【第20話】冒険者ギルドの仕組み
「では俺からは、冒険者ギルドについて説明しよう。」
こうして始まったのが、ナルシスさんによる冒険者ギルドの仕組みについてだ。
1つ目。
冒険者ギルドに限らず、商業ギルドと生産ギルドの3つは、大きな町(ここでいう大きな町とは、その地域を治めている領主が暮らしている館(城を含む)のある町の事)には、必ず各ギルドの支店が隣り合って存在している。たいていは、町の中心部に支店があり、各門の近くに素材を買い取るための出張所がある。
ギルド内の組織につては、下っ端で働く冒険者にはあまり関係のないことなので、行為ランクのモノでも知らないことのほうが多い。かく言うナルシスさんもその1人だ。
2つ目。
各ギルドは、会員となった者を、その実力と貢献度に応じてランク分けを行っており、それぞれのランクに合わせて様々な特典や制約を設けている。
ここでは、冒険者ギルドのランクについて説明をする。
各ランクは、カードの色とカードの右側に記された黒線で表示されている。カードの色が各メインランクを表し、黒線が補助ランクを表している。
冒険者ランクは、S・A・B・C・D・Eの6つのメインランクと、1~5までの補助ランクを合わせた合計22のランクがある。
メインランクは、Sランクが一番上でEランクが一番下。補助ランクは、『1』が一番下で『5』が一番上だ。SランクとEランクは、補助ランクがないため合計22のランクとなっている。
補助ランクが上がる際は自動的に上がっていくが、メインランクが上がる際は、昇格試験を受けないといけない。
《Eランク》
カードの色は白色で見習い冒険者と呼ばれている。
このランクにいるものは、指導者として指定されるBランク以上の冒険者と、行動を共にしていないと依頼を受ける事ができない。
また、最低3か月間は、各ギルドの併設されている冒険者訓練所に所属するか、指導者の所属する冒険者パーティに入っていないといけない。後者の場合は、養成所への入学は免除されている。
Dランクへの昇格は、月1回行われる昇格試験において、身を守るための技能が身についているのかを見るための試合で、一定以上の実力があると認められた時。
《Dランク》
カードの色は赤色で初心者冒険者と呼ばれている。
指導者となっている冒険者同伴のもと、このランクに指定されている魔物やモンスターを討伐する事ができる。
このランクになると、冒険者訓練所は卒後、ギルドが指定した冒険者パーティに入る事になる。しかし、冒険者に登録する際に、すでに入るパーティが決まっている者は、指導者の所属する冒険者パーティの中で、技術を磨いていく事になる。
Cランクへの昇格は、月1回行われる昇格試験において、指定された依頼(討伐系・採取系・護衛系の依頼をそれぞれ1回ずつ達成する事)が求められている。この試験は、昇格試験を受ける者たちとでパーティを組む(ギルドで指定される)ため、組んだ者たちの実力を把握する事が大事となってくる。
《Cランク》
カードの色は青色で半人前冒険者と呼ばれている。
このランクになって初めて、指導者を伴わないソロとして依頼を受ける事が可能になる。パーティから独立して活動を行う事は可能だが、たいていのモノは、そのまま指導者がいるパーティに入る事になる。
Bランクへの昇格は、月1回行われる昇格試験において、指定された討伐依頼を達成する事が求められる。その際、討伐内容により、1人から10人程度のパーティを組む事になる。
《Bランク》
カードの色は緑色で1人前冒険者と呼ばれている。
このランクになると、新たに冒険者パーティを組む事が可能になり、それなりの品格と社交スキルが求められるようになる。社交スキルが必要なのは、貴族のパーティなどでの護衛があるからだ。その際、依頼者の品格を落とす行為が禁止され、なおかつ依頼者とともにダンスをする場合もあるからだ。
Aランクへの昇格は、3人以上のギルドマスターの推薦か、有力貴族の推薦の上、昇格試験でソロでの指定魔物の討伐が要求される。
《Aランク》
カードの色は銀色でベテラン冒険者と呼ばれている。
このランクになると、国家に属さない名誉貴族に叙爵され、政策を伴わない程度の発言力を持つようになる。逆に有事の際には、国家間戦争参加を除き強制招集(Bランク以下は任意参加)がかけられる。この招集を拒否する事はできない。
補助ランクが上がるにつれて、貴族位も上がっていき、Aー1で名誉騎士爵に、Aー2で名誉子爵に、Aー3で名誉男爵に、Aー4で名誉伯爵に、Aー5で名誉侯爵になる。叙爵された国家により呼び名は異なるが、北部4大陸及び、島嶼国家間ではこう呼ばれている。
《Sランク》
カードの色は金色で英雄冒険者と呼ばれている。
このランクに上がるには、世界的な偉業を達成し、少なくとも3国以上の国王からの推薦がないといけない。そのため、このランクで活動している冒険者は極端に少なく、世界中で多い時で100人いればいいほう(時空間属性持ちよりも少ない)。現在確認されているSランク冒険者は10人である。
緊急依頼による強制招集を拒否する事はできないが、一国の国王並みの権力を持っている。
3つ目。
依頼を受けるときは、それぞれのランク別に張られた依頼か、2つ上までの依頼なら受ける事ができる。
なお、1回につき受けれる依頼の数は決められてはいないが、本人の力量に合わせて選択する必要がある。また、事後報告で依頼を受ける事も可能である。
カードに記された受注記録と、達成記録を照らし合わせてる事のより、依頼の達成状況を確認している。未清算分の記録は、過去1ヶ月分まで残っており(1ヶ月以上の長期にわたる依頼については、その限りではない)何処のギルドでも清算する事ができる。ギルド登録以前に討伐したモノも、1か月前までならば記録される。
依頼には次の6つの分類がある。
《雑用依頼》
町の中で発生する以来の総称。
体力を使うものから魔力を使うものまで、本人の技量に合わせて豊富な数が揃っている。Eランク冒険者とDランク冒険者が、基礎能力値アップを兼ねた小遣い稼ぎとして受ける事が多い。
《採集依頼》
薬草や鉱石などを採集する以来の総称。
モノによっては、危険地帯に赴かなければいけないため、採集してくる品物ごとに推奨ランクが決められている。
《討伐依頼》
魔物やモンスター、時には盗賊などを討伐し、素材を持ち帰る依頼の総称。
素材の損傷度合いによって、買取金額が変わってくるため、討伐する際にどれだけきれいに討伐するかが冒険者のステータスとなっている。
盗賊の討伐の場合は、盗賊が持っている物品(奴隷を含む)の所有権は、討伐した冒険者に移行する。元の持ち主が判明していたとしても、その権利は変わらず冒険者のモノとなるため、元の持ち主への返却義務は生じない。元の持ち主が返却を求める際は、それ相応の金銭を支払うか、善意の返却を期待するしかない。
《護衛依頼》
町から街を旅する者たちや商隊などを護衛する任務の総称。また、貴族がSPとして、常時雇う場合もある。
長期に拘束される場合があり、商隊などの護衛の場合は、活動地を移動する際の小遣い稼ぎとして利用されている。道中の襲撃に対応する報酬は、護衛報酬の中に含まれているが、討伐した魔物などの素材は、冒険者の所有物となる。
《指名依頼》
依頼者が名指しで依頼する事がある。その際の依頼方式の総称。
指名された場合は、その時の状況に応じて拒否する事も可能だが、名誉や評価などが絡んでくるため、基本的には受ける事が推奨されている。
また、自分の力量を売り込むために、冒険者自身が依頼主を探す事もある。この場合は、区別した『逆指名依頼』と呼ばれている。
《緊急依頼》
滞在している街において、魔物の集団襲撃があった場合に発行される依頼。
S・Aランク以外は任意での参加となるが、参加した際の貢献度に応じてギルドランクが上がったりするため、基本的に冒険者たちは参加をしている。緊急事態のため、基本的に参加報酬や討伐報酬は一律で支払われ、素材の売却益は発生しない。ただし、貢献度に応じて参加報酬が上積みされる場合がある。
4つ目。
街中での武器(攻撃魔法を含む)の使用は、原則禁止とする。武器を使用した場合は、その身分に関係なく、双方が厳罰に罰せられるので特に注意する事。相手が武器を使用してきた場合は、武器以外のモノで応戦すれば問題はない。
なので、武器と認識されていないモノを、武器とする技能を身につけておくとよい。
5つ目。
ギルド内での冒険者同士の諍いは、原則ギルドは介入しない。ただし、暴言を吐いたり、著しく相手の名誉を傷つけたりした場合は、加害者のほうはランクアップに対して、相応のペナルティが発生する事がある。
「ギルドについては、こんなものか。細々とした規則はあるが、そこら辺はおいおい詳しく説明していくから、今は割愛させてもらう。
あとは、俺たちのパーティに入る事が決まっているトモエちゃんには、あまり関係ない話だが、『初心者冒険者の養成システム』について説明しよう。
初めて冒険者に登録する者に対し、冒険者訓練所に入所する事が決められている。この訓練所では、簡単な文字の読み書きから、各自の戦闘スタイルに合わせた訓練を施している場所だ。卒業条件は、ある程度の戦闘技術が身についた時だ。」
ナルシスさんの説明で、この世界の冒険者増がしっかりと浮かんでくる。
テンプレ的な、馬鹿な貴族の3男坊が、持っていない権力を振りかざしたり、素行の悪い冒険者が絡んできたりする事はあまりないみたいだ。
僕とマイカちゃんが、ナルシスさんのパーティ『天空の牙』に正式加入(別に冒険者でなくても大丈夫だったので、すぐさま加入をした)をすると、パーティメンバーの目つきが少し変わった。
たぶん、アレについてすごく期待をしているのだろうと察する。
そして、期待通りの言葉を、ナルシスさんが話してきた。
「所でトモエちゃん?お願いがあるのだけど。『万能虚空庫』を付与したアイテム『異空間旅倉庫』を、パーティメンバー全員分作ってくれないか?もしくは、トモエちゃんの持っている万能虚空庫・・・・、いや、トモエちゃんの場合は万能異空庫というスキルだったな。万能異空庫野仲に、俺たちの荷物を入れさせてもらえないか?」
僕は、この言葉に、笑顔でこう答えた。
「いいですよ。これから一緒に行動していく仲間です。ここは、僕の持ってる万能異空庫の能力を使いましょう。」
僕は、万能異空庫にある例の能力について説明をし、その場でフォルダーの管理権を譲渡した。
フォルダーへの出入り口となるアイテムは、それぞれが指定したものになった。