スクウェア
中学3年生の夏、俺たちはまだ高校も決まらないままダラダラとした日々を過ごしていた。
雪「ねぇ、高校どこにする?」
この子は朝田雪、俺と同じクラスの女子。黒くて長い髪に整った美しい顔、そしてモデルのような体つきというフルコンボに、クラスの男子の中で一番人気がある。
絵実「無理〜考えたくな〜い」
この子は谷口絵実、とにかく明るく、可愛らしい顔にふわふわな髪の毛。スタイルは悪くはないが、身長が少し足りない、チワワのような女の子。
白「まだ早くないか?」
こいつは天条白、クール系の男子で俺の友達。顔はイケメンなのだが、寄り付きにくいその性格でクラスの女子は身を引いている。絵実が好きならしい。
空「いや、早くはないだろ!」
そして俺、鈍谷空、今回の主人公。性別男。
この4人が中1からのいつものメンバー。今日は夏休み最終日ということもあって、こうしてみんなで俺の家に集まってダラダラしている。
絵実「そういえば、今日は一日中親いないんだよね?」
空「あぁ、そうだな」
今日は両親ともに出張中のため、家には誰もいない。そのため、今日はこうして4人が集まっているという訳だ。ちなみに俺の家は広めの一軒家。
絵実「じゃあ今日も夜ご飯作って行こっかな〜」
空「あぁ、お願いするよ」
絵実「うん!」
絵実は料理が上手なので、よく親が家にいない時はこうしてご飯を作ってもらっている。
雪「今日は私も手伝ってから帰ろうかしら。」
絵実「いいねぇ!どっちが美味しいもの作れるか勝負しようよ!」
雪「望むところよ」
そう言って2人ともこの部屋を出てキッチンの方へ歩いて行く。まだ6時前なのに、やけに2人ともやる気だった。
白「なぁ、本当に高校どうするつもりなんだ?」
空「そうだなぁ、俺はこの4人で行きたいかな」
白「そうか、まぁ俺達3人は賢いとこ行くから、お前も頑張って勉強しろよ。」
空「頑張ります…」
相変わらず白は厳しいこと言うなぁ…
白「それよりさぁ、」
空「なんだ?」
白が急に真剣な眼差しをするので、俺も少し身構えた。
白「俺って絵実のことが好きだろ?」
空「あぁ、なんだよいきなり…」
白「お前はどうなんだよ。雪と絵実、どっちが好きなんだ?」
空「いや、別に俺は雪と絵実をそんな風に見てねぇよ。ただの友達だろ?」
白「今はそうだけど…高校、バラバラになったらどうするんだ?言っておくが、雪はお前のこと好きだと思うぞ」
空「それはないよ、あんな完璧な女の子が俺を好きになる訳ないし…」
白「どうかな、まぁそろそろ考えておけよ。高校、別になってからじゃ遅いからな。」
空「そっか…」
出来れば俺は4人で一緒の高校に行きたい。でもそれは難しいことだ。俺も分かってる。
でも…
絵実「おーい!ご飯できたよ〜」
空「分かった〜今行く〜!」
そう言って部屋を出る直前、
白「まぁ、ちゃんと考えろよ」
空「うん…」
という言葉を交わした後、俺たちは2人の元へ向かった。
そしてこの後、なぜか4人で夜ご飯を食べることになった。
ご飯を食べ終わり、みんなが帰った後、風呂に入りながら考える。
確かに白の言う通りだ。いつまでも4人で居たいなんて俺のわがままで、高校がバラバラになるかもしれない。でも俺は…
絵実が好きなんだ。
高校に行くまでにこの思い、届けないといけない気がする。多分白は俺と雪がくっつけば良いと思ってるに決まってる。だからあんな嘘つくんだ。
と思っていた…
次の日
始業式が始まる。
体育館で先生の話をたくさん聞いた後、教室に戻って今日はさよならとなった。教室からでてすぐ左、絵実の姿があった。
空「絵実、どうしたんだ?」
絵実「ちょっと付いてきてくれないかな…?」
空「うん、良いけど…」
よく分からなかった。今日は4人で遊ぶ約束もしてないし、家に親がいるので夜ご飯も作らなくて良い。絵実と2人でどこか行くなんてあまりない展開なので、嬉しさよりも不思議さの方が俺の頭を上回っていた。
連れて行かれたのは校舎裏、ここは人目に付きにくく、先生に行ってはいけないと言われているので、誰もこない。普段は真面目な絵実がどうしてこんなところに?と、さらに疑問が浮かぶ。
絵実「あの…さぁ、もうちょっとで私達も高校生だし、同じ高校いけるかも分からないじゃん?」
いつもは元気いっぱいの絵実が今はなんだか大人に見える。
絵実「だから私は覚悟を決めるよ。私…空が好きだよ」
空「えっ」
とても体が熱い。心臓がドキドキ言ってる。こういう時、俺はどうすれば良いんだ?どうすればベストなんだ…
空「えっと…」
絵実「まって、まだ返事は良いの。そういう約束だから…」
空「約束?」
絵実「いや、気にしないで。それより…」
絵実が後ろを向く。
絵実「じゃあね!」
そう言って、絵実は走って行った。
すると、奥から今度は雪が現れる。これで俺はさっきの絵実が言った意味を全てを悟った。
雪が近づいて来る。
雪「ねぇ」
どんどん近づいてきて、俺の目の前約1Mで立ち止まる。
雪「私と絵実どっちが好きなの?」
空「俺は…」
もちろん絵実だ、だけど白のことを思うとなぜかそれが言えない。
雪「私は空が好きよ。空の好きな人、聞かせてよ」
もう言うしかない。俺も男だ、こういう事はきちんと言うべきだ。
空「俺は絵実が好きだよ」
雪「そう、」
少し沈黙が流れる。そして、
雪「そっか〜振られちゃったか〜本当は聞いちゃダメって言われてたんだけどなぁ、」
空「ごめん…」
雪「謝らないで、惨めなだけよ」
空「それでもっ…俺は雪と友達でいたいって思ってる!これからも友達でいてくれるか?」
雪「ええ、そうね…じゃあ、またね。」
空「あぁ、」
そう言って雪がゆっくりと歩いて行く。
俺ももうすぐ出ないと…先生に怒られる。
そう思って表に出てみると…
空「白…!」
そこには白の姿があった。
白「隠れて聞いてたよ。ごめんな。」
空「ぜ、全部か?」
白「あぁ、全部だ。」
あぁ、そっか、
空「ごめん…今まで隠してて…」
白「良いよ、俺も薄々そうじゃないかなぁって思ってたし」
空「そっか」
白「行ってやれよ」
空「どこに…?」
白「分かってるだろ?俺は雪を見守っておくからさ」
空「分かった。助かる」
白「あぁ、」
そう言って俺は絵実の元へ走り出した。
白「全く…俺にも泣く時間ぐらいよこせっつの」
空が見えなくなった。安心したのか、白の目から涙が溢れた。
白「ははっ、なんだこれ…」
あぁ、ちゃんと俺、絵実のことが好きだったんだな…
俺は涙を拭き取り、前を向いた。
白「さて、雪を慰めてやるか。」
俺は今、どこに走っているのだろう。
気づけば俺の家の近所の公園にいた。
全く人気のない公園。でもここは俺と絵実の初めて会った場所。大切な、思い出の場所。
そこには、ベンチで座る絵実の姿があった。
俺は急いで絵実の元へ走って行った。
空「絵実!」
絵実「空!どうして…」
今までずっと走っていたため、肩で息をしていた。だが、言葉は簡単に出てきた。
空「俺は絵実が好きだ!」
絵実「えっ…」
絵実の顔が一瞬赤くなる。そして…
絵実「嬉しい…ありがとう…」
涙を流しながら絵実は俺の元に飛びついてくる。
俺は絵実の体を優しく包み込みながら言った。
空「俺の彼女になってください」
絵実「はい。よろしくお願いします…」
それから少しの間抱き合っていた。そのままの体制で絵実から思いもよらぬ言葉が出た。
絵実「キス…しても良いかな?」
空「えっ!それは早いんじゃ…」
絵実「えへへっ、そうだよね。ちょっと嬉しすぎて…」
空「やっぱりさっきの無し!しようよ、キス」
俺は腹をくくった。てか、絵実が可愛すぎて断れなかった。
絵実「うんっ!ありがとう、」
空「じゃあ…」
絵実と離れて顔を見た。少し火照った顔。きっと俺より緊張しているはずだ。
絵実が目をつむる。落ち着け俺!いけっ!
絵実「んっ…」
俺と絵実の初めてのキスだった。
それから半年が過ぎた。
俺たち4人はめでたく同じ高校に行った。
あの後白と雪は付き合うことになったようだ。
でも浮かれてはいられないので、それから4人で猛勉強。そしてやっと4人で勝利を勝ち取ったのである。
絵実「空!ほら来て!」
空「おう、」
白「行くぞ〜」
雪「白は私の右に来てね」
白「分かった」
絵実「ラブラブ〜」
白「うっせぇ!お前らも人の事言えねぇだ
ろ!」
絵実「えへへ〜」
白「撮るぞ〜」
ピッ
カメラの音がする。
白が雪の隣に来た。
白「5,4,3,2…」
パシャッ‼︎
白「まだ1言ってねぇのに…」
雪「良いじゃない。みんな笑ってるわ」
空「2で止めたからな」
絵実「うん、いいね!」
白「いや、ダメだ!もう一回撮るぞ〜」
高校入学記念撮影
これは俺達の物語の終わりではない。
始まりである
完