呟いた。
えーと、私の傘は・・・ 有った(^^)
帰宅中のコンビニ店内の飲食コーナーで時間を潰した後の事だった。
20分もだべった後で、『さあ、帰ろうか』と出口の傘立てを確認した久美の横顔は、悲しそうだった。
間違って持って行ったとは思えなかった。
久美の傘は持ち手が凝っていて、見間違えようが無かったからだ。
「どうしよう、お父さんからのプレゼントだったのに・・・」
ああ、久美の可愛い顔立ちが悲しそうな顔をしている。
きっと、私が同じ様な表情を浮かべても、これほどには似合わないんだろうなぁ(^^;)
花子が何故か、じっと私を見ていた。
『ええ、ええ、分かりましたとも。好きなようにしなさい』
そういった意味を含めて、私がうなずいた直後だった。
花子が『唱え』始めた。
彼女がその気になったら、わざとしろ、間違えたにしろ、久美の傘を持って行った人物は、返しに来るだろう。
結果は5分も掛からずに出た。
酔っ払ったおじさんが、何故か辺りを気にしながら、私達の目の前で傘立てに、明らかに女物の傘を返しに来たからだ。
脂汗をかきながら、傘立てに傘を返したおじさんは、明らかにホッとしていた。
たまには花子も役に立つんだな(^^;)
その夜、そのコンビニの傘立てに、数十本の傘が突き刺さった事は、後日知った。
その話を聞いた時は、3人とも涙を流して笑った事は内緒だ(^^)
貴重なお時間をこの様な粗作に割いて頂き、誠に有難う御座います m(_ _)m
ブログ掲載時は構成など考えずに思い付きで書いたので、かなり読み難い作品でした。
今回は多少はマシになる様に加筆と構成の再編をしています。
それでも読み難いんですが・・・・・ ort