【第12話】この世界の魔法について(説明)
異世界生活4日目。
今日も外は雨である。ただし、土砂降りの豪雨ではなく、梅雨のようにシトシトと降り続いている。
マイカちゃんに、簡単な書き取りテストをした結果、100問中40問正解という結果だ。初めて見た文字を書いていくのだ。最初はこんなもんだろう。僕は、スキルで持っているので、読み書きはばっちりである。
ここで、この世界の魔法について、少し語っていこう。
【魔法の使用状況】
すべての生命体は、生まれつき持っている『属性魔力』をその身に宿している。
しかし、魔法を使うために必要な要素である、『イメージ』・『属性魔力』・『使用魔力量』・『言霊』のうち、自然現象を科学・物理的に『イメージ』する能力と、魔法を使用する際に使う必要最低限の『使用魔力量』が足りないため、魔法を使える者が圧倒的に少ないのが現状である。
人種によりその割合は異なっているが、最も魔力量が多い亜人種でも5割~7割。一番人口比で多い人間種で3割~5割。獣人種で1割~3割となっている。
【魔法について】
魔法は、『イメージ』・『属性魔力』・『使用魔力量』・『言霊』の4つの要素で成り立っている。
体内もしくは、自然界にある魔素を使用して、自然現象を人為的に創り出す行為を言う。そのため、その現象がどのようにしておこっているのかを、より正確に理解していればしているほど、同じ大きさの魔力を練り込んだ魔法でもその威力が違ってくる(この行為の事を、『熟練度』と表現している)。
また、魔素を使用した魔法は変換効率が悪く、知的生命体においてはあまり使用されていない。魔素を使用して魔法を使っているのは、体内組織を魔素で構築しているモンスターのみである。
【イメージ】
自然現象を、科学・物理的に解き明かし、詳細にイメージできれば、同じ魔法でもより強力になる。そのため、魔法使いになるには、科学知識と物理知識のスキルが必要になってくる。
そして、『イメージさえ明確にできれば、魔法でできない事はない』と、この世界では言われている。
つまり、無から有を創り出す事も可能となる。
【属性魔力】
属性魔力は、上位属性と基本属性に大きく分かれている。また、それぞれの属性の下には、派生属性が存在している。上位属性と基本属性を持っている者は、それぞれの派生属性を使う事も可能(逆は不可能)になっている。
=上位属性=
《時空属性》
時間と空間を操る属性。
派生属性を含み、転生者の約3割程度と転移者全員。それらの子孫の約1割(代が重なるごとに比率が下がっていく)しか持てない属性。ただし、派生属性が全体の8割を占めており、上位の時空属性を持つ者は全体の2割程度しかいない。
派生属性は、『重力属性』・『圧力属性』
《光属性》
光と治癒能力といった”聖なるもの”を扱う属性(水属性でも治癒に関しては可能)。
派生属性を含み、4割程度しか持っていない属性。この属性保持者の中で、6割程度が神殿に勤めている。
派生属性は、『聖属性』・『解呪属性』・『治癒属性』・『浄化属性』・『結界属性』
《闇属性》
呪いや精神などの”負の性質”を扱う属性とされるが、実際は、日常生活では欠かせないものも多い。
派生属性を含み、4割程度しか持っていない属性。この属性保持者の中で、6割程度が医療機関に勤めているか、(奴隷〉商人として全国を旅して渡り歩いている。
派生属性は、『影属性』・『呪詛属性』・『病傷属性』・『隷属属性』・『精神属性』・『死霊操作』
=基本属性=
無属性を除き、すべての者がランダムで1~4個(派生属性含む)持っている。
《風属性》
空気などの期待を扱う属性。その気になれば、酸素や窒素などの元素単位で制御する事もできる(科学的な知識がないと不可能)。派生属性でなければ、気温や気圧なども操作できる(科学的な知識がないと不可能)。
派生属性は、『雷属性』・『嵐属性』・『気体属性』・『飛行属性』
《水属性》
水に関するすべての事柄を扱う属性。派生属性でなければ、水温管理や水圧などで物体を切り裂く等も可能(科学的な知識がないと不可能)。
派生属性は、『氷雪属性』・『毒属性』・『液体属性』・『潜水属性』
《火属性》
火や熱に関することを扱う属性。また、闇属性ほどではないが、ある程度の死霊も操作できる。
派生属性は、『焔属性』・『霊焔属性』・『熱属性』
《地属性》
大地に関するあらゆる事柄を操作できる属性。派生属性は、7属性の中で一番多い。
派生属性は、『草木属性』・『砂岩属性』・『泥土属性』・『腐敗属性』・『金属属性』・『地質属性』・『創造物属性』・『浮遊属性』
《無属性》
上記7属性に該当しない魔法を扱う際の属性。
すべての生命体が必ず持っている属性でもある。
身体強化や各種状態異常緩和などの補助魔法は、基本的に無属性の魔法である(一部例外あり)。
派生属性は存在していない。
【使用魔力量】
イメージした事象を実際に引き起こすには、それ相応の代償であり、相応の魔力が必要となる。
この『相応の魔力』というのが厄介で、どんなイメージを持って魔法を創ったかによって、使用する魔力量が変化する。同じ魔法でも、術者によって使用される魔力量が違う。
【言霊】
術者がイメージした魔法に対して名付ける行為を言う。どんな言葉でも構わないのだが、一度名付けると、『魔法のイメージ』・『使用される属性魔力と魔力量』・『言霊』がセットで術者の『魔法記憶領域』と呼ばれる脳内組織に刻まれてしまう。そして、2回目以降は、『言霊』と唱えれば、その魔法が発動する事になる。
【魔術について】
魔法を使用する際に使われる術式の事を言う。どんな生命体でも、魔法を使う際には、必ず魔術を使用しないと発動しない。
大きく分けて、『詠唱魔術』・『共鳴魔術』・『合掌魔術』・『方陣魔術』・『魔道具』の5つに分類される。
【詠唱魔術】
魔法を使用する際の『イメージ』を、より明確にするために紡がれる文章を詠唱して発動させる魔術。紡がれる詠唱文は、魔法使い(魔術師)によって異なるが、文章の基本構成はある程度決まっている。そのため、詠唱文を聞けば、ある程度どんな魔法を使うのかが解ってしまう。
魔法を使用する際の『イメージ』が、しっかりとしていれば特に詠唱は必要としない。その詠唱を省き『言霊』のみで発動させる魔術の事を、『無詠唱魔術』と呼んでいる。言霊すらも発せずに発動する際は、魔法を発動させるための要素をより明確にしないといけない。
【共鳴魔術】
精霊族や妖精族といった『神霊族』の力を借りて行う魔術。神霊族と対等の関係にならないと発動できない。詠唱魔術と同様、『イメージ』と『言霊』が必要だが、詠唱文は必要ない。
魔法を放つ際の魔力は、大部分を神霊族側が持ってくれる事(親密度の度合いによって魔力の分割割合は変化する)もあり、通常の詠唱魔術よりも使用する魔力量が少なくなる傾向がある。
また、自身が持っていない属性の神霊族と親密になれば、その属性の魔法も放つ事が可能になる。
【合掌魔術】
上級以上の魔法を使用するために編み出された方法。10~20人で決められた旋律に乗せて同じ斉唱を紡ぐことによって発動する。そのため、魔法が発動するのに、魔法のレベルに応じて長くなる傾向がある。
【方陣魔術・魔道具】
魔法を実践レベルで使用できない人のために開発された方法。あらかじめ使用する魔法を、魔方陣に記す事によって発動させる。魔方陣には、魔法文字で『詠唱文』と『言霊』を、幾何学的な図形にして描いている。
魔道具とは、魔方陣をより便利に活用するため、武器や生活用具などに、魔方陣を刻んだものをいう。
使用する際には、使用者の魔力を利用する事になる。
【魔法ランク】
魔法は、それぞれが生まれつき持っている『属性魔力』に関連する魔法しか使用する事が出来ない。
また、魔法ランクに応じて使用魔力も増大する。そのため、使用魔力量に応じて、それぞれの魔法をランク付けしている。
一般的な魔法使いの保有魔力は、10,000MP~100,000MP程度。魔術師と呼ばれている者たちで、200,000MP~500,000MP前後とされている。
スキルレベルは、その属性魔法の熟練度を示しているため、魔法ランクとは関係ない。
初級魔法・・・・使用魔力が100MP以下の魔法。
下級魔法・・・・使用魔力が100MP~1,000MPの魔法。
中級魔法・・・・使用魔力が1,000MP~10,000MPの魔法。
上級魔法・・・・使用魔力が10,000MP~100,000MPの魔法。
特級魔法・・・・使用魔力が100,000MP~500,000MPの魔法。
神話級魔法・・・使用魔力が500,000MP以上の魔法。
【魔力】
すべての生命体は、魔力を多かれ少なかれ持っている。魔力には、『陽魔力』と『陰魔力』があり、『陰魔力』を持つようになると、種族・生命体を問わず魔物・モンスター化する。逆に言えば、生命体の体内には、『陽魔力』のみが流れている。
魔力を増やすのには、一度枯渇させることで総量を増やす事が出来る(増加量は、人によって異なる)。また、種族技能・固有技能の能力を使用する際にも、それ相応の魔力を使用する。天恵技能に関しては、魔力使用ナシで使用する事が出来る。
【陽魔力】
もともと自然界に存在している『魔素』と呼ばれる『光・闇・風・水・火・地・無』の7つのエネルギーが元となった魔力で、すべての生命体の根幹を流れている力。魔法は、この力を体内もしくは自然界から引き出して使う事で発現している。
【陰魔力】
すべての事象に表裏・光と影があるように、生命の源となる『魔素』にも、当然影の部分が存在している。
陽魔力によって生み出された魔法は、その規模に応じて陰魔力を放出している。自然界にはこの陰魔力が溜まる『魔素溜り』と呼ばれている場所が世界中に存在しており、魔素溜りに集まった陰魔力が、世界樹の力によって陽魔力に変換し再び自然界に還えるサイクルが出来ている。
この魔素溜りに、何らかの理由で生命体が触れてしまうと、不の力である陰魔力を取りこんでしまい、例外なく魔物・モンスター化する。そのため、すべての生命体は、その活動領域内において魔素溜りを発見すると、立ち入り不可能な状態に厳重に管理をしている。
【地脈と天脈】
地脈・天脈の正体は、魔素溜りから陰魔力を吸い上げる世界樹の根である。ただし、魔素溜り同士を結んでいるため、川の流れのごとくその流れを大きく変える事がある。
天脈は、『天空を支え、遍く生命を創造する天脈の源流に据えた天空の世界樹』の根の事である。
地脈は、『大地を支え、遍く生命を育み見守る地脈の源流に据えた大地の世界樹』の根の事である。
そのため、世界樹の本体を視る事は、数多に存在するすべての生命体には不可能な事である。
天脈と地脈が流れている場所では、世界樹の影響を受けて、少ない魔力でより大きな魔法を使う事が出来る。
【魔法の無効化】
魔法を無効化する際(結界や相反属性など)は、込められた魔力の倍の魔力を込めないと完全に無効化はできない(それぞれ込められた魔力量の比率により、無効化される割合が変化する)。
自身で創った魔法を無効化する際は、次に示す制約がある。
(1)魔法効果が短時間で解除される魔法
込めた魔力量の2倍の魔力を与えて、相反する魔法を放てば無効化できる。この方法で、保有する魔力量を増大させることができる
(2)魔法効果が永続化する魔法
無効化する際は、属性の上位魔法で無効化する事ができる。そのため、上位属性で構築された魔法は、基本的に無効化する事ができない。
なぜ、こんなことを説明したのか。
それは、僕とマイカちゃんとの間で行われた隷属魔法を説明するのに必要だからだ。




