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(仮)異世界ライフは突然に  作者: ai-emu
【第6章】未知のダンジョンを攻略せよ!!
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【第49話】ダンジョン内でスケート!?

第11階層からは、ダンジョン内の様子がガラリと変わっている。


10階層から転移してきた場所は、普通の岩盤むき出しの通路だったのだ。モンスターの徘徊もないちょっとした広場だったため、そこで野営もできた。

いわゆる『安全地帯セーフティーゾーン』という場所だ。

しかしだ。

曲がりくねった通路を進み、分岐ロに差し掛かった場所から、がらりと通路の様子が変わったのだ。

これまでは、むき出しの岩壁が続いていたが、11階層は壁と天井が煉瓦造り、床が磨き上げられた大理石で、しかもご丁寧にワックスがかけられている。それも、油が撒かれたようにツルツルなのだ。


この階層では、踏ん張りが効かないのだ。


前衛陣にとって、この床で戦うのはとっても不利な状況になる。

さらに言えば、階層の構造自体も、悪意が見え隠れしている。

入口から、ボス部屋方向に向かうには鍵のかかった扉が鎮座しており、その扉を開けるカギは、反対方向に行ったドン突きにあったりする。少し道を間違えれば、モンスターハウス直行というおまけつきだ。

その先の部屋は、要所ごとに鍵付きの扉で塞がれており、少し遠回りして鍵を探してこないと先に進めない構造となっている。

もちろん、ボス部屋も同じ構造だ。


挿絵(By みてみん)


「この階層を攻略するには、この床をどうにかして攻略しないとな。」

ツルツルに滑る床を見ながら、ナルシスさんがぼやいている。

「そうやな~~~~。何かいい方法がればな~~。

・・・・・。

招かれざるお客さんがやってきたみたいだぞ。」

そんな事を言いながら、ヒュレイムさんが通路の左側を指さす。

そこには、この階層に出てくるモンスター『クローラースネイク』が1匹、のそのそとこの滑る通路を何事もなく歩いているのだった。


「なんであいつは、この通路を平気な顔して歩いているんだ?」


そんな事を疑問に思ったオーパルさんにこたえるように、僕は鑑定で得た情報を皆に話していく。


ここ第11階層に出てくるモンスターは、『クローラースネイク』という、蛇と芋虫が合体したようなモンスターだ。ボスは、このモンスターが孵化した『ドラゴンモスラ』というモンスターの変異種だ。

ドラゴンモスラ自体は、階層内に普通に徘徊していたりする。


クローラースネイクは、デフォルメしたコブラの外観に、無数の触手のような足がついたモンスターである。足の裏が吸盤のような形状になっているため、ツルツルの床の上でも普通に歩く事ができる。

唯一の救いは、あまり早く歩く事ができないことかな?


また、階層のあちらこちらにできている繭から取れる糸は、『神蚕の絹糸ゴッドシルク』という、高級素材の材料でもある。

そのため、火魔法で通路ごと焼くのはご法度となる。

神蚕の絹糸ゴッドシルクがいらなければ、・・・・別に構わないのだが。

確か、糸の長さが1mで金貨100枚だったはずだ。


ドラゴンモスラというモンスターは、ドラゴンと蛾の特性を合わせ持っているモンスターである。

あらゆる状態異常を起こす毒鱗粉をまき散らしながら、各個体ごとに属性の異なるドラゴンブレスを吐いてくるちょっと厭らしいモンスターである。

もちろん、空を飛んでいるため、踏ん張りが聞かないこちらにとっては厄介な存在となる。


「トモエちゃんって、空も飛べたんだね!!私も飛べるかな?」


僕が地面から10㎝程浮いているのを発見したキョウカさんが、目ざとくそんな事を言ってくる。

「キョウカさんなら飛ぶことはできますよ?ただし、結構制御が難しい魔法ですが、・・・・いいですか?」

「べつにいいよ。私でもできる魔法ならば、どんとこいだよ!!

何がいいのかはあえて言わないが、ダンジョンを出たら教えてくれという話で落ち着く。

「トモエちゃんなら、この状況・・・・。どうやって攻略する?」

キョウカさんと楽しく魔法談義をしていると、ナルシスさんがそんな事を訪ねてきた。

「そうですね・・・・・。

・・・この床ならいけるかな?

でも・・・、ぶっつけ本番じゃな・・・・。」


僕は、床や壁の状態を確認しながら、少し思案して考えをまとめていく。


この階層の床は、ツルツルは確かだが、岩を磨き上げてワックスをかけたという感じではなく、むき出しの岩の上に、ワックスを張って表面を均して固めた感じになっている。いわゆるスケートリンクに張られている氷みたいな感じだ。

これならば、あの方法が使えるはず。

ならば、あれをやったことがあるマイカちゃんに、ここは実演してもらうほうがいいか。

そう考えをまとめて、僕は皆のほうを向く。


「これから僕が考えた方法をお伝えします。言葉で説明するよりも、実演して見せたほうがいいので、マイカちゃん。」

「なに?トモエ君?」

マイカちゃんを呼び寄せて魔法を放つ。

全自動製作オートクリエイト

淡い光の後地面に現れたのは、地球における冬の定番スポーツで使う、脱着可能なスケートシューズの刃の部分。つまり、初期のころのスレートシューズだ。


それはいいとして、とりあえずはマイカちゃんに装着させ実演をしてもらう。

実際、地球にいたころのマイカちゃんは、武術の関することならばどんな些細なモノでも齧っていた。その中には当然、雪の上や氷の上での戦闘術もあった。

「なんか、ちょっと懐かしいね!!」

などと言いながら、滑る床を行くマイカちゃん。軽く慣らした後、ノシノシと近づいてくるクローラースネイクに向けて床を滑っていく。

手に持っているのは、パリダカで購入した刃渡り2mの大剣で、その後僕が魔改造した奴だ。その剣を軽々と振り回し、クローラースネイクを輪切りにしていく。

まるで、氷の上を舞う剣武のように滑らかに滑っていく。


「前衛陣については、こんな感じで戦うことになります。これなら何とかできそうだとは思うんですが・・・・」


マイカちゃんの戦闘を鑑賞しながら、僕は前衛陣にこう提案する。

前衛陣(俺たち)はこれでいいとして、後衛陣(キョウカたち)はどうするんだ?シャルリードとトモエちゃんは飛べるからどうでもいいが、後の者たちは飛べないぞ?」

ナルシスさんがそんな事を僕に話してくる。

すでに後衛陣(僕たち)は、飛んで戦う事前提になっているらしい。

それならば、その期待に応えてあげましょうか。


「ナルシスさんから、『後衛陣(僕たち)は、飛びながら戦え』というご使命があったので、そうしたいと思います。」


そう前置きをした僕の言葉が、全員の笑いを誘う。笑いのネタのされたナルシスさんは、その大きな体を小さくして赤くなっている。

「今回製作予定の魔道具は、シャルリードさんが空を飛ぶ時の様子を、少し参考にさせていただきました。」

「わたしの?でもあれは、魔法ではなく、バンパイアの種族技能センスだよ?そんなものも魔道具化できるんだね?」

「まあ、魔道具というか、どちらかといえば古代神話級魔道具アーティファクトに入るんですがね。

要は、シャルシードさんが、空を飛ぶときに背中に現れるあの蝙蝠の羽根をモチーフにして魔法を構築しています。」

そして、その場でついさっき創ったばかりの魔法を使用します。


天使の羽根エンジェルウィング


僕の魔法で、キョウカさん、ユキヒデ君、サララちゃん、そして僕の背中から真っ白な1対の羽根が姿を現す。僕は別になくてもいいのだが、仲間外れは嫌なのであえて同じ魔法を使用する。

「練習しないと多分飛ぶ事はできませんが、うまく使いこなせば、風圧でモンスターをなぎ倒したり、羽根から風刃を出したりする事ができます。

また、風属性を持っていなくても、空を自由に飛ぶ事ができます。

気になる魔力使用量は、最初の起動時のみで、あとは自然界に漂う魔力を利用するため、ほとんどいりません。」

僕は、この魔法の仕様について説明をする。

「では、実際に動かしてみましょう。前衛陣ナルシスさんたちは、マイカちゃんに倣ってskateの練習をしてください。」


こうして、ダンジョン攻略そっちのけで、遊びのような練習をしてしまった僕たちだった。

約2時間後。

前衛陣は、スケートをしながらそれぞれの武器を振るえるようになり、後衛陣は、空を飛びながら魔法を行使できるようになった。


改めて攻略を開始して約10時間。

階層のあちらこちらにできている繭を回収していく。神蚕の絹糸ゴッドシルクの糸にするのは、ダンジョンの外に出てからゆっくりとやればいい。

広くなった階層を隈なく巡っていたため、ボス部屋にたどり着くまで10時間もかかってしまった。

そして、いよいよボス部屋へと突入する。


ボスは、『ドラゴンモスラ』の変異種だ。全長20mほどで、蛾とドラゴンを足して2で割った感じのモンスターだ。ドラゴンの羽根が、蛾の羽根になっており、巨大な複眼と触角を持っている。


「あれからは、おいしい異素材は取れないから、さっさとやってしまいましょう。」


今回は、僕の出番はない。というか、スケートしながら戦うのが楽しいのか、前衛陣だけで片付けるらしい。

そして、約30分後・・・・。

羽根を切り落とされた哀れな蜥蜴もどきは、前衛陣の手でスライスされてこの世を去った。


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