【第45話】ダンジョン鑑定はチートな香り!?
さて、いよいよ未知なるダンジョンへの攻略を、開始する日がやってきた。
攻略メンバーは、我々『天空の牙』の冒険者メンバーである9人。
楯術役のオーパルさん。同じく楯術師であり、重戦士であるマイカちゃん。特攻役で剣術師のナルシスさんとシャルルさんとアイナさん。上空を任せる遊撃手のシャルリードさん。広域の遊撃で、弓術師のナルミさん。そして、後衛職の魔術師である僕とキョウカさん。僕は、広域殲滅のほか、パーティの戦力維持と広域探索も担っている。
そしてもう1つの脳筋パーティ『ドラゴンヘッド』の8人。
剣術師のヒュレイムさんとカザードさん、槍術師のハイザックさんとマイラックさん。魔法職のユキヒデ君と、今回は回復職オンリーで参加するサララさん。斥候役のティースさんと、楯術師であり奴隷のメディア。
合計17人での攻略となる。
ダンジョンの入り口は、岩山に大きく開いている。中は、禍々しい空気が漂っており、通常では考えられないような、長い下り坂となっておい、100mほど行った場所で左右に道が分かれているようだ。ここまでの情報は、僕が中に投げ入れた光源の魔法で確認できる。
ちなみに、投げ入れた光源の魔法は、突き当りの壁に当たった時に位置固定の魔法をかけて左右と入り口を照らすスポットライトとして固定してる。
僕たち一行は、最初の分義まで歩いて行き、どちらに行くのかを悩んでいた。
「ところでトモエちゃん。あの壁に固定された光の魔法。どれくらい光り続けているんだい?」
中を覗き込みながら、ナルシスさんが僕に訪ねてくる。
「あれですか?・・・・そうですね。込めた魔力量から考えて約半日といったところでしょうか。恒久的に設置するのなら、魔道具を設置していくほうが効果的ですよ?
あっ!!それと・・・・・・。
うん、できた!!」
「何ができたんだい?トモエちゃん?」
少し黙り込んだ僕を怪しむかのように、ナルシスさんが聞いてくる。
「このダンジョンの情報を得ることができるかと思って、ダンジョン自体を”鑑定”してみました。」
「さっきの反応から推察するに、問題なく鑑定できたんだね。じゃあ、その情報を教えてくれるかい?前情報があれば、攻略も楽になるからね。」
「はい。まずこのダンジョンの名前ですが・・・・・。」
僕は鑑定結果を皆に教える。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
【ダンジョン名】旧クーリス村占有ダンジョン
【ダンジョンの歴史(概略)】
もともとクーリス村所有の鉱山だった場所に、魔素溜りができ、集まった陰魔力がダンジョンコアとして成長したのが今から3年前。
その後、ダンジョンになったことを、中で採集できる気象功績を独占する目的で領主に報告せず村人たちで独占する。
しかし、中で沸くモンスターの処理を怠ったため、10日目に突如モンスターだ溢れ出し村を飲み込んでしまう。
現在、中のモンスターの総数は、暴走の影響で平時に比べて5割増し程度にモンスターが溢れている。
【ダンジョン形態】洞窟型中規模ダンジョン
=第1階層=
《階層の特徴》
入り組んだ巨大な迷路になっており、行き止まりからは、各種宝玉関係の原石を採集することができる。
《出現するモンスター》
スライム各種・ゴブリン・コボルト・・・・
《階層ボス》
ゴブリンエンペラー
《階層マップ》
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=第20階層=
《階層の特徴》
ダンジョンボスがいる階層で、最奥の部屋にはダンジョンコアが設置されている。
《ダンジョンボス》
ヒュドラ
《階層マップ》
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「・・・・案外詳しんだね。」
僕が説明したダンジョン情報に、少し引いた感じで受け答えをしてきたヒュレイムさん。
ダンジョンを丸裸にしてしまったのだ。
階層マップには、現在位置が緑色の光点で、現在ホップしているモンスターの位置が赤色の光点で表示されている。光点をタップすれば、どんなモンスターなのかも詳細表示されている。また、各階層で採集できる素材は、黄色の光点で場所が表示されている。もちろんモンスターと同様、光点をタップすれば詳細表示が出てくるチートなマップだ。
「ところで、トモエちゃん?」
「なんですか?キョウカさん?」
「説明にあった、ダンジョンの各階層別マップだけど。紙か何かに印刷できる?」
「紙に印刷すると、モンスターなどの詳細が表示されないけど。
・・・・・。」
僕は少し考えて、とある魔道具というか、古代神話級魔道具を製作する。
「『魔道具全自動製作』」
僕の手元に現れたのは、A4サイズの四角い真っ黒な金属の板。基本は後衛の魔法職か回復職が使うと仮定しているため、肩掛けができるように切断不能な紐が取り付けられている。
モノ的にはタブレットによく似ている。一応、今回使用するためと、サンプルとしてギルマスに送る分、合わせて3台製作した。
今回製作した古代神話級魔道具は、『万能地図作製』の下位互換である『迷宮地図作成』という天恵技能と、『万能鑑定』の下位互換スキル『ダンジョン鑑定』という種族技能。
そして、時間表示機能と、盗難防止のため、『所有者設定』と『使用者設定』、所有者から一定距離以上離れると、所有者のもとに転移する魔法を付与したものだ。
これが市場に流れると、今までのダンジョン探索が馬鹿らしくなると解っているので、市場に流す事は多分しないだろうと思う。
まあ・・・・、パリダカのギルマスには、1つくらいサンプルとしてプレゼントするとは思うが・・・・。
ギルマスが商品化を希望すれば、機能を劣化させた廉価版も用意する予定である。今回製作したものは、自重なしで造ったモノだ。
名付けるとしたら、『迷宮検索機』とでもなるんだろうか。
と思っていたら、この名前が正式名称として登録されてしまった。
まあ、いいか。
「僕たちのほうは、昨日アップデートした念話機能の中の、『万能地図作製共有』で、全員に鑑定したダンジョン情報を共有してあるので必要ありません。
ナルシスさん、マイカちゃん。念話機能で確認してください。しっかりと視れていますよね?」
僕の言葉に、慌てて念話機能を立ち上げる天空の牙の面々。
「お~~~~~!!!これがこのダンジョンの詳細か・・・・・。
確かに、マップに緑色と赤色と黄色の光点があるな。」
僕が先ほど話したことが表示されており、それを確認して驚愕の声を上げている面々。
「ちなみに共有化しているマップは、各個人間での検索・表示場所の移動が可能です。
また、ダンジョン内だけではなく、それぞれが過去に行ったことがある場所も表示されていると思います。その情報も、もちろん全員に共有されています。」
「そうか?・・・・なるほど!!ここをこうすれば、ほかの階層も視ることができるんか・・・・。」
僕の追加の説明に、各自が好き勝手にいろいろとマップ上で確認作業をする。この共有化で僕が言ったことがなく、過去にナルシスさんたちが言ったことがある場所目で共有できていたのは、おいしい誤算だった。
これにより、今現在僕たちがいるこの大陸の約3割、東部分のマッピングが完了しているのだ。もちろん、国境などの境界線や各町や村、果てはそれぞれの出身地までもも網羅している。
「では、ヒュレイムさんたちには、この迷宮検索機をプレゼントします。」
そう言いながら僕は、迷宮検索機の1つをヒュレイムさんたちに手渡した。残りの3台は、今は邪魔なので万能異空庫の中に放り込んでおく。
このダンジョンアタックが終了したら、一度パリダカに戻らないといけないなと、頭の中にメモしておく。
「では、使い方を説明します。まずは、所有者と使用者の設定ですね。これをしておかないと使うことはできません。」
僕は、迷宮検索機の使い方をヒュレイムさんタッチに説明をしていく。
その結果、迷宮検索機を所有するのは、このパーティの荷物の一切を管理しているユキヒデ君となった。万能虚空庫の中に入れておけば、使わない時も安全に管理できるしね。で、使用者は、パーティメンバー全員となる。
「よし。これからどうする?まっすぐボス部屋に行くか、それとも、宝箱の中身や素材関係をすべて回収していくか。」
ヒュレイムさんが、表示されているダンジョンマップを見ながら全員に聞いてくる。
「僕はどちらでも構いませんが、レベリングを目的として、すべての通路を回るという手もあります。しかし、あちこちに点在している、モンスターハウスもすべて回ることになるので、レベルが低いシャルルさんやサララさんとかは、結構きつい工程になると思いますが。」
僕は、そういいながらマップを弄っていく。
「そうだな。シャルル達レベルが低い者たちはどうしたい?君たちの意見を参考にさせてもらうわ。」
僕の問いかけに、キョウカさんがこう言ってきた。
「・・・・わたしは、早くみんなに追いつきたいので、レベリングをしたいです。」
こう言ってきたのはシャルルさん。シャルリードさんも同じ考えみたいだ。シャルリードさんのほうは、奴隷時代で落ちた体力などを、最盛期に戻したいというのが本音みたいだが。
「私もレベリングしたいです。もっとたくさんの回復魔法を使いたいので・・・・。今のままでは、魔力が足りないです。」
サララさんは、もっとたくさん魔法を覚えたいため、保有魔力を上げたいとのこと。保有している魔力が多くなれば、強力な魔法も使うことができるし、何より魔法の使用回数も、今まで以上に増やすことが可能だ。今のサララさんの魔力量では、乱発することが難しいしね。
ティースさんも、レベリングには賛成のようだ。今のレベルでは、前衛としては心もとないからね。
「よし、では二手に分かれて、すべての通路と部屋を回ることにしよう。とりあえず半日ほどかけて第1階層をうろつくことにしよう。昼頃にボス部屋手前のこのモンスターハウスの入り口で待ち合わせということでいいか?」
「ああそれでいいぞ。」
ナルシスさんの言葉に、全員が頷く。
「では、これより『旧クーリス村占有ダンジョン』の攻略を開始する。
最初のうちは低レベルの者たちのレベリングを目的として行動する。お互い、大きな怪我をすることなく、昼頃に再開しようか。」
こうして、僕とマイカちゃんにとっては、初めてとなるダンジョンアタックが始まった。




