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(仮)異世界ライフは突然に  作者: ai-emu
【第7章】王都トラディマウントでのひと時
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【第55話】またっりとした休日(その2)

禊用の服に着替えて禊用の泉に足を浸ける僕。

胸のあたりまで水に浸かり、何時ものように般若心経を唱える。


「我昔所造諸悪業

皆由無始貪瞋癡

従身語意之所生

一切我今皆懺悔


仏説摩訶般若波羅蜜多心経


観自在菩薩行深般若波羅蜜多時

照見五蘊皆空度一切苦厄

舎利子

・・・・・・

即説呪曰羯諦羯諦波羅羯諦波羅僧羯諦菩提薩婆訶

般若心経


・・・・」


たくさんの人が利用しているため、大きな声で唱えることはできないが、呟くくらいの声の大きさで3回唱えれば、僕を中心に波紋が広がっていく。

後日聞いた噂話によれば、その波紋に触れた者たちには、もっとも強く願った神頼みが実を結んだという。


それは、僕たちの仲間であるアマルさんたち(奴隷組)にも言えたことで・・・・。

アマルさん親子は、この後突然主人であるナルシスさんから奴隷解放の話を受け、僕が奴隷の首輪を外した。その後の事は、パーティ内に残り今まで通りの活動を続けていくか、僕たちと別れ新たな生活を築いていくのかを決めるのだが、僕としては、このまま残って活動してもらいたいと思っている。

それは、4人の承諾の元確認したステータスが関連しているのだが、こればかりは本人の意思に任せるしかない。


閑話休題。


さて、何処に建てられている神殿でもそうだが、神殿は身分の貴賤を問わず利用できる施設とされている。それは、『神の名の下では、すべての生命体は平等である』という建前があるからだ。地球にある神殿や教会も、この建前はあるのだが、過去においては有名無実な存在となっていた頃もある。

僕が生きていた時代でも、一部ではいまだに続いているとは思うが。

しかし、ここ『唯一無二の世界ロストユニバース』では、その言葉は人間族に関していえば絶対的な存在なわけで。

そのため、神殿内はあらゆる権力も通用せず、また、身分上の差別もしてはいけないことになっている。

それは、神殿に参拝しようと決めた時から効力を発揮するらしく、自宅(泊まっている宿)から1歩足を踏み出した瞬間から、自宅に戻ってくるまでの間は、最低限そのような言動を行ってはならない。

1回で即”アウト!!”ではなく、救済処置として3回までは認められているらしいが、4回目になると即天罰が実行されるみたいだ。


そのような行為をしたければ、他人が入る事ができない場所に専用の神殿を建てるしかない。しかし、神殿創設の逸話を見る限り、そのような場所にはないのが常識となっている。また、そのような場所には、神域としての役割が期待できないのも大きな理由の1つだろう。


ちなみに、神殿の楼門を潜る前に、そのような言動をしてしまった場合は、どういうわけか、楼門を潜る事ができなくなる。

神域内で行った場合は、即座に天罰が下り神域外へ強制転移させられてしまう。その際は、神域内に持ち込んだ財産すべてが没収されることになる。

つまり、裸一貫(全裸)で神殿前の噴水内に転移させられるのだ。

僕たちが神殿に向かっている時に、すでに数人の男女が噴水の中で行水していた(天罰が下って)のには驚いた。

参拝後に行った場合はさらに厳しく、その者を含めて一族全員が全財産を失うことになる。


なぜ、そんな裏話(天罰の話)をしたのかというと・・・・。


禊を終えて参拝用の服(ちなみに、男女ともに薄い水色の修道服)に着替えて禊の聖殿を出たところで、おバカな連中が道を塞いでいたからだ。

僕たちが着ている修道服は、安い素材で作られた大量生産品だ。

もちろん、ワトソンさん一家や5人戦隊も含めて同じモノを着ている。辺境伯というこの国では侯爵と同じ権力を持っているワトソンさんだが、お忍びでの活動中?お際は、身分の事など気にしていないかのようにふるまっている。そのため、多少の不敬は右から左へと流す事も多々あるみたいだ。

しかし、目の前で立ち塞がっているおバカさんたちが着ているのは、高級素材で作られたオンオフモノらしき修道服である。生地の色も濃い水色で、胸のあたりに何やら紋章のようなものが刺繍されている。

さらに高圧的で、上から目線でモノを語っている感じがヒシヒシとする。


「そこにいるのは、『五色旗戦隊ファイブフラップ』のカラフル5人組ではないですか。こんなところで会うとは奇遇ですね。

さらに言えば、その服装は何ですか?

貴族の矜持にも反した格好です。貴族ならば貴族らしく、僕たちのように専用に仕立てたものを着ているべきです。

まあ、貧乏貴族のあなた方ならば、その格好も様になっていますね!!」

高圧的に笑いながら、5人戦隊の面々を詰っている出自不明の5人の男女。何処かの貴族の坊ちゃんと嬢ちゃんで、5人戦隊(彼ら)の学友といった感じ時かな?

それも、結構な因縁があるみたいだ。

この国の貴族の事は何も知らないので、知っていそうな人に小声で尋ねてみる。


「ワトソンさん。自己紹介をしていないので、彼らが何処の誰かは知りませんが・・・・。

ワトソンさんは、わかりますか?」

「彼らか?あの修道服に刺繍された紋章を見るに、『エンブレハム侯爵家』・『ケリーネス伯爵家』・『トマルベルク男爵家』・『アードック伯爵家』・『ポーツマルク男爵家』の坊主どもかとは思うが。

他の場所ならともかく、この場所でこれ以上他人を罵れば、家に迷惑がかかる事を知らないのかね?」

「知らないからできるんでしょう?

『ここがどういう場所』かを知っていれば、他人を見下す行為や身分や地位を振りかざす行為はできないはずですが。

そもそも、ただの子息や令嬢には、権力はなかったはずですよね?」


結構いい身分な親を持っているらしい5人組。

僕としては、キャラクター的に5人戦隊のほうが好きなんだけどね。とても、愛着があって、とっつきやすい性格しているんだもん。

この5人。

それに対して新参者の5人は、何処かの愛するべき悪役にもなれそうもないんだあ。せめて、あの愛するべき3人組みたいな性格ならば、たくさん弄る部分が出てくるんだけど・・・・。


それはそうと・・・・。


「何処の誰だかは知りませんけど、それ以上は『ここでは』言わないほうがいいですよ?それ以上言うと、何が起こるのかは僕には見当がつきませんので。」

「トモエちゃんが言うと、本当に怒りそうで怖いな。

しかし・・・・。

冗談抜きで、それ以上は慎んでおいたほうが身のためだぞい。大事な家にも迷惑をかける可能性もあるからな。」

そう言いながら僕に同調するワトソンさん。うまく僕の事をぼかしているあたり、さすがは辺境伯タヌキさんである。


「なんだと!!そこのジジイと女は!!俺たちの事を知らないのか!!」

「はい!!この町で暮らしているわけではないので、君たちが『何処の誰』なのかは全く知りませんね。さらに言えば、君がジジイと罵ったこのお方の事も、君たちは知っているのですか?

お互い、自己紹介もしていませんしね!!」

僕は、清々しい笑顔をたたえて、彼らにそう答えてみる。隣にいるワトソンさんも、黒い笑みをたたえながら彼らの事を見ていた。彼らの態度からして、ワトソンさんの事は知らないらしい。

本当に、この国の中でも上のほうにいる貴族の子息・令嬢何だろうかと変な疑問がわいてくる。


「僕たちに用がないみたいですし、邪魔なのでそこをどいていただきませんか?」


そういうと、僕はマイカちゃんに目配せして彼らを押しのける。神殿へと続く通路上で立ち塞がっていたので、僕らを含めたほかの人たちの邪魔をしていたのだ。

彼らは。

彼らの事は放っておいて、僕たちは、水精母神『孔雀明王ハーマーユーリー』の祀られている神殿へと足を向ける。その道すがら、5人戦隊に彼らの事を聞いてみた。

「ところで、彼らとは、どういった関係なのですか?」

僕の質問に、リーダーであるマイケル君レッドが答えてくれた。

予想通り、5人戦隊とはライバル的存在であり、学園の成績も上位に位置している。1か月後に行われる国王様の誕生日記念の武闘大会で、お互いが優勝を狙っているみたいだが、金銭的問題で5人戦隊のほうが不利みたいだ。


閑話休題。


その後は、大きな問題もなく礼拝を終え、神殿の外に出る僕たち一行。

礼拝専用(水色の修道服)から普段着(紺色の修道服)に着替え、王都観光に繰り出た。

仲良くなった5人戦隊の1人を道案内につけて、僕とマイカちゃんは、王都の目抜き通りを練り歩く。

さすがは王都だ。

通りに立ち並ぶお店には、多種多様な品物で溢れている。

まず最初に訪れたのは、王都で1・2を争うほど大きな魔道具店『キノクニヤ魔道具店』だ。


店の中には、所狭しと並べられた魔道具の数々。それらをゆっくりと眺めていく。ちなみに、僕たちの案内役として来ているのは、五色旗戦隊ファイブフラップ『グリフォンジャー』のイエロー事、アーシャ=イエローネイルさん18歳。案内の道中に、魔法談義をするのが目当てで僕とマイカちゃんについてきた強かさを持ち合わせている。

そういう子、僕は大好きです。


まあ、それはいいとして。


「しかし、いろいろな魔道具がありますね。」

「ほんとうだね~~~。」

僕とマイカちゃんは、あらゆる用途に特化した魔道具の数々を見て、素直にすごいと感想を述べあう。同じ魔道具職人として、インスピレーションがいろいろとこみ上げてくる。

ただ光をともすだけの魔道具でも、用途に応じて大きさや光量の違うモノが数十種類陳列されており、まるで大型家電量販店並みである。

そんな生活家電のような魔道具売り場を、冷やかしながら店な中を歩く僕たち。造ろうと思えばここに売っている魔道具は、すべて造る事ができるだろう。この店に来たのは、僕が造る『チートで高価な魔道具』を買い求めるのではなく、『安価でも生活に密着した魔道具』のヒントを探すためだ。つまり、他の職人さんたちが造っている魔道具を、今後製作する魔道具の参考にしたいなと思ったからだ。


そんな中、店内のひと際目立つ場所に展示されている、何処かで見たような指輪型の魔道具を発見する。

パリダカで翁われたオークションで、1個当たり王金貨200枚~300枚でセリ落とされ。

その後は、セリ値を参考にして、1個当たり王金貨200枚で商業ギルドに卸している、あのアイテム。

僕が初めて創り出す事に成功した古代神話級魔道具アーティファクト、『異空間倉庫指輪ストレージリング』が20個ほど並んでいる。

お値段なんと、1個王金貨250枚。

この町の商業ギルドには、昨日転移門を設置する際に100個ほど納品しているが、すでに店頭に並んでいるのには驚いた。

ちなみに、洒落で造って卸した羽根ペンタイプや指輪タイプなどの廉価版である異空間旅倉庫トレジャーボックスは、王金貨10枚~王金貨50枚で売られている。


値段はべらぼうに高いが、自分の作品がこうして店頭に並んでいるのを見ると、なんだか感慨深い気持ちがこみ上げてくる。

そんな感傷に浸りながら指輪を見ていると、神殿で出会ったあの集団が再び現れた。

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